2022年01月29日

御手洗潔のダンス

まずはAmazonさんの紹介ページから。

人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、まさに空飛ぶポーズで! 画家に何が起きたのか? 名探偵・御手洗潔が奇想の中で躍動する快作ぞろいの短編集。

またまた間隔が空いてしまいました。


『挨拶』に続く第2弾。
こちらも良作揃いです。

「山高帽のイカロス」は、犯人にとっても予想外な事が起き、
まさに被害者が「浮遊した」「飛行した」とした思えない状況に。

より面白いのは「舞踏病」。
自宅の2階の下宿人が、どうやら「狐つき」らしい・・・
そんな奇妙な謎を持ってこられて、うごかないはずがない!

本作では、御手洗の医療に関する考えなども伺う事ができ、
後々の天才御手洗潔(この時点で天才ですが)の片鱗を垣間見ることが出来ます。

トリックの面白さならば「ある騎士の物語」。かつて藤原宰太郎さんの、
『世界の名探偵50人』とその続編を読んだことがあるのですが、
そこにバッチリと、この事件のトリックがネタバレされてました(苦笑
当時はまだ小学生くらいで、御手洗シリーズを読んでいませんでしたので、
余り気にしませんでしたが、改めて読んで見て、ああ、そういえばと思い出しました。

エキセントリックな言動とともに、極めて不可思議、奇妙な事件を解き明かすのが、
やはり御手洗潔だなあと、改めて思いました。
落ち着いた御手洗より、やはり好きですね。




御手洗潔のダンス (講談社文庫)

御手洗潔のダンス (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版








世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 文庫




続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1993/12/01
  • メディア: 文庫
posted by コースケ at 19:00| Comment(5) | 島田荘司 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月18日

金閣寺は燃えているか?-文豪たちの怪しい宴

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学教授の曽根原は、ふと気づくとバー〈スリーバレー〉の前に足が向いている。
女性バーテンダー・ミサキの魅力なのか、文学談義のせいなのかは分からない。
ある晩、ミサキが質問を繰り出したのは、川端康成の『雪国』についてだった。
『雪国』はミステリでなはいか、というミサキの疑問に、途中から入店してきた宮田が
珍妙な回答を話し始めて……。
さらに、田山花袋『蒲団』、梶尾基次郎『檸檬』、三島由紀夫『金閣寺』と
日本文学界の名作の新解釈で贈る、鯨統一郎最新作。



前作よりも楽しめました。
日本文学界の重鎮・曽根原が良い味を出してます。
『邪馬台国はどこですか?』に続く早乙女&宮田シリーズも、
いつの間にか主人公は<スリーバレー>に足が向いてましたが、
曽根原の場合、美人バーテンダーのミサキのことが気になり始めて、
ついつい足が向いてしまうのですかねえ。
必ず出会う宮田のことを4話通して馬鹿にしているという、認識をまるで変えていない
という一貫性も面白いですが。

田山花袋の『蒲団』の解釈は中々斬新だなと思いました。
ネタバレになるので書きませんが、現在の小説界の一大ジャンルの原点、
いや田山花袋をその原点と書いているんですよね。

ただやはり本作愁眉は、第四話『金閣寺』でしょう。
三島由紀夫という人物へも迫りつつ、本書の「金閣寺」とは何を指しているのか?
宮田の解釈に唸らされました。

ところで、最終話に登場したすごい美人というのは、もちろん早乙女静香ですよね?
宮田との関係はどうなったんだろうか。


金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)

金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)

  • 作者: 鯨 統一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/11
  • メディア: 文庫




posted by コースケ at 18:58| Comment(6) | 鯨統一郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月14日

ヨルガオ殺人事件

まずはAmazonさんの紹介ページから。

カササギ殺人事件』から2年。クレタ島でホテルを経営する元編集者のわたしを、
英国から裕福な夫妻が訪ねてくる。彼らが所有するホテルで8年前に起きた
殺人事件の真相をある本で見つけた──そう連絡してきた直後に娘が失踪したというのだ。
その本とは名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』。それは、
かつてわたしが編集したミステリだった……。
巨匠クリスティへの完璧なオマージュ作品×英国のホテルで起きた殺人事件!
『カササギ殺人事件』の続編にして、至高の犯人当てミステリ!

“すぐ目の前にあって──わたしをまっすぐ見つめかえしていたの"
名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』を読んだ女性は、
ある殺人事件の真相についてそう言い残し、姿を消した。
『愚行の代償』の舞台は1953年のイギリスの村、事件は一世を風靡した女優の殺人。
誰もが怪しい事件に挑むアティカス・ピュントが明かす、驚きの真実とは……。
ピースが次々と組み合わさり、意外な真相が浮かびあがる──
そんなミステリの醍醐味を二回も味わえる、ミステリ界のトップランナーによる傑作!

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
と、もう1月も半ばを過ぎてしまいました。
越年し過日読了したのが、この『ヨルガオ殺人事件』
以下、ややネタバレ。




いや、ずいぶんと読了まで時間がかかってしまいました。
決してつまらなかったとか、そういう訳ではなく、なんでしょうか。
1つ言えるのは、海外ミステリは登場人物を何度も見返すのが多くなり(苦笑)
今回の場合、作中作もあるため時間がかかってしまったのかなあ。

『カササギ殺人事件』の続編で、名探偵アティカス・ピュント、再び。
そして作家アラン・コンウェイの元編集者であるスーザン・ライランドも当然ながら
再び登場します。


前作は作中作が断然面白かったのですが、今回はどちらも楽しめました。
それにしても、ピュントの「名探偵、みんな集めてさてといい」の場面は、
本当にエルキュール・ポワロを彷彿とさせますね。
前作は病に冒されて、かなり衰弱していたので、本作のピュントはまるで別人です。
ホームズのように、犯罪に関する本まで書いているとは・・・。
なんというか、ポワロっぽくないので、やや鼻につきますね(笑

ところで話は少し脱線しますが、過日AXNミステリで
「アガサ・クリスティー ポワロ&マープルとともに歩んだ100年」を観ました。
ここにホロヴィッツ氏も登場していて、おお、こういうルックスなのかと。
ちなみにヘイスティングス大尉役のヒュー・フレイザー氏、
ジャップ主任警部役のフィリップ・ジャクソン氏も出ていて、かなり楽しめました。

閑話休題。
本作は事件の、というかスーの事件関与の仕方が中々面白く、
しかも、最終的にその関与のきっかけに全ての謎を明らかにする鍵が
あったというのが実にお見事。
「この本の最初のページを読んで確信した」というセシリーの言葉。
これが本当に全てを物語っていたという、非常に練られた構成だったと感じました。

また、ピュントと同様、スーは本事件の関係者のあらゆるものを暴いていき、
最後に真犯人を名指しし、その犯行を明らかにするところ、つまり「みんな集めて」
の場面もこれまた読み応え十分。その活躍はピュント以上でしょう。

個人的にはその前の<荒地の家>での、マーティン・ウィリアムズへの名推理が
一番好きですね。フクロウの石像を落としたのは藪蛇以外の何物でも無い。

ただ、こちらの事件はセシリーが異常に相性であるとか、占いであるとかを
信じるという(これを看破したスーも見事)性格が災いしたのはわかるのですが、
本人は夫の事を愛していたのでしょうかねえ。というか浮気しているし。
まあ、本当に好きな人とは結婚出来なかった可能性はありますが。

事件を依頼してきたトレハーン夫妻も、最後の謎解きやスーへの手紙など、
自分たちで依頼してきてその態度はないだろう、とやや憤慨しました。
真実が決して依頼人にとって幸せなものかどうかなど、解るはずはないのに。
まあ、手紙では反省していたので許しますが(笑

ピュントの事件は最終作を読んでいるだけに、そもそも登場人物に違和感を感じてしまい、
なんとなく怪しいなというのがあったので、メインよりも少し驚きは劣りましたね。
最初の事件は、索条痕が2つあるというのが極めて大きなヒントで、
あとは真犯人は誰なのかというところ。
2番目の事件は、正直なところあまりその風景、イメージが浮かびませんでした。
(私の想像力不足ですね。)
しかしピュントはこの事件はただ働きですね。

本シリーズ、最後を読む限りではこれで完結のような気がするのですが、
アティカス・ピュント・シリーズだけを執筆して刊行してほしいなあ。
まだまだタイトルだけ登場して、語られていない事件が多いですし。



ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版



ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版







posted by コースケ at 20:14| Comment(9) | 海外ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする