2023年08月26日

マザーコンプレックス

まずはAmazonさんの紹介ページから。

地下鉄の”ある事件”を機に母性が暴走する

蜂須賀恵理子は、悲嘆に暮れている。自慢の息子が痴漢行為を咎められ、
逃げようとして地下鉄に轢かれ、死んだのだ。冤罪だと信じる恵理子は、
亡き息子のSNSにのめり込み、事件の真相を探ろうと奔走する。
夏川美夏は、激怒している。高校生の娘が電車内で痴漢を捕まえたが、
被害には長い間遭っていたというのだ。美しい娘には芸能界で活躍してほしい。
週刊誌記者に身辺を嗅ぎ回られ、美夏は苛立つ。
高奈琴絵は、幸せの絶頂から突き落とされる。不妊治療の末、
ようやく待望の子供を妊娠した矢先、夫が痴漢をして逮捕されたのだ。
琴絵を責める義母に、逆ギレする夫。離婚がちらつくが、一人で子供を育てる自信がなく
琴絵は途方に暮れる。
地下鉄で起きたある事件を発端に、歪み、崩壊していく三つの家族。
そして、新たな悲劇が起こる――
暴走する母性の先に衝撃の結末が待ち受ける、ドメスティック・スリラーの新たなる傑作!


このタイトルと、このリード文から、一体どういう事件が起こるのか、
正直なところ、まるで想像が付きませんでした。

蜂須賀恵理子の暴走がメインに話が進むのかと思ってましたが、そうはならず、
特に第1部と第2部で、物語がずいぶんガラリと変化しますね。

夏川紗季が自殺したかと思われましたが、これが殺人だとわかり、
物語は一気に殺人事件の犯人捜しへ。
高奈琴絵が主人公なんだなとこの辺りから思い始めますが、
この殺人事件の真相はそこまで意外ではなく、
また、蜂須賀恵理子のSNSを使った行動も、最後に自業自得になり・・・

やはりラストの、夏川美夏と「週間茶話」の編集者・槙野泉美との会話が圧巻。
ここで、本当の本書の主人公が美夏だったんだと。
槙野の本当の目的も、実は別の所にあったというのも、流石の一言。

それにしても、高奈篤志は屑だな。


マザー/コンプレックス (小学館文庫)

マザー/コンプレックス (小学館文庫)

  • 作者: 水生大海
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2023/06/06
  • メディア: Kindle版






posted by コースケ at 20:09| Comment(4) | 水生大海 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月21日

霧にたたずむ花嫁

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子大生探偵は、失恋しても事件解決? 狙われた恋敵を救え!
霧の中、家路を辿っていた仲間朋代は不穏な気配を感じて逃げようとする。
もうダメだと思った瞬間、偶然居合わせた女子大生・亜由美の恋人、谷山によって助けられる。
それをきっかけに二人は急接近し、なんと結婚することに。失恋した亜由美は傷を癒そうと旅に出るが、そこでトラブルに巻き込まれ――。表題作のほか「カリスマ花嫁の誇り」収録。


花嫁シリーズ文庫版最新作です。
本書は、というか、赤川先生の作品は上手い具合に大団円になるのが
多いですが、本作はかなり異色だと思います。

まず表題作で、亜由美の恋人である谷川准教授がなんと結婚する。それも亜由美以外と。
亜由美が傷心旅行に行く・・・という始まりです。
確かに、前のシリーズで2人の仲が微妙な感じだったので、それの答えが本作で
描かれたということなんでしょうね。
最後に寄りが戻りそうな感じですが・・
亜由美の台詞「時間が必要ね。私もよ。」、次にどう繋がるのか・・・
しかし、谷山准教授、結構酷いヤツですね。
吊り橋効果的なところはあるにせよ、なぜいきなり結婚にまで・・・謎すぎる。

さて、谷山と亜由美の話はまあ良いのですが、本書はもう1作の「カリスマ花嫁の誇り」
が、これまでの花嫁シリーズ中でも、最大の怪作ではないかと個人的には思います。

亜由美を名探偵と見込んで(?)ひっぱりこんだ大橋あかりは、
自分の夫である刈谷三郎のケータイメールに
「刈谷弘士の誕生日のパーティは、あなたの愛する女性の血で染まるだろう」という
殺人予告とも取れるメールがあったから。
まあ普通は警察に言う案件かと思いますが、そこは赤川作品。

ところがです。
この話。大橋あかりは刈谷弘士の二男である北原と(三郎と別れて)結婚することになり、
三郎の兄の克彦が、結構トンデモないヤツで、まあ彼が一連の犯人だったのですが、
どうみても、計画殺人ではなく、衝動的なもの。
父親の弘士もとんでもないことをしでかしますが、こっちは最後に大団円に。

克彦が犯した犯罪で、女性が亡くなりますが、三郎のメールと
どういう関係があるのか、さっぱり分からず。
しかも、本作では亜由美や殿永もほとんど活躍せず、犯人が自白。
そんなこんなで大橋あかりは北原と結婚宣言。

もう何が何だかわかりませんでした。
1つだけ考えられるのは、大橋あかりが全て仕組んだ、ということ。
でもそんな描写は無いんですけど、結果的には彼女が一番得をしてるんですよね。
謎だらけです。
posted by コースケ at 23:59| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月13日

赤い部屋異聞

まずはAmazonさんの紹介ページから。

作家・法月綸太郎が、偏愛する東西の名作九篇に捧ぐ、オマージュ連作短編集

日常に退屈した者が集い、世に秘められた珍奇な話や猟奇譚を披露する「赤い部屋」。
新会員のT氏は、これまで九十九人の命を奪ったという恐るべき〈殺人遊戯〉について語りはじめる……。江戸川乱歩の名作短篇「赤い部屋」に捧げる表題作ほか、
著者が敬愛する作品へのオマージュだけを集めた、ミステリファンにはたまらない全九篇。

またまた更新が遅く・・・すいません。

本書は法月先生が、様々な媒体に発表した短編を集めた、ノンシリーズもの。
とはいえ、解説にあるとおり、名作のオマージュ揃いになっています。

やはり表題作と「だまし舟」がミステリとホラーの2つの点で秀逸。
前者は後日談がある意味恐ろしいというか、これが真実なのだろうと。
この赤い部屋に集まる人々の欲求は、そこまで来てしまったという。

後者は都筑道夫先生の「阿蘭陀すてれん」への、完璧なオマージュ。
いや何が恐ろしいって、これとにかく何もかもわからずじまいの作品で、
それがさらなる恐怖を引き立てるんですよね。
汐見が『だまし舟』を薦めつつも、また奪い返そうとしたのはなぜなのか。
なぜ先が読めなくなるのか。
遺体の側に落ちていた半分の本は綺麗な状態だった。
自分の理解が及ばないと、本当に恐ろしいのだと感じました。
改めて「阿蘭陀すてれん」を再読したくなりました。

動物好きには「まよい猫」。
これ、ラストがまた上手くて、愛猫が居なくなり、ひどいノイローゼ状態から
こうなったのか、それとも実はラストが真実なのか・・・・

言いしれぬ恐怖が余韻となるのは「続・夢判断」
法月先生は夢オチとラストを書いてますが、これは結構怖い。
俳優の演技力テストというところまで看破した主人公ですが、その先は果たして・・・

新本格と名探偵をある意味テーマにしたのが「迷探偵誕生」
悪魔と契約し、絶対誤りのない名探偵になる。しかし推理が外れた場合は魂を奪われる、
一見悪魔にメリットがあるのかと思う話ですが、
平行世界において無数の自分が誤った推理により、悪魔に多くの魂が奪われていたという
なんとも現代的な仕組みだなと、感心してしまいました(笑
悪魔も今までのやり方じゃあダメだということで、色々と悪魔だけに悪知恵が働くなと。




赤い部屋異聞 (角川文庫)

赤い部屋異聞 (角川文庫)

  • 作者: 法月 綸太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/05/23
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 21:24| Comment(1) | 法月綸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする