まずはAmazonさんの紹介ページから。
死んだはずの妹が上京し、故郷から大金が盗まれた!?
姉の早苗を訪ねて上京したとも子は、土地勘なく困っていた。
そこへ偶然通りがかった亜由美に案内してもらうことに。
しかし、出会えた早苗はとも子を見て驚いた。
故郷の竜太から、とも子は死んだと知らされていたからだ。
なぜかそんな嘘をついた竜太も上京し、同時に故郷の村役場から2000万円が盗まれ——。
表題作ほか「花嫁たちのメロドラマ」収録。
花嫁シリーズも長寿シリーズですねえ。
亜由美の恋人・谷川は本書でも姿をみせず。今大学は大変だしなあ(時期が違いますね)。
表題作の「迷路をめぐる」って、どういう意味なんでしょうか?
主人公の片桐とも子が、田舎の村から東京という大都会に出てきて、最初に道に
迷ってますが、これも含め、とも子の本作で描かれる人生の過程を指しているのかな?
早苗・とも子姉妹もいいですが、亜由美の同級生である美月も良い!
亜由美の影は少し薄いかもしれません。
「花嫁たちのメロドラマ」はいくつかのショートショートに近い作品群を
1つにまとめたかのようなお話。最近の花嫁シリーズの中では、かなり楽しめました。
拳銃をぶっ放すシーンがここかしこに登場し、亜由美ほか狙われまくるのですが、
白クマ組や黒クマ組の争いがコメディのようで、危機感がまるで伝わりません(笑
一方で文香と母親の麻美が経験した自然災害や、麻美の病院で出会う「昔なじみ」。
息子と妻を奪われた久保田啓一。記憶を失ってしまった久保田悠と早紀の物語。
悲しい結末を迎えるものが多いのですが、イッキ読みしてしまいました。
ここ最近の同シリーズは、赤川先生の危機意識みたいなものが強く出ていたものが
多かったように思いましたが、本書はそうした感じはなく、純粋に物語として
楽しめました。
本シリーズの締めくくり、つまり最終作は、やはり亜由美が大学を卒業して結婚する
時に起こる事件なんだろうなあ。でも最後に結婚まで至らずに終わりそうなのを
想像できてしまうのが、赤川作品かつ本シリーズの特徴でしょうか(笑
2021年06月23日
2021年06月10日
紅蓮館の殺人
まずはAmazonさんの紹介ページから。
山中に隠棲した文豪に会うため、高校の合宿を抜け出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。
救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。
だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。
これは事故か、殺人か。
葛城は真相を推理しようとするが、住人や他の避難者は脱出を優先するべきだと語り――。
タイムリミットは35時間。
生存と真実、選ぶべきはどっちだ。
講談社タイガ、というレーベルを初めて購入しました。
wikiによると、
「講談社ノベルズの兄弟レーベル」で「全点新作・書き下ろし、全てシリーズ作品」
とあります(今は少し変わったようですが)
ミステリだけでなく、SFやファンタジーも含めた小説を刊行しているようです。
と、説明されてもいまいちよくわからんなあという印象(苦笑)
新人発掘でもなさそうだし(創刊に西尾維新先生と森博嗣先生がいるし)。
講談社文庫、というと、やはり「新本格」ないし「時代小説」というイメージが
私の中ではあるので、それに囚われない作品を刊行する!という感じなんでしょうか。
そんな新レーベルで刊行されたのが、今回ご紹介する「紅蓮館の殺人」。
作者の阿津川辰海先生は、なんと1994年生まれ!若い!
これからが楽しみな作家さんです。
以下、ややネタバレ。
元々本書は、『このミス』などでもランクインしていて、気にはなっていたんですが、
新レーベルということで、中々購入に踏み切れず。
次作「蒼海館の殺人」が刊行されたのを受けて、購入しました。
自然災害に巻き込まれる、という作品では有栖川有栖先生の『月光ゲーム』を
思い出しますが、本書はそれよりもさらに緊迫度が増しています。
山火事が<落日館>に迫る時間が各章ごとに記され、自分たちが生存するためには
どうすれば良いのか?という判断を矢継ぎ早に迫られていきます。
一方で、つばさの死は<ワトソン役>助手の田所信哉にとっては失恋以上の衝撃でしょう。
名探偵・葛城輝義はこれを殺人と疑いますが、<かつての>名探偵・飛鳥井は事故と断定。
飛鳥井は全員で協力してこの災禍から逃れることを提案し、葛城も事故という結論
は認めないとしつつも、この提案へは協力します。
かくして、不思議な仕掛けだらけの館の、秘密の抜け穴探しが始まるわけです。
このつばさの死の謎と、館からの脱出という2つを両輪として、本書は
進んでいくのですが、圧巻はやはり最後の、名探偵の謎解きでしょう。
小出の胡散臭さは初めから読者も解りますが、まさか登場人物ほぼ全てが
胡散臭いという結末は驚きました。これが一番本書では愁眉。
飛鳥井の親友・甘崎の死去と、つばさの死去がともに名探偵の存在にあったという
のは、名探偵とは何か?名探偵の存在とは?を問う、作者の挑戦的な描写でもありますが、
つばさの死去よりも、確かに甘崎の親友の死去は、自身が関与したことから
発生したもので、これを言うと元も子もないですが、実際他のシリーズ名探偵が
登場する作品でも十二分にありうる展開です。
一方で、葛城は飛鳥井が事件を解いていたにも関わらず、それを明らかにするのを
放棄したことを非難しますが、なんというか、この葛城の思考は中二病とまでいきませんが、
状況的に考えても、致し方ない面はあるのでしょう。
というか、飛鳥井は館に居る人物たちで、役に立ちそうな人物全てが「嘘つき」という
のがわかっていたからでは。
この辺りは葛城もあの時点で気づいていたのかちょっとわかりませんが(読み誤りならすいません)
しかし、飛鳥井の場合、このつばさの死が、かつて自分が探偵を辞めるきっかけと
なった<爪>という殺人者による事件であるということに、甘崎の絵を見つけることで
気づくのですが・・・
彼女は事件発生時に、この事実が明らかになっていた場合でも同じ対応をしたんだろうか?
また、この<爪>に、処分を下すのは葛城で、彼はなぜ<爪>を見殺しにしたのでしょうか?
ここもなにげに名探偵の存在、名探偵とは何か?に通じるのではないかと思うのですよね。
犯人をどうするのか、謎を解けば終わりなのか、犯人を説得するのかetc・・・
次作でどうこの沈み込んだ<名探偵>が復活するのか、それとも・・・気になります。
山中に隠棲した文豪に会うため、高校の合宿を抜け出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。
救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。
だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。
これは事故か、殺人か。
葛城は真相を推理しようとするが、住人や他の避難者は脱出を優先するべきだと語り――。
タイムリミットは35時間。
生存と真実、選ぶべきはどっちだ。
講談社タイガ、というレーベルを初めて購入しました。
wikiによると、
「講談社ノベルズの兄弟レーベル」で「全点新作・書き下ろし、全てシリーズ作品」
とあります(今は少し変わったようですが)
ミステリだけでなく、SFやファンタジーも含めた小説を刊行しているようです。
と、説明されてもいまいちよくわからんなあという印象(苦笑)
新人発掘でもなさそうだし(創刊に西尾維新先生と森博嗣先生がいるし)。
講談社文庫、というと、やはり「新本格」ないし「時代小説」というイメージが
私の中ではあるので、それに囚われない作品を刊行する!という感じなんでしょうか。
そんな新レーベルで刊行されたのが、今回ご紹介する「紅蓮館の殺人」。
作者の阿津川辰海先生は、なんと1994年生まれ!若い!
これからが楽しみな作家さんです。
以下、ややネタバレ。
元々本書は、『このミス』などでもランクインしていて、気にはなっていたんですが、
新レーベルということで、中々購入に踏み切れず。
次作「蒼海館の殺人」が刊行されたのを受けて、購入しました。
自然災害に巻き込まれる、という作品では有栖川有栖先生の『月光ゲーム』を
思い出しますが、本書はそれよりもさらに緊迫度が増しています。
山火事が<落日館>に迫る時間が各章ごとに記され、自分たちが生存するためには
どうすれば良いのか?という判断を矢継ぎ早に迫られていきます。
一方で、つばさの死は<ワトソン役>助手の田所信哉にとっては失恋以上の衝撃でしょう。
名探偵・葛城輝義はこれを殺人と疑いますが、<かつての>名探偵・飛鳥井は事故と断定。
飛鳥井は全員で協力してこの災禍から逃れることを提案し、葛城も事故という結論
は認めないとしつつも、この提案へは協力します。
かくして、不思議な仕掛けだらけの館の、秘密の抜け穴探しが始まるわけです。
このつばさの死の謎と、館からの脱出という2つを両輪として、本書は
進んでいくのですが、圧巻はやはり最後の、名探偵の謎解きでしょう。
小出の胡散臭さは初めから読者も解りますが、まさか登場人物ほぼ全てが
胡散臭いという結末は驚きました。これが一番本書では愁眉。
飛鳥井の親友・甘崎の死去と、つばさの死去がともに名探偵の存在にあったという
のは、名探偵とは何か?名探偵の存在とは?を問う、作者の挑戦的な描写でもありますが、
つばさの死去よりも、確かに甘崎の親友の死去は、自身が関与したことから
発生したもので、これを言うと元も子もないですが、実際他のシリーズ名探偵が
登場する作品でも十二分にありうる展開です。
一方で、葛城は飛鳥井が事件を解いていたにも関わらず、それを明らかにするのを
放棄したことを非難しますが、なんというか、この葛城の思考は中二病とまでいきませんが、
状況的に考えても、致し方ない面はあるのでしょう。
というか、飛鳥井は館に居る人物たちで、役に立ちそうな人物全てが「嘘つき」という
のがわかっていたからでは。
この辺りは葛城もあの時点で気づいていたのかちょっとわかりませんが(読み誤りならすいません)
しかし、飛鳥井の場合、このつばさの死が、かつて自分が探偵を辞めるきっかけと
なった<爪>という殺人者による事件であるということに、甘崎の絵を見つけることで
気づくのですが・・・
彼女は事件発生時に、この事実が明らかになっていた場合でも同じ対応をしたんだろうか?
また、この<爪>に、処分を下すのは葛城で、彼はなぜ<爪>を見殺しにしたのでしょうか?
ここもなにげに名探偵の存在、名探偵とは何か?に通じるのではないかと思うのですよね。
犯人をどうするのか、謎を解けば終わりなのか、犯人を説得するのかetc・・・
次作でどうこの沈み込んだ<名探偵>が復活するのか、それとも・・・気になります。