まずはAmazonさんの紹介ページから。
男は、その人形をいとおしむように撫でて、「これを使えばあなたの望みは叶いますよ」と言った…
(表題作「呪いの花園」)。
夜の街でノッペラボーの“呪い人形”を売る男や、
“悪夢”を買わせてくれと頼む黒装束の人物―
この世にはあなたの知らない「幻影稼業」がうごめいている!
心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末を描いた、異色の連作ホラー6篇。
徳間文庫の赤川次郎先生作品の復刊もあるのですが、集英社文庫でも新装版が多く出ている
んですよね。まあオススメで出てきたので気づいたのですが(汗)
(ちなみに本書は新装版ではなく、この後書く本が新装版です。)
ホラーとありますが、いわゆる赤川作品群の中で私はホラーというより、
人間の醜い部分を描いた、まさに説明にある
心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末といったホラーです。
(純粋なホラーというと、『長い夜』とかを思い出します。)
「悪夢、買います」での五十嵐涼子、「幻のタイトロープ」の阿部涼子、
「失われた恋人」の野田、彼彼女たちは、主人公の犠牲となり、亡くなりました。
主人公たちは彼彼女たちの死去を十分に悔やみ、心に留め、その後を生きていくの
でしょうが、やはり胸くそ悪いですね(苦笑)
特に最初の「悪夢、買います」の笠原は浮気だからなあ・・・
彼にはもう少し天罰が落ちても良かったのでは。
「失われた恋人」はバーチャル恋愛の走りです。本書が刊行されたのは1998年、文庫化が
2001年と、windows95の大熱狂から98の登場の頃ですね。
自分もこの頃にダイヤルアップ接続でテレ放題でネットを接続していたのを思い出します。
「呪いの花園」だけは少し趣向が違い、主人公自身が殺人者になる物語。
とはいえ、江田美奈子の最後の「殺人」は心情として理解してしまう一面もありますね。
本作はラストの皆川刑事のセリフが秀逸。悪夢の連鎖が続くことを匂わせて終幕します。
「隅の少女」は、解説でも触れられているように、「隅の老人」のもじり。
しかし、本作で一番怖いのは、草間知子の前に突然現れた老人はいったい誰なのかという点。
一切語られないので、余計に恐怖感が増します。
2021年09月23日
2021年09月18日
カナダ金貨の謎
まずはAmazonさんの紹介ページから。
殺害現場から消えた一枚のメイプルリーフ金貨が臨床犯罪学者・火村英生を真相に導く。
倒叙形式の表題作「カナダ金貨の謎」ほか、火村とアリスの出会いを描いた「あるトリックの蹉跌」、
思考実験【トロッコ問題】を下敷きにした「トロッコの行方」など趣向を凝らした五編を収録。
〈国名シリーズ〉第10弾。
新本格第1世代であり、今も新本格の旗手として走り続けている有栖川有栖先生。
国名シリーズもついに第10弾とは。読者としても感慨深いものがあります。
思えば初めて読んだのは『スウェーデン館の謎』だったと思います。
これ、長編なんですよね。国名では『マレー鉄道』『インド倶楽部』と、現時点では
3作のみで、中々珍しい作品から読み始めたなあと今更ながら思います。
表題作は、有栖川先生も仰るように、国名シリーズ初の「倒叙もの」(半倒叙)に
なっています。
火村シリーズの倒叙は、犯人が追い詰められていく心理描写が良いのですが、
本作の太刀川は、これまで以上に災難、いや自業自得ですが、そんな状態でしたね。
作家アリスがカナダ金貨に意味を見いだそうとするのが、推理作家らしさが出ていて、
とても面白く、一方で、真相は全く別のところにあるというのもさすがです。
いつも火村の推理は詰め将棋のよう、と表現を私はしていますが、「カナダ金貨」でも
火村からではないにせよ、アリスの口から犯人をいかに絞り込んだかが語られます。
流石の推理。1つ1つの事実を明らかにして、それら全てが当てはまるのは誰か。
相変わらず見事だなと思います。
個人的には「トロッコの行方」が白眉。
容疑者は相変わらず少なく、アリバイもほぼみな完璧。
従来であれば、ここから火村がいかにアリバイを崩していくのかが丹念に描かれますが、
本作は違います。唐突にスパッと、犯人を(婉曲的ではありますが)指摘します。
どうして火村は犯人がわかったのかなあ・・・書かれている動機はなるほどと言える
のですが、動機があるから、だけでは当然火村は指摘しないはず。
(解る方いらしたらご教示ください。私が読めてない、読み飛ばしているのかも・汗)
「あるトリックの蹉跌」は火村とアリスの出会いを描いた作品ですが、
願わくば、そのときアリスが書いていた小説も、次作あたりにぜひ収録を。
有栖川有栖先生、そろそろ<ソラ>シリーズ、お願いします!
殺害現場から消えた一枚のメイプルリーフ金貨が臨床犯罪学者・火村英生を真相に導く。
倒叙形式の表題作「カナダ金貨の謎」ほか、火村とアリスの出会いを描いた「あるトリックの蹉跌」、
思考実験【トロッコ問題】を下敷きにした「トロッコの行方」など趣向を凝らした五編を収録。
〈国名シリーズ〉第10弾。
新本格第1世代であり、今も新本格の旗手として走り続けている有栖川有栖先生。
国名シリーズもついに第10弾とは。読者としても感慨深いものがあります。
思えば初めて読んだのは『スウェーデン館の謎』だったと思います。
これ、長編なんですよね。国名では『マレー鉄道』『インド倶楽部』と、現時点では
3作のみで、中々珍しい作品から読み始めたなあと今更ながら思います。
表題作は、有栖川先生も仰るように、国名シリーズ初の「倒叙もの」(半倒叙)に
なっています。
火村シリーズの倒叙は、犯人が追い詰められていく心理描写が良いのですが、
本作の太刀川は、これまで以上に災難、いや自業自得ですが、そんな状態でしたね。
作家アリスがカナダ金貨に意味を見いだそうとするのが、推理作家らしさが出ていて、
とても面白く、一方で、真相は全く別のところにあるというのもさすがです。
いつも火村の推理は詰め将棋のよう、と表現を私はしていますが、「カナダ金貨」でも
火村からではないにせよ、アリスの口から犯人をいかに絞り込んだかが語られます。
流石の推理。1つ1つの事実を明らかにして、それら全てが当てはまるのは誰か。
相変わらず見事だなと思います。
個人的には「トロッコの行方」が白眉。
容疑者は相変わらず少なく、アリバイもほぼみな完璧。
従来であれば、ここから火村がいかにアリバイを崩していくのかが丹念に描かれますが、
本作は違います。唐突にスパッと、犯人を(婉曲的ではありますが)指摘します。
どうして火村は犯人がわかったのかなあ・・・書かれている動機はなるほどと言える
のですが、動機があるから、だけでは当然火村は指摘しないはず。
(解る方いらしたらご教示ください。私が読めてない、読み飛ばしているのかも・汗)
「あるトリックの蹉跌」は火村とアリスの出会いを描いた作品ですが、
願わくば、そのときアリスが書いていた小説も、次作あたりにぜひ収録を。
有栖川有栖先生、そろそろ<ソラ>シリーズ、お願いします!
2021年09月11日
たとえば風が
まずはAmazonさんの紹介ページから。
七十歳の八木原亮子は名家の未亡人。使用人を雇うに当たり、身許など調べない主義。
お手伝いにきた十九歳の山中千津は、丁寧な仕事ぶりから長男の秀、次女の圭子、
嫁の康代、孫の秀一郎からも信頼されるようになった。お金に苦労することも、
将来の心配もない八木原家だったが、千津が来てから一家の歯車が狂い出し、
徐々に彼らの裏の顔が見え始め――。家族の繋がりを問うミステリ。
ネタバレあり。
なんとも表現しがたいミステリ。
山中千津という存在が、これまでの八木原家を壊し、若干ではありますが、
今後の八木原家を立て直したとも言えるのではないでしょうか。
最後まで読むと、この企みや一味がわかり、大金持ちを罠に嵌めて大金をせしめる、
いわば詐欺グループに近いんですが、千津の発言から今まではそうだったけども、
今回は人殺しまでやるという所まで陥り、仲間割れが起きるのです。
しかし、千津が下さずとも、辻間と房子夫妻はハナから悪事に手を染めようとしましたから、
最後に亮子が述べるように、元々が危なっかしい状態だったのでしょう。
康代の自殺だけは結構ショックでした・・・なんとかならなかったのかと。
本書はこのタイトルが秀逸過ぎますね。よくこんなタイトルを思いつくよなあ。
七十歳の八木原亮子は名家の未亡人。使用人を雇うに当たり、身許など調べない主義。
お手伝いにきた十九歳の山中千津は、丁寧な仕事ぶりから長男の秀、次女の圭子、
嫁の康代、孫の秀一郎からも信頼されるようになった。お金に苦労することも、
将来の心配もない八木原家だったが、千津が来てから一家の歯車が狂い出し、
徐々に彼らの裏の顔が見え始め――。家族の繋がりを問うミステリ。
ネタバレあり。
なんとも表現しがたいミステリ。
山中千津という存在が、これまでの八木原家を壊し、若干ではありますが、
今後の八木原家を立て直したとも言えるのではないでしょうか。
最後まで読むと、この企みや一味がわかり、大金持ちを罠に嵌めて大金をせしめる、
いわば詐欺グループに近いんですが、千津の発言から今まではそうだったけども、
今回は人殺しまでやるという所まで陥り、仲間割れが起きるのです。
しかし、千津が下さずとも、辻間と房子夫妻はハナから悪事に手を染めようとしましたから、
最後に亮子が述べるように、元々が危なっかしい状態だったのでしょう。
康代の自殺だけは結構ショックでした・・・なんとかならなかったのかと。
本書はこのタイトルが秀逸過ぎますね。よくこんなタイトルを思いつくよなあ。
2021年09月07日
改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木
まずはAmazonさんの紹介ページから。
さらし首の名所だった「暗闇坂」にそそり立つ樹齢二千年の大楠。
この巨木が次々に人間を呑み込んだのか。近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは。
とうてい信じられない怪事件に名探偵・御手洗潔が敢然と挑む。しかしながら真相に迫る
御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めるものだった。
本格ミステリーの巨匠が精力を注いだ大傑作。
以下、ネタバレあり。
おそらく10年弱ぶりの再読です。
拙ブログには登場するのは初めてですが、かつて「斜め屋敷の犯罪」を
アップした後くらいに読んだ作品です。
そして、その後に『挨拶』『ダンス』『メロディ』と短編集を読了しました。
今回、改訂完全版が発売されたことを機に、改めて読んで見ました。
イッキ読みしました(笑)数日で読了。
それだけ圧巻ということです(改めて主張するまでもありませんが)。
御大はかつて「本格ミステリー」とは何か、という問いに対し、
「まず第一に、『幻想味ある、強烈な魅力を有する謎』を冒頭付近に示すこと」、
「第二のそれは、『論理性』、『思索性』である」と述べ、この2つさえあれば、
『本格ミステリー』たり得ると信じる」と記しています(本書解説より)。
この定義が絶対であるとは言いませんが、本書が完璧にまで、この2つを兼ね備えているのは
疑う余地はありません。
特に『強烈な魅力を有する謎』という点では、『斜め屋敷』『占星術』以上ではないかと
個人的には感じます。
そして本書は、この2つに怪奇性まで加味しているという。
御手洗ですら、解けない謎が登場するという、この「人喰いの木」の恐ろしさ。
また、横浜という都会でありながら、金田一耕助シリーズの旧家・名家で起きたような
事件のようにも感じましたが、これは犯人の動機が大きな要因ですかね。
金田一耕助は防御率の低い探偵なんて言われたこともありますが、
個人的には、なんとなく家の因習や風習、村の風習などに縛られてしまった人たちを、
その縛りから解放する役割を果たしているような一面があるのかなあと感じる事があります。
御手洗は本書で、藤並家の人たちを(松崎レオナ)を救うために、そいて家の因習やDNAといった
ものから解放するために、最後に「みんな集めてさて」と言わず、数年間口を閉ざしたのです。
なんというか、探偵とは何か、名探偵の存在とは?みたいなことまで考えてしまいました(汗)
横浜時代の御手洗&石岡コンビの活躍、まだまだ読みたいですね。
さらし首の名所だった「暗闇坂」にそそり立つ樹齢二千年の大楠。
この巨木が次々に人間を呑み込んだのか。近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは。
とうてい信じられない怪事件に名探偵・御手洗潔が敢然と挑む。しかしながら真相に迫る
御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めるものだった。
本格ミステリーの巨匠が精力を注いだ大傑作。
以下、ネタバレあり。
おそらく10年弱ぶりの再読です。
拙ブログには登場するのは初めてですが、かつて「斜め屋敷の犯罪」を
アップした後くらいに読んだ作品です。
そして、その後に『挨拶』『ダンス』『メロディ』と短編集を読了しました。
今回、改訂完全版が発売されたことを機に、改めて読んで見ました。
イッキ読みしました(笑)数日で読了。
それだけ圧巻ということです(改めて主張するまでもありませんが)。
御大はかつて「本格ミステリー」とは何か、という問いに対し、
「まず第一に、『幻想味ある、強烈な魅力を有する謎』を冒頭付近に示すこと」、
「第二のそれは、『論理性』、『思索性』である」と述べ、この2つさえあれば、
『本格ミステリー』たり得ると信じる」と記しています(本書解説より)。
この定義が絶対であるとは言いませんが、本書が完璧にまで、この2つを兼ね備えているのは
疑う余地はありません。
特に『強烈な魅力を有する謎』という点では、『斜め屋敷』『占星術』以上ではないかと
個人的には感じます。
そして本書は、この2つに怪奇性まで加味しているという。
御手洗ですら、解けない謎が登場するという、この「人喰いの木」の恐ろしさ。
また、横浜という都会でありながら、金田一耕助シリーズの旧家・名家で起きたような
事件のようにも感じましたが、これは犯人の動機が大きな要因ですかね。
金田一耕助は防御率の低い探偵なんて言われたこともありますが、
個人的には、なんとなく家の因習や風習、村の風習などに縛られてしまった人たちを、
その縛りから解放する役割を果たしているような一面があるのかなあと感じる事があります。
御手洗は本書で、藤並家の人たちを(松崎レオナ)を救うために、そいて家の因習やDNAといった
ものから解放するために、最後に「みんな集めてさて」と言わず、数年間口を閉ざしたのです。
なんというか、探偵とは何か、名探偵の存在とは?みたいなことまで考えてしまいました(汗)
横浜時代の御手洗&石岡コンビの活躍、まだまだ読みたいですね。
2021年09月06日
本と鍵の季節
まずはAmazonさんの紹介ページから。
堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、
同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、
快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、
図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、
その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが…。図書室に持ち込まれる謎に、
男子高校生ふたりが挑む全六編。
「古典部」や「小市民」シリーズを比較として挙げておられる方も多いようです。
青春ミステリーという括りになるんでしょうが、個人的には結構ダークな面もあるなと
いうのが読了後の感想。
青春ミステリに近いのは「ない本」かなあと個人的に。
死というのが、中高生にも極めて近い存在となっているのが現在であり、
もちろんイジメによる自殺などもっての外で、断罪されるべきですが、
なんとなく生きていることに不安を持ち、自殺してしまう若者も多い。
この作品では自殺そのものがメインではないですが、長谷川先輩の
行動はなんとなく理解できます。
それと、探偵役である堀川と松倉の考え(というか、捉え方)がまるで違うというのも、
本作ではしっかり浮かび上がっていて、その後のある意味本書メインの
「昔話を聞かせておくれよ」に繋がるんですよね。
最もミステリ色が濃いのはどれか?これは中々難しく、
どんでん返し的な面白さでいえば、「913」。
ただこの作品も暗さがかなり強いんですよね。「昔話を~」にも繋がる話でもあります。
探偵役が完全に第三者的なものでいえば、「ロックオンロッカー」
美容院の店長の、何気ないある一言から、推理を組み立てていく2人はまさに名探偵。
暗さもなく、最後の描写も面白いです。
解説とは私では捉え方が違うのでしょうが、最終話「友よ知るなかれ」は
ラストシーンで果たして松倉は図書室に来たのかどうか、実は来なかったのではないか、
という余韻を残したように、私には感じました。
別に松倉が悪いわけではないのです。堀川の説得も素晴らしい。
しかし、それでも彼は来られなかった、堀川が選んでほしかった選択肢を
選ばなかったとも読めて、ダークな印象なんですよね。
ところで、解説で続編に触れているのですが、確かに「このミス2021」の「私の隠し球」
で米澤先生が触れています。
ということは、松倉は図書室に現れたんですねえ。
一方で、なんとなく本作はこれで終幕でも意外とよかったなと思う自分もいます。
堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、
同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、
快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、
図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、
その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが…。図書室に持ち込まれる謎に、
男子高校生ふたりが挑む全六編。
「古典部」や「小市民」シリーズを比較として挙げておられる方も多いようです。
青春ミステリーという括りになるんでしょうが、個人的には結構ダークな面もあるなと
いうのが読了後の感想。
青春ミステリに近いのは「ない本」かなあと個人的に。
死というのが、中高生にも極めて近い存在となっているのが現在であり、
もちろんイジメによる自殺などもっての外で、断罪されるべきですが、
なんとなく生きていることに不安を持ち、自殺してしまう若者も多い。
この作品では自殺そのものがメインではないですが、長谷川先輩の
行動はなんとなく理解できます。
それと、探偵役である堀川と松倉の考え(というか、捉え方)がまるで違うというのも、
本作ではしっかり浮かび上がっていて、その後のある意味本書メインの
「昔話を聞かせておくれよ」に繋がるんですよね。
最もミステリ色が濃いのはどれか?これは中々難しく、
どんでん返し的な面白さでいえば、「913」。
ただこの作品も暗さがかなり強いんですよね。「昔話を~」にも繋がる話でもあります。
探偵役が完全に第三者的なものでいえば、「ロックオンロッカー」
美容院の店長の、何気ないある一言から、推理を組み立てていく2人はまさに名探偵。
暗さもなく、最後の描写も面白いです。
解説とは私では捉え方が違うのでしょうが、最終話「友よ知るなかれ」は
ラストシーンで果たして松倉は図書室に来たのかどうか、実は来なかったのではないか、
という余韻を残したように、私には感じました。
別に松倉が悪いわけではないのです。堀川の説得も素晴らしい。
しかし、それでも彼は来られなかった、堀川が選んでほしかった選択肢を
選ばなかったとも読めて、ダークな印象なんですよね。
ところで、解説で続編に触れているのですが、確かに「このミス2021」の「私の隠し球」
で米澤先生が触れています。
ということは、松倉は図書室に現れたんですねえ。
一方で、なんとなく本作はこれで終幕でも意外とよかったなと思う自分もいます。