2017年01月22日

怪しい店

まずはAmazonさんの紹介ページから。

推理作家・有栖川有栖は、盟友の犯罪学者・火村英生を、
敬意を持ってこう呼ぶ。「臨床犯罪学者」と。骨董品店“骨董 あわしま”で、
店主の左衛門が殺された。生前の左衛門を惑わせた「変な物」とは…(「古物の魔」)。
ほか、美しい海に臨む理髪店のそばで火村が見かけた、列車に向けハンカチを振る美女など、
美しくも恐ろしい「お店」を巡る謎を、火村と有栖の名コンビが解き明かす。
火村英生シリーズ、珠玉の作品集が登場。

「古物の魔」での推理の場面
 「私の辻褄合わせは決定的な証拠にまっすぐつながっている。凶器を調べられたら
 終了するからです。」
その前半部の「ロジカルな推理で大団円となるドラマを期待していましたか?」も強烈な一撃。

「ショーウィンドウを砕く」
火村もの短編集には必ず一編は「刑事コロンボ」モノ(倒叙形式)が収められていますが、
本作ではこれが該当。

火村とアリスが夕狩を罠にはめた箇所はすぐにわかります。
本編も最後のシーン。
「―愉良が鍵を落としたと騒いだ日のうちに、やってしまえばよかったのさ。結構が一日
 遅かったな。幻聴が耳の奥で響いた。火村英生の声で。」
おそらく火村が実際に言っていてもおかしくない。

表題作はアリスがかつて見たことのあるまさに「怪しい店」の話。
本作姉妹編?にもあたる「暗い宿」でもアリスが急病で助けられた「暗い宿」が
舞台の作品がありましたので、ともにアリス繋がりが表題作なわけです。

本作は火村の推理より、アリスと小町刑事が事件の反省会を行う喫茶店の
シーンが印象的。

ほんわか系が「潮騒理髪店」。これも短編集には必須の話
(殺人が起こらないということです。)

火村シリーズは抜群の安定感と安心感が相変わらずすごい。
そして最初に述べた、時折見せる火村の「狂気」的な部分も魅力の一つです。

ところで、シャングリラ十字団との対決って描かれるんでしょうかね。
ドラマ版ではそれがメインだったと耳にしたのですが・・・
まあでも<怪人vs名探偵>という構図は、火村シリーズには合わないな・・・



怪しい店 (角川文庫)

怪しい店 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫



怪しい店<「火村英生」シリーズ> (角川文庫)

怪しい店<「火村英生」シリーズ> (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 19:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 有栖川有栖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月15日

ランチ探偵 容疑者のレシピ

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大仏ホームのOL・麗子は「トラブルが起こっている」の一言で、
ランチの外食を渋る同僚・ゆいかを誘い出すことに成功。
訪れた洋食店には、呪われた社宅に住んでいると悩む男性が…
(「その部屋ではなにも起こらない」)。
閉ざされた美容室での盗難、命を狙われるペットなど、
合コン相手が持ち込む謎にOLコンビが挑む全5話。好評シリーズ第2弾。

合コン相手の風貌よりも、彼らが持ち込む謎に惹かれるOL天野ゆいかと
合コンはしているものの、中々相手がみつからない阿久津麗子コンビ
が送る第2弾。

本書では彼らの上司が異動したり、ゆいか自身にも辞令が
降りたりと、物語に大きな変化が見られます。

所収されている5編のうち、オススメは「密室における十人の容疑者」
美容室という密室で、誰がスマホを移動させることができたのか。
血なまぐさい殺人事件とは違いますが、見事な密室で、
ゆいかが解き明かした構図も見事です。

タイトル的には「小日向家の犬はなぜ狙われる」も本歌取りが
上手くて好きですね。
依頼人が必ずしも全てを話しているとは限らない所まで見抜く
ゆいかもさすがです。

ラストでは再びこのコンビが本社に揃いますが、次作も期待したいです。


ランチ探偵 容疑者のレシピ (実業之日本社文庫)

ランチ探偵 容疑者のレシピ (実業之日本社文庫)

  • 作者: 水生大海
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/12/03
  • メディア: 文庫



ランチ探偵 容疑者のレシピ (実業之日本社文庫)

ランチ探偵 容疑者のレシピ (実業之日本社文庫)

  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/12/03
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 18:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 水生大海 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月08日

忙しい花嫁

まずはAmazonさんの紹介ページから。

塚川亜由美は研究会の先輩・田村とその彼女・淑子の結婚式に招待された。
しかし式の間中、花婿の田村は暗い顔。さらに「花嫁は淑子そっくりな別人」だと言う。
謎を残したまま田村はハネムーン先で行方不明になった上、
大学内でも殺人が!真実を追う亜由美だが…。
大人気シリーズ第1弾、作家生活40周年を記念して実業之日本社文庫に初登場!

塚川亜由美初登場の本作。
結婚式で突如新郎から「あの女はぼくの妻じゃない」「そっくりだが別の女だ」
と新婦が違うことを告白される亜由美。
この謎からの始まり方は本当に魅力的で、
ぐいぐい物語に引き込まれていきます。

殿永部長刑事も初登場作からその良い性格がにじみ出ていますねえ。

亜由美の相棒であるドン・ファンも初登場。
事件関係者の愛犬だったんですねえ・・・
このあたりは三毛猫ホームズに通じる所があります。

一作目にして、ほぼシリーズの骨格が固まっていて、
かつ、奇妙で魅力的な謎で読者の心を掴む傑作。
最近は短編2作の短編集で刊行されていますが、
本作のように長編もまた書いてほしいなあ。



忙しい花嫁 (実業之日本社文庫)

忙しい花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/12/03
  • メディア: 文庫



忙しい花嫁<花嫁シリーズ> (角川文庫)

忙しい花嫁<花嫁シリーズ> (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: Kindle版
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2017年01月02日

福家警部補の報告

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、2017年一発目は、昨年読了済み本から。
そしてまずはAmazonさんの紹介ページから。

今や生殺与奪の権を握る営業部長となった元同人誌仲間に干される漫画家、
先代組長の遺志に従って我が身を顧みず元組員の行く末を才覚するヤクザ、
銀行強盗計画を察知し決行直前の三人組を爆弾で吹き飛ばすエンジニア夫婦―
過去数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験は、殺人事件に際しても活かされる。
福家警部補はどこに着眼して証拠を集めるのか。三編収録のシリーズ第三集。

本書第2編の「少女の沈黙」の菅原巽が、本作では
最も同情してしまうなあ・・・
彼の血のにじむような努力は本当にすごいです。
ラストは対立していた組から逃亡ルートまで提供されるという、
菅原の良さが際立った上で、福家に逮捕され終幕。
情状酌量は厳しいか。

この「少女の沈黙」では福家の推理がいかんなく発揮されますが、
それ以上に、組対の志茂巡査部長をやり込めたり、
組関係者へも名前が知れ渡っていたりと、ちょっと意外な一面も見えます。


「禁断の筋書」と「少女の沈黙」、どちらの作品でも
犯人にとって思い出深い物が逮捕の決め手となっています。
ただし前者はそれを知っていて福家の罠にはまり、
後者は最後に外れなかった指輪がとれるという、全然違う結末なのが対照的。

ところで、本作には総務部総務課の須藤警部補という人物が
度々登場します。
う~む、聞いたことがあるような・・・
福家と彼の会話に「薄」という人物が登場したことでようやくわかりました(笑

これは大倉さんの別シリーズ(動物シリーズ)の主人公とワトソン役?ではないですか。
シリーズコラボとはうれしい。『蜂を愛した容疑者』(文庫版)は今月発売です!

そして最終作「女神の微笑」は、爆弾で悪党を吹き飛ばす「仕事」?をしている
老夫婦が犯人であり主役。
この事件では、最後に老夫婦に逃亡されてしまい、福家に
「楽しかったわ、また会いましょう」というメールを残して終幕。
次作以降、この老夫婦は福家のライバルとして登場するのでしょうか?


福家警部補の報告 (創元推理文庫)

福家警部補の報告 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/12/12
  • メディア: 文庫



福家警部補の報告 (創元推理文庫)

福家警部補の報告 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/12/12
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 18:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 大倉崇裕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする