まずはAmazonさんの紹介ページから。
瀬戸内の小島に、死体が次々と流れ着く。奇怪な相談を受けた御手洗潔は
石岡和己とともに現地へ赴き、事件の鍵が古から栄えた港町・鞆にあることを見抜く。
その鞆では、運命の糸に操られるように、一見無関係の複数の事件が同時進行で発生していた―。
伝説の名探偵が複雑に絡み合った難事件に挑む!
織田信長の鉄甲船が忽然と消えたのはなぜか。幕末の老中、
阿部正弘が記したと思われる「星籠」とは?数々の謎を秘めた瀬戸内で怪事件が連続する。
変死体の漂着、カルト団体と死体遺棄事件、不可解な乳児誘拐とその両親を襲う惨禍。
数百年の時を越え、すべてが繋がる驚愕の真相を、御手洗潔が炙り出す!
久しぶりの更新となりました。このところネットサーフィンしかしてません(笑
『眩暈』も読んだので、他の御手洗シリーズもと思い、本棚を片付けつつ
色々と探していたら、かつて『リベルタスの寓話』を発見。ブログに出てこないはずなので、
その前に読了したのかー。それから短編集も当然ありました。これがまた良いんですよねえ。
とまあそんな話はともかく、『傘を折る女』が映像化した時は驚きましたが、
映画化までするとは思わなかった。
かつての島田御大は御手洗シリーズの映像化は拒否していたのを、何かのあとがきで
読んだので・・・
本書の解説でも少し触れられていますが、映像化の過程を少し知ることができます。
本書は、御手洗潔が石岡和己と組んで解決した、日本での(現時点での)最後の事件。
御大の故郷を舞台に、さらに1994年の物語ですが、現在の社会問題なども絡め、さらに
村上水軍や幕末の開明派と言われた老中・阿部正弘まで登場する、壮大なスケールの物語
となっています。
そのため、最初の御手洗登場シーンでは、変わらずトリッキーさを発揮していますが、
その後は、推理そのものはさすがですが、御手洗の物語というよりも、瀬戸内海の物語、
そこに昨今の様々な社会問題を絡み合わせた、というのが印象です。
小坂井茂や忽那准一、辰見洋子・・・彼彼女たちそれぞれの物語も重厚で、
これらがどう一つの事件に結びついていくのか、ここも読みどころの一つ。
ただし、先少し書いたように、日本で起きた御手洗潔シリーズとして見ると、
些か物足りない。突拍子もない謎、奇想天外なトリック、そんなものが突然登場し、
それをいかに御手洗がトリッキーさを見せつつも、合理的に解決していくのか、
そうしたものを期待してしまうと、肩すかしかもしれません。
ただ、そうした点で本書を読むのはちょっと違うのかもしれませんね。
個人的には石岡さんがあんなに女性に積極的にいこうとしているとは思わなかった(笑
2020年08月23日
2020年08月11日
夕暮れ密室
まずはAmazonさんの紹介ページから。
遅刻厳禁!明日、晴れるといいね―文化祭前夜、そう言い残した少女は、
翌朝、密室状態のシャワールームで死んでいた。少女は、栢山高校バレー部マネージャーにして
男子生徒憧れの的、森下栞。遺書が発見され自殺として処理されそうになる中、
疑念を持ったバレー部員やクラスメイトの、真実を追う推理が始まる。
立ちはだかる二重密室と若者ならではの痛みと殺意。
横溝正史ミステリ大賞選考委員が奮い立った、傑作青春ミステリ。
いつも拝読している31様のブログにて紹介されていて、気になったので購入しました。
登場人物紹介のところに、森下栞:名探偵だが・・・。制服のスカートを翻し、颯爽と走る。
と説明されているのですが、なんと被害者は彼女という!名探偵が・・・
各章は登場人物ごとの章立てになっていて、各人の内面も窺い知れて中々良く、
個人的には桜井秋人の章がいいですね。いや、彼はいい(笑
久保田和志の密室解説は、思わずなるほどと思ってしまうくらい、良く出来ている推理ですが、
最後に探偵役が明かす真の密室解説は思わず唸ってしまいました。
密室とタイトルに入っているので、それだけにプレッシャーが大きいと思いますが、
いやあお見事。北村薫先生、綾辻行人先生がどうしても本にしたいという意向を
示したのも頷けます。全くの個人的意見ですが、綾辻先生はこの手の密室は好きそうです。
森下栞が男子生徒憧れの的であり、節々にそうした描写が出てくるなど、
そして結果的にこれが殺害動機の1つでもあるのが青春小説な側面なのでしょう。
ラストにはもう1つ大きな犯人のウソが暴かれるのですが、これもまた同じ。
犯人と周囲、そして被害者の想い、それぞれがすれ違ってしまい、
こんな悲しい事態を招いてしまったのです。
しかし、ピッキングの技術を丸々と信じていたなあ。最後まで(苦笑)
遅刻厳禁!明日、晴れるといいね―文化祭前夜、そう言い残した少女は、
翌朝、密室状態のシャワールームで死んでいた。少女は、栢山高校バレー部マネージャーにして
男子生徒憧れの的、森下栞。遺書が発見され自殺として処理されそうになる中、
疑念を持ったバレー部員やクラスメイトの、真実を追う推理が始まる。
立ちはだかる二重密室と若者ならではの痛みと殺意。
横溝正史ミステリ大賞選考委員が奮い立った、傑作青春ミステリ。
いつも拝読している31様のブログにて紹介されていて、気になったので購入しました。
登場人物紹介のところに、森下栞:名探偵だが・・・。制服のスカートを翻し、颯爽と走る。
と説明されているのですが、なんと被害者は彼女という!名探偵が・・・
各章は登場人物ごとの章立てになっていて、各人の内面も窺い知れて中々良く、
個人的には桜井秋人の章がいいですね。いや、彼はいい(笑
久保田和志の密室解説は、思わずなるほどと思ってしまうくらい、良く出来ている推理ですが、
最後に探偵役が明かす真の密室解説は思わず唸ってしまいました。
密室とタイトルに入っているので、それだけにプレッシャーが大きいと思いますが、
いやあお見事。北村薫先生、綾辻行人先生がどうしても本にしたいという意向を
示したのも頷けます。全くの個人的意見ですが、綾辻先生はこの手の密室は好きそうです。
森下栞が男子生徒憧れの的であり、節々にそうした描写が出てくるなど、
そして結果的にこれが殺害動機の1つでもあるのが青春小説な側面なのでしょう。
ラストにはもう1つ大きな犯人のウソが暴かれるのですが、これもまた同じ。
犯人と周囲、そして被害者の想い、それぞれがすれ違ってしまい、
こんな悲しい事態を招いてしまったのです。
しかし、ピッキングの技術を丸々と信じていたなあ。最後まで(苦笑)
2020年08月10日
三毛猫ホームズの復活祭
まずはAmazonさんの紹介ページから。
高畠和人の母はオレオレ詐欺に引っかかり、さらにトラックにはねられて重体に―。
一方、片山と妹の晴美は、別のオレオレ詐欺を阻止したものの、金の受け渡し役が殺害されてしまう!
捜査過程で浮き上がってきた“K学院”の寄宿舎で暮らす少女・和美を訪ねるが…。
和美と犯人の関係とは?寄宿舎に集まった人々が事件の真相に迫る。
国民的大人気シリーズ第52弾!
52弾のテーマは、オレオレ詐欺。今では振り込め詐欺と統一されていますね。
この「復活祭」というタイトル、内容とあまり絡んでない気がしたのですが、
解説で、カッパノベルズ版著者のことばで、その意味がわかります。
「そこには、「いつか自分もトシをとる」という想像力のかけらもない。政治が国民に
平然と嘘をつくご時世だが、こんな時代だからこそ、「真実」と「真心」を大切にする、
ホームズや片山兄妹に活躍してもらわなくてはならない。「人間性の復活」の祈りを
込めて。
赤川先生の近著を全て読んでいるわけではありませんが、花嫁シリーズしかり、
本書三毛猫ホームズシリーズしかり、現代社会の問題と密接に関係するものが多いですね。
以前、先生が「伊集院とラジオ」とにゲスト出演された際にも、「表現の自由」に
ついて取り上げられていたと記憶しています。
それだけ、現在の日本社会が危機的状況と感じられているからこそ、
作品内で、その危険性や危機的状況を警鐘しつつも、
シリーズキャラクターは不変であるという、安心感を読者に与えてくれるのです。
一方、この「復活祭」という言葉は、本書では家族の復活の意味も含まれている
ように感じました。
松井明と和美、おばさん。西川郷子と寛治、竹本涼香と久美。
今回の事件がなければ、出会うことがなかった・話すことがなかった家族です。
そして、彼彼女たちを見守るホームズ。すでにホームズは全てを見通している
かのような佇まい!いや、昔からそうだった気もしますが・・・
個人的に社会問題や現代社会との関係は、確かに重要だと思うのですが、
一方で、初期の「怪談」「降霊騒動」、ヨーロッパシリーズ(「騎士道」「幽霊クラブ」)
短編集「びっくり箱」など、かつての作品群のような作風もまた是非とも読みたい!
高畠和人の母はオレオレ詐欺に引っかかり、さらにトラックにはねられて重体に―。
一方、片山と妹の晴美は、別のオレオレ詐欺を阻止したものの、金の受け渡し役が殺害されてしまう!
捜査過程で浮き上がってきた“K学院”の寄宿舎で暮らす少女・和美を訪ねるが…。
和美と犯人の関係とは?寄宿舎に集まった人々が事件の真相に迫る。
国民的大人気シリーズ第52弾!
52弾のテーマは、オレオレ詐欺。今では振り込め詐欺と統一されていますね。
この「復活祭」というタイトル、内容とあまり絡んでない気がしたのですが、
解説で、カッパノベルズ版著者のことばで、その意味がわかります。
「そこには、「いつか自分もトシをとる」という想像力のかけらもない。政治が国民に
平然と嘘をつくご時世だが、こんな時代だからこそ、「真実」と「真心」を大切にする、
ホームズや片山兄妹に活躍してもらわなくてはならない。「人間性の復活」の祈りを
込めて。
赤川先生の近著を全て読んでいるわけではありませんが、花嫁シリーズしかり、
本書三毛猫ホームズシリーズしかり、現代社会の問題と密接に関係するものが多いですね。
以前、先生が「伊集院とラジオ」とにゲスト出演された際にも、「表現の自由」に
ついて取り上げられていたと記憶しています。
それだけ、現在の日本社会が危機的状況と感じられているからこそ、
作品内で、その危険性や危機的状況を警鐘しつつも、
シリーズキャラクターは不変であるという、安心感を読者に与えてくれるのです。
一方、この「復活祭」という言葉は、本書では家族の復活の意味も含まれている
ように感じました。
松井明と和美、おばさん。西川郷子と寛治、竹本涼香と久美。
今回の事件がなければ、出会うことがなかった・話すことがなかった家族です。
そして、彼彼女たちを見守るホームズ。すでにホームズは全てを見通している
かのような佇まい!いや、昔からそうだった気もしますが・・・
個人的に社会問題や現代社会との関係は、確かに重要だと思うのですが、
一方で、初期の「怪談」「降霊騒動」、ヨーロッパシリーズ(「騎士道」「幽霊クラブ」)
短編集「びっくり箱」など、かつての作品群のような作風もまた是非とも読みたい!
2020年08月02日
鬼畜の家
まずはAmazonさんの紹介ページから。
我が家の鬼畜は、母でした―保険金目当てで次々と家族に手をかけた母親。巧妙な殺人計画、
殺人教唆、資産収奪…唯一生き残った末娘の口から、信じがたい「鬼畜の家」の実態が明らかにされる。人間の恐るべき欲望、驚愕の真相!第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、
衝撃のデビュー作。
以下、ややネタバレ。
このところ深木さんのご著書を読むことが増えたので、
デビュー作から購入してみました。
本書は、元警察勤めの探偵が、北川家の生き残りの娘からの依頼により、
北川家関係者からの証言を集めていく、という構成。
生き残りの娘との会話以外では、探偵(榊原)は登場せず、
関係者の証言のみで大半が構成されているという、中々珍しい小説です。
というか、この構成そのものが大きなトリックでもあるんですよね。
個人的にこのトリックが最も秀逸。木の葉は森に隠せ、まさにこの言の通り。
タイトルの意味するもの、物語の最初と最後で大きく異なるのが印象的。
母親の郁江の最初の境遇などはひどいなあと思いますが、
その後の彼女の行動はまさに非道。
妹の養子縁組先の事件が一番衝撃を受けたなあ・・・
亜矢名と由紀名の、あのトリック。実際に上手くいくのかどうか、
そこがちょっと気になりました。
このタイトルで購入を躊躇っている方もおられるかもしれませんが、
ミステリ好きなら、ぜひ購入をお勧めします。
我が家の鬼畜は、母でした―保険金目当てで次々と家族に手をかけた母親。巧妙な殺人計画、
殺人教唆、資産収奪…唯一生き残った末娘の口から、信じがたい「鬼畜の家」の実態が明らかにされる。人間の恐るべき欲望、驚愕の真相!第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、
衝撃のデビュー作。
以下、ややネタバレ。
このところ深木さんのご著書を読むことが増えたので、
デビュー作から購入してみました。
本書は、元警察勤めの探偵が、北川家の生き残りの娘からの依頼により、
北川家関係者からの証言を集めていく、という構成。
生き残りの娘との会話以外では、探偵(榊原)は登場せず、
関係者の証言のみで大半が構成されているという、中々珍しい小説です。
というか、この構成そのものが大きなトリックでもあるんですよね。
個人的にこのトリックが最も秀逸。木の葉は森に隠せ、まさにこの言の通り。
タイトルの意味するもの、物語の最初と最後で大きく異なるのが印象的。
母親の郁江の最初の境遇などはひどいなあと思いますが、
その後の彼女の行動はまさに非道。
妹の養子縁組先の事件が一番衝撃を受けたなあ・・・
亜矢名と由紀名の、あのトリック。実際に上手くいくのかどうか、
そこがちょっと気になりました。
このタイトルで購入を躊躇っている方もおられるかもしれませんが、
ミステリ好きなら、ぜひ購入をお勧めします。