2025年05月05日

世界の望む静謐

まずはAmazonさんの紹介ページから。

彼らはいつ、何を間違えてしまったのか
完璧だったはずの犯罪計画を、
死神めいた警部が打ち崩す
〈刑事コロンボ〉の衣鉢を継ぐ、
大人気倒叙ミステリシリーズ最新刊!

あなたのことは、最初から疑っていました──漫画家を殺してしまった担当編集者、
悪徳芸能プロモーターを手にかけた歌謡界の“元”スター、自分を裏切った腹心の部下に死の鉄槌を下した人気タレント文化人、
過去を掘り返し脅迫してくる同僚の口を封じた美大予備校の講師。
彼らは果たして、いつ、何を間違えてしまったのか。罪を犯した者たちの前に死神めいた警部が立ちはだかる。解説=千街晶之

倉知淳氏による、乙姫警部、倒叙ミステリシリーズ第2弾。
以下、壮大なネタバレあり。




最初の「愚者の選択」はトリックや犯人にどう迫っていくかよりも、その設定が「名探偵コ〇〇」そのもので、
笑ってしまいました。
「探偵少女アガサ」、名前は栗栖アガサ、登場する刑事の名前は、保阿路警部。
もうね、何もかもです。そして犯人の桑島が抱えた問題も、おそらく今某出版社が抱えている問題と同じなんでしょう(笑
アシスタントが秘密にしていた、ある計画。作者死去後も、椙田プロとしてシリーズを続けていくという苦心でしたから。
それが終了次第、出頭するつもりだったと。

読んだ時期も悪かったんですけどね、ちょうど映画公開と大ヒットの時で、よりリアルに感じました。

閑話休題。話を乙姫に戻します。
本作収録作全てで、彼は、犯人しか知りえないこと、できないことで犯人を特定します。
そこには動機など全く介在していません。

そして、決して乙姫警部の推理だけで、物語は成り立っていないこと。
「一等星かく輝けり」や「正義のための闘争」などは、捜査員が全力を挙げて地道な捜査をしたことが明確に
記されています。

そして、乙姫警部の容姿は、全ての犯人が「死神が来た」と思うくらい、本当にそのような風貌なんだろうと
思います。全身黒で固めていたり。
このあたりは、「古畑任三郎」を彷彿とさせますが、彼のようにユーモアな面や部下とのやりとりが描かれることも
ほとんどありません(このあたりは映像化作品という点もあるでしょう)。

では「刑事コロンボ」と比較するとどうか。犯人はコロンボの風貌をみて、どこか馬鹿にし、彼の乞うままに
でたらめな、あるいはミスリードの証言や推理をはなしたりします。

しかし、本シリーズでは、決して犯人たちは乙姫警部にそんな印象を持ちません。
もちろん、乙姫警部が以上にコミックマーケットに詳しいことや、犯人の著作を読んでいること等々に
驚いてはいますが。
(この辺りは、乙姫自身の知識の幅が広いのか、事件に対峙する前に、関係者の知識を一気に集めているのか、
 はっきりわかりませんが、僕は後者ではないかと。)

ところで、「刑事コロンボ」も映像で見ると、犯人たちはコロンボを嘲笑していますが、徐々に危機感を募らせていきますよね。
このあたりは名優の演技が素晴らしいと思います。そしてかつて刊行されていた二見書房版『刑事コロンボ』ノベライズでも、
犯人たちの焦りがしっかり記述されています。

と、長々書いてきましたが、私が何を言いたいかというと、

「刑事コロンボ」の衣鉢を継ぐ(系統は)、やはり「福家警部補」でなのだろうと。
それは古畑任三郎、野呂盆六も同様かもしれません。

では乙姫警部は、あえて系統に入れるとすれば、パイロット版で製作された「殺人処方箋」のコロンボ警部
なのではないか、と考えた次第です。
まあ、だから何なのかというところですが(苦笑

作品内容について。
「正義のための闘争」で、乙姫は犯人を陥れるため、ある途方もない嘘をつくのですが、
この嘘は流石に危なすぎる。
もし犯人が面会を求めたりしたら、たちまち崩壊です。
間髪入れずに逮捕しているので、まあギリギリ大丈夫と判断したのか、やや厳しいなと。

「一等星かく輝けり」。本筋と全く関係がないので、物語としては秀逸と感じるのですが、
九木田がなぜここで新堂に狙いを定めたのかが謎ですね。
彼なら、他の人にだって、このくらいの罠をしかけそうだけども。

というわけで、個人的本作愁眉は表題作「世界の望む静謐」
これは本当に偶然にも、確実な証拠が手に入ったというところ。
さらに、犯人も決して自分の犯行をそこまで隠そうとしていない、むしろ刑務所での「静謐」を望んでいるところ。
探偵と犯人の邂逅に触れた、千街さんの解説にもありますが、本作はかなり異色作だと思います。

世界の望む静謐 〈乙姫警部〉シリーズ (創元推理文庫) - 倉知 淳
世界の望む静謐 〈乙姫警部〉シリーズ (創元推理文庫) - 倉知 淳

世界の望む静謐 (創元推理文庫) [ 倉知 淳 ] - 楽天ブックス
世界の望む静謐 (創元推理文庫) [ 倉知 淳 ] - 楽天ブックス
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2025年04月20日

捜査線上の夕映え

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大阪のマンションの一室で、元ホストの死体がスーツケースに押し込められた状態で発見された。
凶器や被疑者はすぐに見つかり、難なく解決するかに思われた事件は、鉄壁のアリバイと捜査を攪乱する
“ジョーカー”によって不可能犯罪と化す。火村とアリスの辿りついた真相が心震わす、
シリーズ新境地の傑作長篇。

臨床犯罪学者・火村英生と作家アリスが活躍する、文庫最新作。
Amazonさんの解説にもありますが、「新境地」という言葉は的を得ています。

文庫はかなり厚いのです。しかし、しかし、相変わらず容疑者は少ない。
まさに容疑者の鉄壁のアリバイと、マチコ刑事のある秘密が語られます。

相変わらず、火村の推理は理詰めでくるのですが、最後がこれまでとは違った展開なのがかなり意外。
その意味ではシリーズ作とはいえ、新境地あるいは異色作なのでしょう。

学生アリスは終了巻数が有栖川先生から話が出ていた気がしますが、
作家アリスはどういう結末を迎えるのか、こういう作品が登場すると、ちょっと考えてしまいますね。

先生の文庫作品は『砂男』も購入済みなので、そちらも読みます。

捜査線上の夕映え 火村英生 (文春文庫) - 有栖川 有栖
捜査線上の夕映え 火村英生 (文春文庫) - 有栖川 有栖
捜査線上の夕映え (文春文庫) [ 有栖川 有栖 ] - 楽天ブックス
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2025年03月30日

非武装地帯

まずはAmazonさんの紹介ページから。

格安で購入した白亜の豪邸。喜んで引っ越して来た浅川家だが、家の前でフェラーリが炎上したり、謎の男がうろついたり、
近所の住民が妙に物言いたげだったり……。周囲で不穏な出来事が相次ぐ。
なんと、豪邸はもともと殺された暴力団会長の住まいだったのだ。
やがて組の跡目争いが勃発。夢の新居は、物騒な抗争の〈中立地帯〉にされてしまう! 浅川家の運命は!?


暴力団の跡目争いのど真ん中に家を購入した浅川家。
相変わらずの怒涛の展開ですが、自らの家を中立地帯としたところは、
現代社会の戦争でも、緩衝地帯であるとか、言葉を変えて存在していますね。

現実ではそう簡単にいかないですが、浅川家は、一家揃って肝が据わっていて、
実に見事な采配と解決ぶりを発揮します。

女子高生のみどりの活躍はともかく、
弟で5歳の登は素晴らしい。
母親の沙江子もまるで違和感かく活動しています(笑
影の薄かった父親・克哉も最後に見せ場をつくるなど、抗争そっちのけで
浅川家が獅子奮迅です。

しかし、当然死者もでます。
悲しんでいられないのが、この抗争でもあり、小さいながらも戦争なんでしょう。

非武装地帯ではなく、武装地帯がそもそも無くならない限り、なかなか難しい。

非武装地帯 (光文社文庫 あ 1-195) - 赤川次郎
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非武装地帯 (光文社文庫) [ 赤川次郎 ] - 楽天ブックス
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2025年03月15日

都市伝説解体センター

集英社ゲームズさんからの紹介ページから
https://shueisha-games.com/games/umdc/

呪いの箱、事故物件、異界…都市伝説の正体と真実とは

怪異、呪物、異界などの調査・解体を行う『都市伝説解体センター』。
主人公の福来(ふくらい)あざみは、『都市伝説解体センター』のセンター長であり
国内屈指の能力者である廻屋渉(めぐりやあゆむ)とともに、「都市伝説」絡みの依頼を解決していくことになるが…


傑作です。ミステリ好き、都市伝説などのオカルト好き、アドベンチャー好きならば、
絶対にプレイして損はない作品です。

ブラッディ・マリーやコトリバコ、さらにドッペルゲンガーなど、
古来からかなり前に流行った「洒落怖」ネタの都市伝説まで、かなり網羅したうえで、
各事件が、どの都市伝説なのか<特定>し、その事件の真相を<解体>する。
情報収集はSNS、現場での聞き込みと、福来あざみだけが出来る念視で、事件の真相に迫っていきます。

全6話で、基本は上記の手順で、途中から作業的になりがちですが、
本作は、小説でいれば連作短編集。
SAMEJIMA管理人とはだれか、グレート・リセット(GR)とは何か。
物語が進むにつれ、廻屋と福来はこの謎に迫っていきます。

そして明らかに警察関係者と思われるジャスミンも独自の行動を取りつつ・・・

鮫島事件を元にしたSAMEJIMA管理人の正体は、おそらくほとんどの人が想像が付くのです。
だから、福来が廻屋の解体の後に、また元に戻して解体するのは、あーと私は思ってしまいました(笑

ところが、本ゲームは、そんなレベルでは終わりませんでした。
最後のどんでん返しはあまりに強烈で、これを見抜けた人は居なかったのではないでしょうか。
(だからこそのドット絵だったのかとも。)

もう1つ、本作はSNSの恐ろしさを真正面から捉えています。
だからこそ、最後にGRを行い、全ての情報を公開するという手段にでて、世間を大混乱に陥れます。
(ところが、エンディングではSNSはまた日常を取り戻しているとジャスミンたちから語られるところが、また恐ろしい。)
GR信者などもその1つでしょう。

また非解決事件、あったものをなかったものにする、警察庁の通称クローゼットというものが登場します。
あった事件を無かったことにしてしまう。未解決事件ですらない。
真犯人の目的は、ここへの侵入も大きかったのでしょうね。

しかし、本来噂話、もっといえば、なかったものをあったものにしてしまうSNSあるいは都市伝説との
対比が非常に面白い。

最後に再び、都市伝説解体センターは、開設されます。
これは、クローゼットへの反発なのか、いまだ無数に生まれてくる都市伝説・SNSへの対抗なのか。

続編が出来なさそうなのが残念でなりません。
素晴らしい作品でした。

都市伝説解体センター -Switch
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集英社ゲームズ|SHUEISHA GAMES 都市伝説解体センター【PS5】 【代金引換配送不可】 - 楽天ビック(ビックカメラ×楽天)
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2025年03月01日

ロイストン事件

まずはAmazonさんの紹介ページから。

真相は常に目の前にある――
英国本格技巧派の芸術的手腕
正義を貫こうとし、全てを失った弁護士。
彼の帰郷は家族と事件関係者に波紋をもたらす。
やがて発生した殺人は、過去に起因するものなのか?
全作翻訳刊行を記念し入手困難の傑作を復刊

「おまえの助けが要る。たった今、きわめて重大と思われるあることがわかった。おまえの義弟のデレクは――」
勘当されて以来四年ぶりに実家を訪ねたマークが見つけた、父パトリックの手紙の下書きは何を意味しているのか。
当の父は死体となり新聞社で発見される。どうやら父はロイストン事件の再調査をしていたらしい。
それは教師をめぐるスキャンダルで、弁護士として事件に関わったマークは、
父の意向に逆らって義弟を告発したために勘当されたのだった。父を殺した犯人を突き止めようと、
マークの推理が始まる。巧手ディヴァインの第三長編。

初めての作家さんです。
東京創元社さんの紹介文に惹かれて購入しました。

1日に読むページが少なく、読み終わるのに時間がかかってしまいました。
純粋に、ミステリとして十分おもしろいです。
まず、このタイトルがいい。
『ロイストン事件』、これが何の事件なのか語られるまで、
かなりのページ数を割いてます(笑
だから、そもそもなぜ主人公のマークが父と断絶していたのか、よくわからないまま
父親が殺され、異母弟が犯人の可能性が浮上し・・・と物語は一気に進みます。

ある意味、幕間のような形で、マークの過去や「ロイストン事件」、ポール・ウィラードとの関係等が語られます。

しかも物語が進むにつれて、ロイストン事件そのものではなく、ポールの新聞記事の元ネタの話や
マークの父親のファイルに謎の焦点が移っていきます。

解説では、(解説者ではなく)当時の評論として「ごたごたと混乱した物語」と低評価されていると記載があります。

確かに、書のタイトルとは、徐々にかけ離れていく(もちろん無関係ではなく、関係している1つ)ところや
やや個人的には冗長に感じたところもあります。

マークが犯人がわかったところ&それを炙りだそうと罠を張るところが、本書最大の盛り上がりなのですが、
これが少し弱い。スレイド主任警部が躊躇うのも無理はないでしょう。
物的証拠がまるでないのですよね。で、罠を張りどうなったかというと、非常に運よく犯人があることに反応し激昂、
それによりなんとか逮捕できるのです。

ここの犯人の行動にはいささか疑問。もともと犯行に手を染めるきっかけが迂闊ではあったのですが、
物語で描かれている限りでは、冷静な人物に読み取れます(それが作者の仕掛けかもしれませんが)。
だからここで犯人が激昂したのが、かなり不思議でした。

まあ、おそらくはキャロルの被害者女性の役がアカデミー賞ばりの名演技だったのは確かなんだろうと思いましたが。

事件と関係があるのかないのか、痴情のもつれ、複雑な男女関係、義母と義弟の関係・・・
様々な事柄が描かれていきます。それが「混乱した物語」と評された理由だと思いますが、
逆にまるで事件が見えなくなるというのも事実。
最後まで犯人が誰なのか、まるでわかりませんでした(苦笑)
しかも、動機は極めて単純です。それすらわからず。

こうした古典作品は、同時代や少し前の推理小説・探偵小説の影響などがどうであったのか、
そういうものが知りたくなりました。

ディヴァイン、『こわされた少年』もすでに購入済みなので、こちらもじっくり読みたいと思います。

ロイストン事件 (創元推理文庫) - D・M・ディヴァイン, 野中 千恵子
ロイストン事件 (創元推理文庫) - D・M・ディヴァイン, 野中 千恵子
ロイストン事件 (創元推理文庫) [ D・M・ディヴァイン ] - 楽天ブックス
ロイストン事件 (創元推理文庫) [ D・M・ディヴァイン ] - 楽天ブックス
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2025年02月15日

新 謎解きはディナーのあとで

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ど天然な新米刑事が加わり、新章始動!

本屋大賞第1位&大ヒットシリーズの国民的ユーモアミステリ、待望の新章スタート!!
宝生麗子の後輩にど天然な新米刑事・若宮愛里が加わり、警視庁に栄転した風祭警部は大きなミスを犯して国立署に舞い戻り、
新たなメンバーで難事件に挑む。
富豪の家で”無人だった”はずの部屋から発見された長男の首吊り死体の謎とは?(「風祭警部の帰還」)
鍵のかかった土蔵で見つかった骨董好きの老人の遺体と血文字のダイイング・メッセージの謎、
シェアハウスで殺された看護師と5つの目覚まし時計の謎……
執事探偵・影山の推理と毒舌が冴えわたる、本格ミステリ全5編。

非現実的なトリックも、驚天動地の真相も、
「なるほど!」と納得してしまう。
これこそが東川さんの作品の持つ、ユーモアの力である。
――解説 今村昌弘(作家)

文庫版特典として、ショートショート「若宮刑事に倫理観はあるのか?」を収録!

シリーズも新たなレギュラーと出戻りレギュラー(笑)を迎えての、開幕。

「血文字は密室の中」、本格ミステリド定番の密室を最初(「風祭警部の帰還」は置いといて・笑)に
もってくるのは、流石だなあと。というか密室ミステリを最近読んだんですよね。
密室というのは、やはりわくわくしますね。心理的な密室、物理的な密室、
これからも様々な密室が登場してくるのでしょう。

「五つの目覚まし時計」、アリバイをメインとしたミステリです。
目覚ましの設定された時刻からの謎解きが中々です。

しかしアリバイトリックと事実誤認を用いたトリックとして、
最も秀逸なのは「煙草二本分のアリバイ」でしょうね。

影山が推理した「太った男」の正体は、実に見事かつ慧眼で、素晴らしい推理です。
証言した人々は、別に噓をついてはいないのに、ある事実誤認により、大きく話が変わってしまっていたのですね。

次作以降は若宮刑事の大活躍も描かれると期待しつつ。

新 謎解きはディナーのあとで - 東川 篤哉
新 謎解きはディナーのあとで - 東川 篤哉
新 謎解きはディナーのあとで [ 東川 篤哉 ] - 楽天ブックス
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2025年02月01日

その女の名は魔女 怪異名所巡り 2

まずはAmazonさんの紹介ページから。

幽霊に会えるバスツアーが戻って来た!
バスツアーに添乗するたびに、謎と怪奇に遭遇! 幽霊と呪いにめっぽう強く、正義感あふれる人情家――
“霊感バスガイド”町田藍が大活躍。人気のユーモア・ホラー・ミステリー第2弾。(解説/新保博久)

こちらのシリーズ、文庫本化したものは全て購入しているのですが、
積読本が増えすぎて、中々こちらは読み進まず(苦笑)

「1/24秒の悪魔」は、最後に明かされるフィルムの内容が恐怖ですね。
幽霊である信子さんが、時折土蔵に出てくれるのを「退屈しのぎになるわ」と承諾するのは、さすが赤川先生。
すずめバスとしては、鉄板を手に入れることになりましたね(笑

「奈落は今日も雪が降る」でも、町田藍は幽霊の矢田とたまに出てくれと交渉し、締結しています(笑)
いや、見事な営業活動。

「迷子になった弾丸」、よくこんな奇想天外な話を書けるなとまず驚きました。
弾丸が迷子(時空を超えた理由)は一切書かれず、過去の罪の清算のためなのでしょうか。

表題作は、現代社会とは思えない内容の話ですね。
村の人々は因果応報でしょう。

「予告編の人生」は、最後のハッピーエンドが赤川先生らしい。

次作以降も楽しみです。

その女の名は魔女 怪異名所巡り 2 (集英社文庫) - 赤川 次郎
その女の名は魔女 怪異名所巡り 2 (集英社文庫) - 赤川 次郎

その女の名は魔女 怪異名所巡り 2 (集英社文庫(日本)) [ 赤川 次郎 ] - 楽天ブックス
その女の名は魔女 怪異名所巡り 2 (集英社文庫(日本)) [ 赤川 次郎 ] - 楽天ブックス

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2025年01月21日

コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎

まずはAmazonさんの紹介ページから。

昨日行った居酒屋が消えた? 引き出しのお金が四万七千円も増えていた? だれも死んでいないのに姉が四方八方に
喪中はがきを送りつけていた? ミステリ談義の集まりにひとりゲストをお呼びして、
毎回カフェ〈アンブル〉でゆるゆると行う推理合戦。それなりにみんながんばるのだけど、
いつも謎を解き明かすのは店長の茶畑さんなのだった。──もっと気軽に謎解きを楽しみたいと思っていた皆さんへ贈る、
ほがらかなパズル・ストーリー7編。期待の新鋭がデビューを果たした安楽椅子探偵シリーズ第1弾。


更新が止まってました。
コロナに罹患してなんやらかんやらありまして。

気を張らずに、ゆっくり読める、まさにうってつけのミステリを読了。
コージーミステリ好きがあつまり、ミステリ談義をしている最中、どこからともなく
謎が持ち込まれ、メンバーのあれやこれやの推理の後に、真打たる店長が名推理を披露するという展開。

アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』をどこまでオマージュした本作は、
コージーミステリあるいは安楽椅子探偵ものとして定番になるかもしれません。

個人的おススメは「あるいは謎の喪中はがき」
これは純粋にわかりませんでした(笑)
先手を打ったということなんですねえ。
誰しもそういう病というかありますから、このお姉さんの感情は理解できる。
しかし喪中はがきとは・・・徹底してますね。
筆者もあとがきで書かれてますが、年賀はがきがいつまで続くのか、どうなることか。

「見知らぬ十万円」はやや強引かなという印象。
犯人はすぐわかるでしょう。まずその場で確認しろという。

「郷土史症候群」はタイトルは非常に面白いのですが、
謎はなんとなく予想がつきます。ただし動機まではわからず。

すでに第2弾のお話もあるようで、いやいや楽しみです。

コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 (創元推理文庫) - 笛吹 太郎
コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 (創元推理文庫) - 笛吹 太郎
コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 (創元推理文庫) [ 笛吹 太郎 ] - 楽天ブックス
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2025年01月04日

檜垣澤家の炎上

まずはAmazonさんの紹介ページから。

『細雪』×『華麗なる一族』×ミステリ!
「女であっても、私はすべてを手に入れたい」
富豪一家に拾われた娘のたったひとりの闘いが始まる。


横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。
互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。
陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは──。
小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。【解説=千街晶之】

というわけで、以下若干のネタバレあり。






『このミス』でい第3位に輝いた、新潮文庫書き下ろし作品。
書き下ろしミステリ、と書くべきなのでしょうが、中々難しい。

当然ながら『本格ミステリ・ベスト10』にはランクインしていません。
となると、『このミス』は何を評価して、このランキングなのか。

『このミス』のMY BEST 6でも結構取り上げられており、大河小説と評している方や、
重厚な物語の中に様々な伏線を張り巡らせた、まぎれもなくミステリとの評。

檜垣澤という女系一族の中の、妾腹の子であった高木かな子が、引き取られ、
どう生きていくのか、そして成長するにつれ、いかに自分の立場に見合ったものを手に入れるか、
子どもとは思えない行動と洞察力で、明治から大正を生き抜く物語。

女系とあえて書きましたが、これもミスリードですよね。
「ハル様」なる祟りをもたらす存在、
何もかも見通す、女刀自・スヱ。

自分をおもちゃのようにしていた、珠代や雪江、彼女たちが嫁いでしまうシーンは必読ですね。
かな子の人間味というか、なんだかんだ言っても、ずっと暮らしていたことへの思いがあったのでしょう。
これはラストの、まさに「炎上」の時にも見られます。それも感情が抑えられない程に。

花も自分のことをよく考えてくれていた。花なりに。
そんな感謝をするかな子の成長まで読めるのが良いです。

一番謎のような存在で描かれるのは西原でしょう。
かな子は油断ならない相手と警戒しつつ、最後の面会で感じたものは男女のそれなのか、いや上手い描き方です。

明治から大正末年までを描く本作。
かな子が唯一予想だにしなかった人が、放火&殺人事件の犯人。
でもこれは、スヱも噛んでいるわけで、その先、そのままの状態がいいとは誰も思っていなかったはずなので、
スヱは最後どうするつもりだったのだろうか。

大正末まで描かれれると記しましたが、最後に起こるのは関東大震災です。
この災害で、檜垣澤家はほとんど亡くなってしまい、
かな子は改めて、自分が求めていた立場に立つのですが、一方で、とてつもない後悔のようなものにも襲われます。
でも彼女にはまだ頼れる人が最後に現れましたし、持ち前の性格で立て直すでしょう。

解説の千街さんが、京極夏彦先生の『絡新婦の理』の一節を挙げているのは流石。
そう、本作確かに共通点が非常に多い。しかし、『絡新婦』と違うのは、とあとはぜひ読んで楽しんでください。

檜垣澤家の炎上(新潮文庫) - 永嶋恵美
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檜垣澤家の炎上(新潮文庫)【電子書籍】[ 永嶋恵美 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
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2025年01月01日

名探偵は誰だ

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「ホテルの客で唯一、自分を殺そうとしていないのは?」「一人暮らしの老婦人を始末しようとしているのは?」
「伝説の殺し屋のターゲットは?」「雪の山荘が爆破される緊急事態に生き残ったのは?」
「画廊に現れた《怪盗万華鏡》の正体は?」……。新本格ミステリの名手が贈る、
トリックとロジックとサプライズに満ちあふれたフーダニット7編。(解説・若林踏)

本年もどうぞよろしくお願いします。
犯人当てではない、ミステリといえば、パット・マガーの『被害者を探せ!』『探偵を探せ!』『七人のおば』
挙げればきりがありませんが、やはりマガーの作品群は色あせません。

芦辺さんの本作も当然ながらマガー作品を踏まえた上で、様々な切り口から我々を楽しませてくれます。
個人的愁眉は、第5話の「生き残ったのは誰だ?」。
解説にあるように、「雪の山荘が爆破される緊急事態に生き残ったのは?」というのを明らかにするのですが、
いわゆる本格の舞台装置を逆手に取った名作。
なるほど、関係者を一堂に会するの意味も、大きく(思っていたのと)違い、いやいや、素晴らしい短編です。

最初の「犯人以外を当てる」のは、読者も解けるようになっています。容疑者の会話から
果たして皆さん見つけることができるでしょうか?

ところで、パット・マガーのWikipediaでは、上記に挙げた作品は「変格推理」に分類されていて、
そういう分類あるんだろうかと、少し気になりました。

名探偵は誰だ (光文社文庫 あ 36-10) - 芦辺拓
名探偵は誰だ (光文社文庫 あ 36-10) - 芦辺拓
名探偵は誰だ (光文社文庫) [ 芦辺拓 ] - 楽天ブックス
名探偵は誰だ (光文社文庫) [ 芦辺拓 ] - 楽天ブックス
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