まずはAmazonさんの紹介ページから。
製品に欠陥のある洗濯機が原因で、女性が感電死する。製造元のK電機工業は欠陥を知りながら
それを認めず、世間から非難を浴びる。そんな悪い状況から抜け出したいK電機工業の成瀬は、
被害者家族の平田夫婦や不買運動をしている人々の絆を壊すため、
捏造した手紙を出す計画を提案する。その計画は思惑通りに進んでいくかに思われたが…。
良くも悪くも、一族経営に近いK電機工業、社長は後半部分でまともな対応に出るのですが、
息子が酷すぎる。社長の対応だけではおそらくもう会社の建て直しは無理でしょうね・・・
K電機ばかりを攻めるマスコミや、被害者家族、不買運動を続ける人々を
混乱させる目的で書かれた手紙。
それがK電機への不買ではなく、平田家の現実のものとなるというのは
手紙を出した成瀬夫人やこれを画策した武藤副社長も予想だにしなかったでしょう。
一方、現代社会で手紙、というのはせいぜい年賀状で残っているくらいでしょうか。
それすらも、LINEやe-mailで事足りる世の中になりました。
しかし、手紙の持つ<不気味さ>はLINEやe-mailでは表現できないでしょう。
今の時代でも、突然自分の所へ、奇妙な手紙が届いたら・・・
本作はそんな手紙の持つ異様さ、不気味さも表していると感じました。
2019年02月23日
2019年02月16日
世界推理短編傑作集3
まずはAmazonさんの紹介ページから。
珠玉の推理短編を年代順に集成し、1960年初版で以来版を重ね現在に至る
『世界短編傑作集』を全面リニューアル!!第3巻にはフィルポッツ「三死人」、
クリスティ「夜鶯荘」、ワイルド「堕天使の冒険」、ユーステス「茶の葉」、
ウイン「キプロスの蜂」、ロバーツ「イギリス製濾過器」、ヘミングウェイ「殺人者」、
コール夫妻「窓のふくろう」、レドマン「完全犯罪」、バークリー「偶然の審判」
の1920年代の作品10編を収録した。
以下、ネタバレあり。
馬鹿馬鹿しい一言かもしれませんが、本当にどれも傑作です。
「三死人」は、動機、いわばハウダニットに焦点をあてた傑作。
名探偵デュヴィーンはあくまで三人の性格のみを知った上での推理、と付け加えますが、
これがまた実に見事な推理。
クリスティの「夜鶯荘」も初読。
知り合ってすぐに結婚した男女。
夫のちょっとした言動や、ひょんなことから知る夫の嘘、そして鍵のかかった引き出しに
入っていた新聞記事から、夫が自分を殺そうとしているのでは?と疑心暗鬼に陥り、
それから反抗していくまでが一気に語られます。
ラストまで読むと、怖いのは夫なのか妻なのか中々わからなくなる作品。
夫も意外と小心者なのではないかとちょっと思ってしまった(笑
「茶の葉」はもう言わずもがな、ミステリ好きなら即気付くトリックでしょう。
しかし、茶の葉がどう関係するのかと、法廷で真実を暴くという場面が良い。
「窓のふくろう」は密室を扱った殺人事件なのですが、
実の所犯人はもうあからさまなのです。
ただし、この表題が一番ミステリアスというか、中々凝っているなあと感じます。
「完全犯罪」は「推理小説で終わる推理小説」と評された作品。
名探偵=名犯人という構図をそのままミステリとした稀な作品。
あ、しかし名探偵ではないからこそ、この犯罪が生まれたというのは
また皮肉です。
すでに4巻も刊行されました。こちらも楽しみです。
珠玉の推理短編を年代順に集成し、1960年初版で以来版を重ね現在に至る
『世界短編傑作集』を全面リニューアル!!第3巻にはフィルポッツ「三死人」、
クリスティ「夜鶯荘」、ワイルド「堕天使の冒険」、ユーステス「茶の葉」、
ウイン「キプロスの蜂」、ロバーツ「イギリス製濾過器」、ヘミングウェイ「殺人者」、
コール夫妻「窓のふくろう」、レドマン「完全犯罪」、バークリー「偶然の審判」
の1920年代の作品10編を収録した。
以下、ネタバレあり。
馬鹿馬鹿しい一言かもしれませんが、本当にどれも傑作です。
「三死人」は、動機、いわばハウダニットに焦点をあてた傑作。
名探偵デュヴィーンはあくまで三人の性格のみを知った上での推理、と付け加えますが、
これがまた実に見事な推理。
クリスティの「夜鶯荘」も初読。
知り合ってすぐに結婚した男女。
夫のちょっとした言動や、ひょんなことから知る夫の嘘、そして鍵のかかった引き出しに
入っていた新聞記事から、夫が自分を殺そうとしているのでは?と疑心暗鬼に陥り、
それから反抗していくまでが一気に語られます。
ラストまで読むと、怖いのは夫なのか妻なのか中々わからなくなる作品。
夫も意外と小心者なのではないかとちょっと思ってしまった(笑
「茶の葉」はもう言わずもがな、ミステリ好きなら即気付くトリックでしょう。
しかし、茶の葉がどう関係するのかと、法廷で真実を暴くという場面が良い。
「窓のふくろう」は密室を扱った殺人事件なのですが、
実の所犯人はもうあからさまなのです。
ただし、この表題が一番ミステリアスというか、中々凝っているなあと感じます。
「完全犯罪」は「推理小説で終わる推理小説」と評された作品。
名探偵=名犯人という構図をそのままミステリとした稀な作品。
あ、しかし名探偵ではないからこそ、この犯罪が生まれたというのは
また皮肉です。
すでに4巻も刊行されました。こちらも楽しみです。
2019年02月10日
殺意のまつり
まずはAmazonさんの紹介ページから。
二十年前に発生した殺人事件の真犯人と名乗る男が現れた。だが、
当時捕まった男は十五年の刑期を終えて出所している。調査を進める弁護士の元には、
冤罪の証拠が続々積み上がる(「殺意のまつり」)。どんでん返しの連続に巧緻なトリック。
「女王」の片鱗をすでに発揮した初期傑作が一堂に!
本ブログでは山村美紗先生の著書は初めて。
近年の各作家さんの復刊ブームで、本書も復刊し、気になっていたので購入しました。
本格色が強いのは「恐怖の賀状」と「黒枠の写真」でしょうか。
後者は関東圏に住んでいる人は陥りやすいミスだろうなあ。
ただ、本作の大沢五郎の決断力の早さは凄すぎます。殺人を思い立ってから即実行という。
「孤独な証言」は現在でも当てはまる、奥が深い作品。
唯一生き残った乗客の証言、それをどう「解釈」するかは聞き手次第。
表題作は秀作。
過去の殺人事件が実はえん罪ではないか?という所から物語が始まり、
それが晴らされるのかが焦点と思いきや、最後の怒濤の展開が素晴らしい。
まさに「殺意のまつり」というタイトルに偽りなし。
千街さんの解説にある『幻の指定席』や『死体はクーラーが好き』もぜひ復刊を
お願いします。
二十年前に発生した殺人事件の真犯人と名乗る男が現れた。だが、
当時捕まった男は十五年の刑期を終えて出所している。調査を進める弁護士の元には、
冤罪の証拠が続々積み上がる(「殺意のまつり」)。どんでん返しの連続に巧緻なトリック。
「女王」の片鱗をすでに発揮した初期傑作が一堂に!
本ブログでは山村美紗先生の著書は初めて。
近年の各作家さんの復刊ブームで、本書も復刊し、気になっていたので購入しました。
本格色が強いのは「恐怖の賀状」と「黒枠の写真」でしょうか。
後者は関東圏に住んでいる人は陥りやすいミスだろうなあ。
ただ、本作の大沢五郎の決断力の早さは凄すぎます。殺人を思い立ってから即実行という。
「孤独な証言」は現在でも当てはまる、奥が深い作品。
唯一生き残った乗客の証言、それをどう「解釈」するかは聞き手次第。
表題作は秀作。
過去の殺人事件が実はえん罪ではないか?という所から物語が始まり、
それが晴らされるのかが焦点と思いきや、最後の怒濤の展開が素晴らしい。
まさに「殺意のまつり」というタイトルに偽りなし。
千街さんの解説にある『幻の指定席』や『死体はクーラーが好き』もぜひ復刊を
お願いします。
2019年02月02日
鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~
まずはAmazonさんの紹介ページから。
異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型たる建物を訪れた百合子に、
ある手記が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。
無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO、WHY、HOWの謎。
原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!
前々作で探偵役が自らその役を降り、そして前作でワトソン役(たち)が降板するという、
シリーズとしては異例の歩みを続ける<堂>シリーズ。
本作では、一連の事件の発端になった(と思われる)「鏡面堂」の事件が語られます。
やはり<堂>は回転するのです。これがこのシリーズの貫徹したものでしょうね。
また「手記」という体裁を取って語られることから、そこに何かの仕掛けがあるのは
なんとなく予想がつきます。
トリックそのものはさすがだし、容疑者外しの過程も面白い。
容疑者のそれぞれの特徴がうまく落とし込まれていて、上記書いた仕掛けは
決して読者にとってアンフェアである訳ではありません。
しかし、そもそもの事件を起こした動機がどうもなあ・・・という印象。
まあこれはシリーズ通してもそのようなものは見受けられましたけど。
「手記」を書いた人物にしても、想像がだいたいつくし、
やはり宮司司と百合子、そして十和田只人、善知鳥神が巻き込まれた事件の謎が
最後まで鍵となるようです。
次作であり最終作「大聖堂の殺人~The Book~」に期待しましょう。

異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型たる建物を訪れた百合子に、
ある手記が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。
無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO、WHY、HOWの謎。
原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!
前々作で探偵役が自らその役を降り、そして前作でワトソン役(たち)が降板するという、
シリーズとしては異例の歩みを続ける<堂>シリーズ。
本作では、一連の事件の発端になった(と思われる)「鏡面堂」の事件が語られます。
やはり<堂>は回転するのです。これがこのシリーズの貫徹したものでしょうね。
また「手記」という体裁を取って語られることから、そこに何かの仕掛けがあるのは
なんとなく予想がつきます。
トリックそのものはさすがだし、容疑者外しの過程も面白い。
容疑者のそれぞれの特徴がうまく落とし込まれていて、上記書いた仕掛けは
決して読者にとってアンフェアである訳ではありません。
しかし、そもそもの事件を起こした動機がどうもなあ・・・という印象。
まあこれはシリーズ通してもそのようなものは見受けられましたけど。
「手記」を書いた人物にしても、想像がだいたいつくし、
やはり宮司司と百合子、そして十和田只人、善知鳥神が巻き込まれた事件の謎が
最後まで鍵となるようです。
次作であり最終作「大聖堂の殺人~The Book~」に期待しましょう。

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)
- 作者: 周木 律
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/12/14
- メディア: 文庫

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/12/14
- メディア: Kindle版