2017年07月23日

ほうかご探偵隊

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ある朝いつものように登校すると、僕の机の上には分解されたたて笛が。しかも、一部品だけ持ち去られている。―いま五年三組で連続して起きている消失事件。不可解なことに“なくなっても誰も困らないもの”ばかりが狙われているのだ。四番目の被害者(?)となった僕は、真相を探るべく龍之介くんと二人で調査を始める。小学校を舞台に、謎解きの愉しさに満ちた正統派本格推理。

元々は講談社で企画された、"かつて子どもだったあなたと少年少女のための"<ミステリーランド>から
刊行されたジュブナイルの一冊。

主人公の藤原高時が学校に登校すると、自分の机の周りにクラスメイトが集まって
なにやら騒がしい・・・なんともう使っていないが高時のたて笛の真ん中だけが
無くなっていたのだった。

そういえば、このところクラスでは奇妙なことが。
棟方くんの描いた絵画が消失、さらに学校で飼育していたニワトリの三太までも。
一体どういうことなのだろう・・・

そんなとき、江戸川乱歩を通じて仲良くなった、クラスメイトの龍之介くんと
明智探偵と小林少年ばりの、探偵団を結成し、これらの謎に挑むことに。

驚天動地のトリックや奇想天外な舞台設定などは一切登場しません。
しかし、三太が居なくなった密室状態の不可思議さや、
それを実に論理的に説いていく、本書三分の一を占める解決編、
二重三重にひっくり返る結末と、読み応え十分。
行間にはいる「これでおわりのはずはない」「これではやっぱりおわれない」が
さらに物語に引き込ませます。
謎解きの醍醐味を味わえる秀作です。

ところで探偵役を務めた龍之介には、東京に住む、特に決まった職に就いていない叔父が居て、
彼はその叔父に憧れているようです。

その叔父は「日常が面白くなければ、自分で捜せばいいんだって。物の見方さえ変えて捜せば、
愉快なことなんかいくらだって、そこらじゅうに転がってる」が口癖。

そういえば、龍之介の見た目は「背が小さくて顔が小さくて、そのっくせ目だけはリスみたいに
まん丸で大きい。森の小動物みたいなヤツ」だそうです。

まさかこの叔父とは・・・そして龍之介の苗字が一切でてこないのは、まさか?!
と倉知さんのシリーズ探偵を匂わせ終幕。
というか、ミステリーランドの表紙は明らかに狙っている(笑

そろそろ叔父さんの新しい物語もぜひお願いします!


ほうかご探偵隊 (創元推理文庫)

ほうかご探偵隊 (創元推理文庫)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/06/21
  • メディア: 文庫



ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)

ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/11/25
  • メディア: 単行本
posted by コースケ at 19:43| Comment(4) | TrackBack(0) | 倉知淳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月09日

江神二郎の洞察

まずはAmazonさんの紹介ページから。

英都大学に入学したばかりの一九八八年四月、すれ違いざまにぶつかって落ちた一冊―中井英夫『虚無への供物』。この本と、江神部長との出会いが僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった。アリス最初の事件「瑠璃荘事件」など、昭和から平成へという時代の転換期である一年の出来事を描いた九編を収録。ファン必携の“江神二郎シリーズ”短編集。

学生アリスが江神先輩と初めて出会うエピソードから、
マリア登場までを描く、まさに連作短編集。

シリーズ第1作『月光ゲーム』がアリスや望月、織田の中で相当な出来事(当然ですが)
として捉えられている様が実によくわかり、本書を読んだ後、改めて『月光ゲーム』を
再読したい思いに駆られました。

オススメは「瑠璃荘事件」
江神先輩の推理は見事です。ただ、アリスや織田も感心はしているものの、
いわゆるミステリに登場する名探偵とは全然・・・と感じているようです。
しかしこれが、『月光ゲーム』で一変するわけです。
アリスが発した一言、「名探偵も他人を信じることができる」。名言です。

マリアにも結局この『月光ゲーム』での出来事を話したアリス。
それが決め手なのかわかりませんが、マリアはEMCに入部します。
そして、彼女の入部こそが第2作『孤島パズル』に繋がります。


江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: 文庫



江神二郎の洞察 <江神シリーズ> (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 <江神シリーズ> (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 03:19| Comment(4) | TrackBack(0) | 有栖川有栖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月01日

五覚堂の殺人~Burning Ship~

まずはAmazonさんの紹介ページから。

放浪の数学者、十和田只人は美しき天才、善知鳥神に導かれ第三の館へ。
そこで見せられたものは起きたばかりの事件の映像―それは五覚堂に閉じ込められた哲学者、志田幾郎の一族と警察庁キャリア、宮司司の妹、百合子を襲う連続密室殺人だった。
「既に起きた」事件に十和田はどう挑むのか。館&理系ミステリ第三弾!

すでに起きてしまった事件かつ今も続いているのか?それとももう
事件は終わってしまったのか?それが分からないままの状態というのは
中々おもしろいシチュエーションでした。

善知鳥神から出されたヒントはただ一つ、「回転」
相変わらずトリックは見事です。
なので、前書と同じく、後半の動機部分は不要な感じもしました。

シリーズとしてどう進むのか、まだ見えてこない。
早く次々と文庫化を!


五覚堂の殺人 ~Burning Ship~ (講談社文庫)

五覚堂の殺人 ~Burning Ship~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫



五覚堂の殺人 ~Burning Ship~ 数学者十和田只人 (講談社文庫)

五覚堂の殺人 ~Burning Ship~ 数学者十和田只人 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 00:44| Comment(4) | TrackBack(0) | 周木律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする