歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ精選の11編を収録。
中村雅楽が挑む数々の日常の謎。日常の謎でも老探偵は飄々と謎を解きます。
「團十郎切腹事件」は歌舞伎役者ならではの謎解きですね。
これは中村雅楽シリーズだからこそ書けた傑作だと思います。
「グリーン車の子供」も同様。中村雅楽ではなく、隣り合わせた少女の芝居が秀逸。
この筋立てを考えた宝来屋もお見事。
解説では、本作で雅樂たちが乗車していた新幹線にまつわる話が登場するのですが、
これはかなり面白い。なるほど、食堂車か。今や懐かしい(というか私も知りませんが)
ですねえ。
「目黒の狂女」も面白い。いわゆる「奇妙な味」というタイプで、
雅樂の謎解きも鮮やかです。
唯一、雅樂が竹野の前で涙をみせた「むかしの弟子」。解説の新保博久さんも
書いているように、中村雅楽シリーズ最終作と言われても、誰もが納得する
作品ではないかと思います。
『等々力座殺人事件』と比して、中村雅楽も竹野も齢を重ねています。
竹野はいつの間にか嘱託社員的な立場に、中村雅楽もかなりの高齢に。
作者自身、第1作で雅楽を高齢にしすぎて・・・と書かれているので
(ポワロと同じような感じですね。)
相当な年齢になっているのでしょうが、そこを竹野の立場変化から
時間の経過を上手く現しています。
中村雅楽全集が手に入らない現在、本シリーズ第3作を望みます!
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