書物が駆逐される世界。旅を続ける英国人少年・クリスは、
検閲官に追われるユユと名乗る少女と出会う。彼女と共に追い詰められたクリスの前に、
彼を救うべく少年検閲官・エノが現れる。三人は、少女が追われる原因である宝石の形をした
『ミステリ』の結晶『小道具(ガジェット)』をいち早く回収すべく、
オルゴール職人たちが住む海墟の洋館に向かったが……。
そこで三人を待ち受けていたのは、職人たちを襲う連続不可能殺人だった!
先に到着していたもう一人の少年検閲官・カルテの支配下に置かれた場所で、
三人は犯人を突き止めるべく、トリックの解明に挑む。著者渾身の力作!
少年検閲官シリーズ第2弾。
前作よりさらにボリュームが増し、2人目の少年検閲官も登場します。
以下、ネタバレ。
物理の北山の異名を取る作者の全力作品でした。
中でもヤガミ殺しは圧巻。
横倒しのビルで、いかに殺されたのか。
単にうえから落ちたのではなく、この世界における「書物」を
上手く使った見事なトリックです。
シグレ殺しは雪の密室。
カルテの、そもそも密室ではないという推理も中々面白いのですが、
エノの、オルゴールが燃えているところにおびき寄せる、というのは、
やはりこの世界の「ガジェット」を巧妙に使った罠で、お見事。
とここまで記載すると、要するに本書は「多重解決」ものなんですが、
もう1つ、私が連想したのは泡坂妻夫先生の『乱れからくり』。
誰が犯人なのか、というのと、本書の<クローズド・サークル>を
一気にぶち破る大仕掛けが最後にあるのです。
真犯人は生きているので、その意味では『乱れからくり』は当てはまらない
かもしれませんが、実際のところ、真犯人の仕掛けはすでに終わっているので、
実質はほぼ同じではないかと思います。
ところで、本書は単なる多重解決ではなく、本書世界観での多重解決なので、
カルテの推理がイコール真相、つまり解決と、本世界ではなるわけで、
真の解決を知るのは、クリスとエノの二人という状態。
エノはこの事実をどう考えるのか、
クリスはこの真実を物語にするのか、
いずれにせよ、次作が非常に気になります。
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