2023年11月19日

村でいちばんの首吊りの木

まずはAmazonさんの紹介ページから。

母から息子への痛切な願い。手紙に秘められた真相は!?

手首を切断された女の死体を名古屋の下宿に残して長男が失踪。
事件の第一発見者は、奥飛騨の寒村から長男を訪ねてきた母親だった。
息子の無実を訴える母と、大学受験を控えた次男との間で交わされる手紙が、
やがて驚愕の真実を浮き彫りに……。
著者ベスト級の呼び声高い表題作ほか、
騙りの技巧を凝らした中編三本を収録。極上の本格ミステリ集!
初文庫化を記念して、ミステリ作家・阿津川辰海氏とのロング対談を特別収録!


初文庫化ということで、かなり楽しみにしてました。
というのも辻御大の作品は、特定の作品は結構復刊するのですが、
どうもそれ以外のが見過ごされているんですよね。
実業之日本社さんでは、『夜明け前の殺人』の文芸ミステリ三部作も
出ているので、本当に有り難い。

東京創元社さんでも、初期の傑作であるポテト&スーパーの初期3部作が
また復刊されましたが、その後のシリーズも出して欲しいんですよね。
前の復刊でも3部作買いましたが、また買いました(笑

表題作は、ある意味この表題作が思いっきりミスリードなのが面白い。
本当に最後くらいにしか、この木は出てこないんですよね。

本作は手紙という形で物語が進みますが、確かに、この手紙に嘘が無いのが秀逸。
死体から手首が切られていた理由、飲み込まれていた鍵は何か。
不可思議な謎が一気に収束に向かう、最後の手紙はお見事です。

「島でいちばんの鳴き砂の浜」は、人間ではない、植物や動物が、辻御大の手を借りて
物語を進めていくのが一番面白いです。全編ではないにせよ、こういうミステリは
初めて体験したかもしれません。
それでいて、彼彼女(という表現が妥当か微妙ですが)たちは、真相は語りません。

「あとがき」が3つあるのと、辻先生は御年91歳!すごい!
阿津川辰海先生との対談も必読です。
阿津川さんも話されてますが、手に入らない作品が多いのですよ。
実業之日本社さん、どうかよろしく!


村でいちばんの首吊りの木 (実業之日本社文庫)

村でいちばんの首吊りの木 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 辻 真先
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2023/08/04
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 22:59| Comment(1) | 辻真先 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年11月18日

眠りを殺した少女

まずはAmazonさんの紹介ページから。

昼近くに目が覚めた高校三年生の小西智子は、
ぐっすり眠ってしまったことが自分でも信じられなかった。
もしかして昨夜のことは夢だったのか。
膝を見下ろすと、そこにはあの人から逃げようとしてできたあざ。
恐ろしくなって何もかも忘れてしまおうとした智子に、
大学から帰ってきた姉の聡子が泣きながら言った。

「片倉先生……死んじゃった!」

誰にも言えない秘密が智子を追い詰める――。

赤川作品は、タイトルが上手いというか、謎すぎるものとか、秀逸なものとか、
たくさんあるよなあと思います。
『おやすみ、テディ・ベア』では、タイトルからは想像付かない物語が語られ、
初期の超傑作『マリオネットの罠』、個人的超大好きな『魔女たちのたそがれ』
『過去から来た女』『殺人を呼んだ本』『晴れ、ときどき殺人』・・・
と挙げればきりがないのでこの辺で。

本書は1995年に角川文庫から刊行された作品。
今から(文庫刊行でも)28年前なので、赤川先生は48歳。乗りに乗ってる頃でしょうか。

少し前に紹介した『黒鍵は恋してる』とは、登場人物の年齢はそこまで
変わらないですが、全く真逆の物語。

特に驚いたのが、ラストシーン。
小西智子が選んだ道より、このラストの告白が衝撃でした。
事件は極めて単純なのに、その事件を発端に、波紋のように広がっていく事態も
実にうまく書かれています。
最後まで飽きさせない、良作です。


眠りを殺した少女 (徳間文庫)

眠りを殺した少女 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/09/08
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 23:58| Comment(5) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年11月11日

君に読ませたいミステリがあるんだ

まずはAmazonさんの紹介ページから。

キュートな文芸部長がたくらむ“大仕掛け”を見破れますか?
ユーモアミステリの超快作!

ベストセラー『放課後はミステリーとともに』の鯉ケ窪学園に新ヒロイン登場! 
4月、新入生の僕は「第二文芸部」の部室に迷いこんでしまう。
部長で学園一の美少女(自称)の水崎アンナは、自作のミステリを強引に僕に読ませるのだが――
テンポの良い展開、冴え渡るユーモア、そして想像を超える大トリックに
一気読み必至の傑作ユーモアミステリ!

鯉ケ窪学園シリーズ最新作。
水先案内人のもじりである、水崎アンナなる<第二文芸部>部長が登場し、
「僕」に自分の書いたミステリを読ませるという、作中作の作品です。

鯉ヶ窪も長いですよね。
久しぶりすぎて、今までどんな探偵役が登場したのか、思わず確認しました(笑

大仕掛けとか、最後の大トリックとか、色々と帯文や推薦文でありますが、
それらは抜きで、このユーモア・ミステリを楽しむだけで充分だと思います。

「僕」が各事件で常に動機にこだわっていたのが、一番印象に残りました。
まあそりゃそうだという(苦笑

それにしても、他のキャラクターたちは、もう卒業しているのかなあ。


君に読ませたいミステリがあるんだ (実業之日本社文庫)

君に読ませたいミステリがあるんだ (実業之日本社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2023/08/04
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 19:05| Comment(5) | 東川篤哉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする