2021年11月22日

沈黙のパレード

まずはAmazonさんの紹介ページから。

2022年公開 映画化決定!
――福山雅治主演 湯川・内海・草薙がスクリーンに帰ってくる

2018年「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第1位

待望の文庫化!
シリーズ累計1,450万部突破!


静岡のゴミ屋敷の焼け跡から、3年前に東京で失踪した若い女性の遺体が見つかった。
逮捕されたのは、23年前の少女殺害事件で草薙が逮捕し、無罪となった男。
だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。町のパレード当日、その男が殺された――

容疑者は女性を愛した普通の人々。彼らの“沈黙”に、天才物理学者・湯川が挑む!

ガリレオvs.善良な市民たち

“容疑者X”はひとりじゃない。

以下、ややネタバレあり。





なんだか相当久しぶりにガリレオシリーズを読みました。

草薙が係長、警部にまで昇進していてビックリ。もうそんな年齢なのか、と。
ガリレオこと湯川も、助教授→准教授→教授とは。
教授はスポンサー探しだ、という皮肉は、現実を見事に現しているセリフですね。


これも映画化するのですか・・・
年齢がそれなりいったガリレオならば、佐野史郎さんにしてほしいなあ。

本書を読んでいて、やや判然としないのは、蓮沼寛一にかけられた容疑。
23年前の事件と3年前の事件、どちらも彼の犯行なのか?

前者はそれを匂わせる発言を聞いたのは増村。しかし決定的証拠はない。
後者も湯川の推理により、状況証拠として極めてクロに近そうであるものの、
こちらも決定的とはいえない。

いずれの事件もかなり「疑わしきは罰せず」を貫徹していると言えば
それまでですが、しかし、どちらの事件も計画性があったとはあまり思えず
(特に後者)
警察が有力な物的証拠を見つけられなかったのかと不思議に思ってしまいました。

戸島の思いついたトリックや過程はかなり見事で、しかもフェイクまで用意する
という。
それを解き明かす湯川は流石の一言です。

しかし、その後のさらに真相を突いた湯川の推理には少し疑問があります。
まず、なぜ蓮沼が血の付いた制服を処分しなかったのか。
23年前の成功例があるとはいえ、それなりの物的証拠。
彼はまた23年前のように、損害賠償を請求しようとして、自分を起訴まで持ち込める
証拠を自ら取って置いたのか。どうも釈然としないんですよね。

湯川の推理はバレッタに血液が付いていなかったというところから、
さらに違う真相を解き明かそうとするのですが、ここは良いのです。
しかし、その前段、戸島の計画の裏で行っていた人物たちにどうして
疑いを向けることが出来たのか?
(読み込みが足りないのか、すいません)

しかし、久しぶりのシリーズでイッキ読みしてしまいました。
物語に惹き込む力量はさすがです。


沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)

沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/09/01
  • メディア: 文庫




posted by コースケ at 20:18| Comment(7) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月17日

探偵は教室にいない

まずはAmazonさんの紹介ページから。

わたし、海砂真史(うみすなまふみ)には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。
幼稚園の頃から妙に大人びていて頭の切れる子供だった彼とは、別々の小学校にはいって以来、
長いこと会っていなかった。変わった子だと思っていたけど、中学生になってからは、
どういう理由からか学校にもあまり行っていないらしい。
しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼――鳥飼歩は、
九年ぶりに再会を果たす。日々のなかで出会うささやかな謎を通して、
少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。第二十八回鮎川哲也賞受賞作。


東京創元社さんが得意とする「日常の謎」&「青春小説」。


あとがき、にもあるように、今回はいつも一緒に遊んでいる、男女四人
それぞれの物語。ウミ、栗山英奈、田口総士、岩瀬京介。そしてそれぞれの謎を解く、
探偵役かつウミの幼馴染みである鳥飼歩。

日常の謎だけでなく、この鳥飼歩は安楽椅子探偵だよなあと読んでいて思いました。
ウミからの話やLINEで、おおよその推理を構築する。むろん、自分からまるで動かない
わけではありませんが、別に推理のために動いていないので、安楽椅子探偵だなと。

特に面白いのは、最終話のウミ以外の三人への評価。
京介への「奸計をめぐらせて何をするかわかったものではない」に思わず笑ってしまいました。

あと、仲良し四人という関係性の中で、その第1話にラブレターの話を持ってくるところ
なんて良いですね。ウミに誰がラブレターを出したのか・・・こんな謎を最初とは。
しかも、これで関係が壊れる訳ではない、いいラストなのもまた良い。

すでに三作目まで刊行決定しているようなので、歩の不登校の理由、
ウミとの関係、この四人の関係などなど、次作以降が楽しみです。



探偵は教室にいない 真史と歩シリーズ (創元推理文庫)

探偵は教室にいない 真史と歩シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 川澄 浩平
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/21
  • メディア: Kindle版




posted by コースケ at 21:24| Comment(5) | 川澄浩平 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月14日

蒼海館の殺人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。

政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。
名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、
激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。

刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも――夜は明ける。
新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。

以下、ネタバレ注意。




最初に極めてどうでもよいことから。
前作『紅蓮館』が火、今作『蒼海館』が水。想像は出来ましたが、
B'zさんの『FIREBALL』からの『Calling』のPVを思い出しました(笑)

葛城輝義が不登校になったのは、前作で探偵とは何か?を突きつけられてしまったため。
それをどうにかしたいため、「ワトソン役」たる田所は、友人の三谷とともに、
葛城家の本宅・蒼海館を訪れることに。

この葛城家、変わってますよね。それぞれの関係性は最後の方で、輝義から
語られたりしますけど、そもそも息子が凄惨なやり口で死んだ(殺された)のに、
父である健治朗、母である璃々江の動揺しなさっぷりはすごい。
健治朗は政治家かつ置かれている状況とはいえ、この両親はすごい。
そして葛城一族の団結さもまたすごいんですよね、即座にそうした行動に移れるという。

葛城の謎解きの際には、父親に対してはすこまで深く説明されていないし、
(というか母親も。姉はあるエピソードがありますけど)
家族関係という点では、他の多くの名探偵同様、よく分からない点が多いですね。

本作のテーマは前作が山火事による火災で物理的に館から脱出不可能となる極限状態を、
殺人事件の解決も含めて、それを解決するか、でした。
本作は、超大型台風接近に伴う水害、浸水でどう助かるかという極限状態と、
殺人事件の解決という、まあ火と水の違いですが、その解決方法が大きく違うのが特徴。

これは葛城が名探偵はヒーローであるということを本書内で悟り、その信念に基づいて
行動し、全員を助けるという結果に繋がります。
このヒーローって箇所は何度も登場するのですが、これがかなり読んでいてイタい・・・

しかし、本作最大のテーマは、やはり「顔の無い死体」だと思いました。
横溝正史先生の三大トリックの1つと言わしめ、紀元前からあると江戸川乱歩先生が
指摘する程、超有名なトリック。

本作で登場した時、ミステリ好きの方ならば、まずこの死体が葛城正ではなく、
おそらくは黒田ではないかと思うのではないかと。
で、この仮説が思い浮かぶと、真犯人までたどり着いてしまうんですよね。

真犯人の狡猾さは、田所への心理的トリックなど、非常にずる賢く、極めて頭が良いのが
わかるのですが、
一方で、動機という面でみると、今この時行うことなのか??という疑問だらけ。

前作はある意味泥棒なのでわかりやすいのですが、本作はそうではなく、
正当なる遺産にも当たるわけで。正直に家族に話せばなあと勝手に思いました。

むろん黒田の立場を考えると、健治朗が相当額を分け与えそうな気もしますが、
(だからこそ黒田を仲間に引き入れたのでしょうが)
それを引いても、ちょっと先走りすぎた感が。

真犯人と黒田のはこう上手くいくかどうか、結構隙が多そうです。


蒼海館の殺人 (講談社タイガ)

蒼海館の殺人 (講談社タイガ)

  • 作者: 阿津川 辰海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/02/16
  • メディア: 文庫




posted by コースケ at 17:05| Comment(6) | 阿津川辰海 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月07日

ドッペルゲンガーの銃

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名手・倉知淳がフェアプレイ精神で贈る奇妙奇天烈な三つの殺人事件。
ユーモアあふれる本格ミステリ中篇集。

女子高生ミステリ作家(の卵)灯里は、小説のネタを探すため、警視監である父と、
キャリア刑事である兄の威光を使って事件現場に潜入する。
彼女が遭遇した奇妙奇天烈な三つの事件とは――?

・密閉空間に忽然と出現した他殺死体について「文豪の蔵」
・二つの地点で同時に事件を起こす分身した殺人者について「ドッペルゲンガーの銃」
・痕跡を一切残さずに空中飛翔した犯人について「翼の生えた殺意」

あなたにはこの謎が解けますか?

以下、ややネタバレ。




倉知淳先生の文春文庫第2弾。
なんとなくシリーズ化しそうな雰囲気はありますが、どうなんでしょう。
今年の「隠し球」とかで語られるかなあ。

全3作品収録の短編集ですが、どれも一見不可能と思われる犯罪を
テーマとして取り上げられています。

「文豪の蔵」の、マスター錠ってのは、実際にあるんでしょうかね・・・
やや苦しいと思いました。

「ドッペルゲンガーの銃」は、同日同時刻に同じ銃が使われたという
不可能犯罪を解き明かします。線条痕の一致から同じ銃が使われたことは間違いない。
さてどういうことなのか?というお話。
この作品もコンビニでの弾痕は結構強引ですね。というか捜査一課や科捜研で
誰も気付かなかったのか。

最後の「翼の生えた殺意」は、雪の密室が題材です。もう典型かつステレオタイプな
密室なだけに、アイデア勝負なのですが、シンプルに面白かったですね。
極めて単純なトリックなんですが、三兄弟それぞれの証言に惑わされてしまうという
上手い構成になっています。

ただひとつ、車椅子に何ら異常は無かったのかというのが気になりました(笑)

ところで、本作のもう一つの特徴は、主人公の水折灯里の兄・大介に憑依する「御先祖様」
が謎を解き明かす(ヒントをくれる)ということ。
奇妙なタコ踊りというのが非常に気になるので、映像化してほしいところです(笑)
しかし、この御先祖、水折家の繁栄のために出てくると言っていますが、
確かにこの大介では怪しいなあ(笑)
まあ、一家揃ってエリートなので、問題なさそうですが、灯里はむしろ本格ミステリ
路線ではなく、怪奇ミステリ路線でいくというのが良いのではと思いました。

次作が出るとしたら、この御先祖様の名前などの調査を灯里にしてほしいですねえ。
曾祖父の高祖父というところは解っているし、同心だったらしいので。
ファミリーミステリーを解き明かしてもらいたい。


ドッペルゲンガーの銃 (文春文庫 く 40-2)

ドッペルゲンガーの銃 (文春文庫 く 40-2)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: 文庫







posted by コースケ at 18:58| Comment(6) | 倉知淳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月03日

大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-

まずはAmazonさんの紹介ページから。

時代をゆさぶる、大逆転が再びはじまる。「異議あり!」でおなじみの法廷
バトルゲーム『逆転裁判』シリーズよりもはるか昔― 19世紀末・明治時代の日本と倫敦(ロンドン) を舞台に、成歩堂龍一の先祖・成歩堂龍ノ介が活躍する大逆転劇が、再びはじまる。

前回の投稿でも書きましたが、読書<ゲームとなってまして、
最近ゲームについてもほとんど書いてませんが、これはミステリアドベンチャーにも
該当するため、書いてみました。

元々は3DSで発売されていた2作品を、据え置き機用に変え、セットで販売したもの。
(3DS版でもセット版は発売されてました。その後iOS等でも販売)

セットということで、この批判は(現在は)当たらないのですが、
元々は「冒険」が発売されてから、おおよそ2年後に「覺悟」発売と、長すぎましたね。
というのも、本作は「冒険」と「覺悟」合わせての物語なので、
「冒険」だけだと、匂わせと謎が残るばかりという、あまりに消化不良なのです。

特に、「冒険」第1話はその極みのようなもので、最終話で出てくるかと思いきや・・・
なので、元々一本として販売すべきものだったのでしょう。

しかし、「覺悟」でほぼ全ての伏線が回収され、第4話・最終話は、逆転裁判シリーズでも
屈指の出来だと思います。
レイトン教授vsから採用された?か忘れましたが証人複数人制や陪審員制度は、
本作でも十分に活きていて、物語に新たな楽しみを吹き込んでいるなあと、改めて感じました。

本作は、19世紀末の大日本帝国と、大英帝国が舞台となります。
なんといっても、シャーロック・ホームズが登場するというのが本作最大の特徴でしょう。

メイン主人公が成歩堂龍ノ介なので、どちらかというと本作で描かれるホームズは
三枚目キャラに近いのです。「冒険」でもそこまでの名推理は見せていませんが、
「覺悟」での彼の活躍と名推理は素晴らしい。さすが名探偵。
龍之介へのアドバイスも的確ですし、最後の最後で美味しいところを持っていく、
「覺悟」ラストは私は大好きです。
ホームズの相棒にはかなり驚きましたが。

さて、「冒険」「覺悟」ともに、ホームズが登場するので、聖典由来の文言・事象・事件が
そこかしこに散りばめられています。
ホームズ好きにはたまらない作品で、どこまで見つけられるかも楽しみ方としてアリです。
ニヤニヤしっぱなしでした。

個人的には「ねじれた男と最後の挨拶」が、タイトルそのまんまで事件を解く謎を
与えてもらいました(笑)

全編を通して、「バスカヴィル家の犬」が発表できない物語として語られているのですが、
これはまあ、プレイして頂くと、その謎はわかります。

クリアしてみて思ったのは、ホームズが登場するならば、
当然のごとく、「犯罪界のナポレオン」が登場する第3弾をぜひ出してほしい。
比重がホームズ譚に偏ってしまうかもしれませんが、どうかカプコンさん、お願いします。


大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟- -Switch

大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟- -Switch

  • 出版社/メーカー: カプコン
  • 発売日: 2021/07/29
  • メディア: Video Game



大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-

大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-

  • 出版社/メーカー: カプコン
  • 発売日: 2021/07/29
  • メディア: Video Game







posted by コースケ at 19:37| Comment(6) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする