まずはAmazonさんの紹介ページから。
“霊感バスガイド”が大活躍の新シリーズ!
弱小〈すずめバス〉のバスガイドとして就職した町田藍。
霊感体質の彼女が〈怪奇ツアー〉を担当したところ、見事幽霊に遭遇して…!?
TVドラマ化もされた人気シリーズ第1弾!(解説・細谷正充)
いやいや、ついにこのシリーズも購入してしまいました。
現在も続くシリーズ、というのもありますが、
私が一番好きな大貫警部シリーズが現在新作の執筆がなさそうなので、
(シリーズ終了なのかもなあ。)
別のをと思い購入。
確かにその筋の人たちからは、確実に収入が得られるし、鉄板の企画ですね。
なんせ確実に幽霊に遭遇するわけですから。
表題作はなんといっても「その漬け物屋に突っ込んで」という、
要するに観光バスをわざと店舗に突っ込ませるという、中々最初にして、
とんでもないことしでかします。
結果的には、生きている少女も、神隠し三人娘も助かって良かったのですが。
筒見社長はそれを盾に、賠償しないだろうな(笑
「怪獣たちの眠る場所」はかなり異色作。ウルトラマンの怪獣墓場かと思わせる面もあり、
また、途中で語られる玉井の苦悩は、ウルトラセブン「ノンマルトの使者」を
思い起こさせ、さらには、解説で書かれているように、現実社会への警鐘とも
捉えられます。
この話は非常に不思議で、幽霊が現れるのは、自身の奥さんへの別れよりも、
自身の教え子へ、その誤りを正して欲しいという願いからなのか。
いやいや深い話です。
しかし最初からクライマックスというか、すでに<霊感バスガイド>が方々に
知られてしまっている町田藍。この後どんなバスツアーが彼女を待っているのか、
非常に楽しみです。
2024年10月20日
2024年10月13日
最上階の殺人
まずはAmazonさんの紹介ページから。
私は本書を通じて、バークリーの
魅力に開眼したのです。――阿津川辰海
名探偵vs.警察捜査、火花散る推理合戦!
謎解きの魅力ほとばしる著者屈指の傑作。
閑静な住宅街、四階建てフラットの最上階で女性の絞殺死体が発見された。
現場の状況から警察は物盗りの犯行と断定し、容疑者を絞り込んでいく。
一方、捜査に同行していた小説家ロジャー・シェリンガムは、
事件をフラットの住人の誰かによる巧妙な計画殺人と推理し、
被害者の姪を秘書に雇うと調査に乗り出す!
心躍る謎解きの先に予測不能の結末が待ち受けるシリーズ屈指の傑作。
エッセイ=真田啓介/解説=阿津川辰海
ややネタバレあり。
解説の阿津川先生のいう、抱腹絶倒の意味は最後まで読むと納得(笑
銀行を信じず、それでいて金を家に貯めていたという噂のある、
高齢女性が殺害された。警察はその手口から、名のある窃盗犯に狙いを定めるが、
その場にたまたま居合わせた(現場へ行くことになった)ロジャー・シェリンガムは、
この事件はそんな単純なものではないのではないかと、推理を巡らせ・・・
という始まりです。
とにかく、シェリンガムは「間違える」名探偵なのでしょう。
以前に読んだ『レイトン・コートの謎』もそうでした。
しかも、本作に限ると、最後の最後で重大な誤りを犯してしまい、
それをなんとか取り繕うためにヤードの総監補まで上手いこと利用してしまうのですから。
取り繕うのも流石です(笑
彼がいきなり、被害者の姪であるステラ・バーネットを自らの秘書にしてから、
彼女との本気なのか冗談なのか、とにかく二人のやりとりが面白すぎます。
洋服店での彼女の変貌ぶりには大注目でしょう。
素晴らしい美女なのに、まったく魅力を感じないとしつこく言うロジャー。
その割に、最後の最後で、僕と結婚しない?なんてセリフを!
ステラから「まさか」と答えられ、「やれやれ、助かった」と答えるロジャー。
ここで終幕。
どこまで本気で冗談なのか、本当にわかりませんでした(笑
わからないのは、ステラが婚約者に仕立てた幼馴染のラルフも同様。
彼はヤバい。今でも十分通じるヤバさです(笑)
あれが演技なのか、そう演技をしてくれと頼まれたのか、それすら
全くヒントすらなく、わからないありさま。
ここも良いんですよ。『レイトン』の競馬の描写のよう。
肝心の事件ですが、シェリンガムの推理は大体においてはかなり正確で、
特に未解決の謎を箇条書きで書き出したり、変装までしてモンマス・マンションに
聞き込みに行ったり、とにかくヤードやモーズビー首席警部の見ている先が
誤っているのだと、ある意味猪突猛進に進みます。
死亡推定時刻のトリックというか、これが大きな間違いであることを
見破る過程は、そのヒントとなる描写も含めて素晴らしいです。
被害者の胃に遺されていたものが、いつ食べられたのか、から
いつ食べられたものなのか、に辿り着く所は、個人的に一番好きかもしれません。
また、死亡推定時刻に目撃された走る男も非常に重要な意味を持っています。
で、上に書いたのは、あくまで最後の方の推理の過程ですが、
シェリンガムはあくまで名のある窃盗犯でなく、マンション内の誰かが犯人であると
疑い、一人ずつ探っていきます。
(この聞き込み等に、上記のステラとの寸劇や変装などが含まれます。)
で、動機は金がとられていることから、そこに目をつけ、上手く絞っていくのです。
ここも見事なのですが、最後の最後がねえ。いや金には違いないけど、
そもそも、シェリンガムのスコットランドヤードやモーズビーとの違いを
出すための、ある種思い込みの招いた結果なのかもしれません(笑
いやはや、単純な事件が実は・・・というのはよくあるかもしれませんが、
本作はそれをさらに超えている、まさに傑作と言って過言ではないですね。
私は本書を通じて、バークリーの
魅力に開眼したのです。――阿津川辰海
名探偵vs.警察捜査、火花散る推理合戦!
謎解きの魅力ほとばしる著者屈指の傑作。
閑静な住宅街、四階建てフラットの最上階で女性の絞殺死体が発見された。
現場の状況から警察は物盗りの犯行と断定し、容疑者を絞り込んでいく。
一方、捜査に同行していた小説家ロジャー・シェリンガムは、
事件をフラットの住人の誰かによる巧妙な計画殺人と推理し、
被害者の姪を秘書に雇うと調査に乗り出す!
心躍る謎解きの先に予測不能の結末が待ち受けるシリーズ屈指の傑作。
エッセイ=真田啓介/解説=阿津川辰海
ややネタバレあり。
解説の阿津川先生のいう、抱腹絶倒の意味は最後まで読むと納得(笑
銀行を信じず、それでいて金を家に貯めていたという噂のある、
高齢女性が殺害された。警察はその手口から、名のある窃盗犯に狙いを定めるが、
その場にたまたま居合わせた(現場へ行くことになった)ロジャー・シェリンガムは、
この事件はそんな単純なものではないのではないかと、推理を巡らせ・・・
という始まりです。
とにかく、シェリンガムは「間違える」名探偵なのでしょう。
以前に読んだ『レイトン・コートの謎』もそうでした。
しかも、本作に限ると、最後の最後で重大な誤りを犯してしまい、
それをなんとか取り繕うためにヤードの総監補まで上手いこと利用してしまうのですから。
取り繕うのも流石です(笑
彼がいきなり、被害者の姪であるステラ・バーネットを自らの秘書にしてから、
彼女との本気なのか冗談なのか、とにかく二人のやりとりが面白すぎます。
洋服店での彼女の変貌ぶりには大注目でしょう。
素晴らしい美女なのに、まったく魅力を感じないとしつこく言うロジャー。
その割に、最後の最後で、僕と結婚しない?なんてセリフを!
ステラから「まさか」と答えられ、「やれやれ、助かった」と答えるロジャー。
ここで終幕。
どこまで本気で冗談なのか、本当にわかりませんでした(笑
わからないのは、ステラが婚約者に仕立てた幼馴染のラルフも同様。
彼はヤバい。今でも十分通じるヤバさです(笑)
あれが演技なのか、そう演技をしてくれと頼まれたのか、それすら
全くヒントすらなく、わからないありさま。
ここも良いんですよ。『レイトン』の競馬の描写のよう。
肝心の事件ですが、シェリンガムの推理は大体においてはかなり正確で、
特に未解決の謎を箇条書きで書き出したり、変装までしてモンマス・マンションに
聞き込みに行ったり、とにかくヤードやモーズビー首席警部の見ている先が
誤っているのだと、ある意味猪突猛進に進みます。
死亡推定時刻のトリックというか、これが大きな間違いであることを
見破る過程は、そのヒントとなる描写も含めて素晴らしいです。
被害者の胃に遺されていたものが、いつ食べられたのか、から
いつ食べられたものなのか、に辿り着く所は、個人的に一番好きかもしれません。
また、死亡推定時刻に目撃された走る男も非常に重要な意味を持っています。
で、上に書いたのは、あくまで最後の方の推理の過程ですが、
シェリンガムはあくまで名のある窃盗犯でなく、マンション内の誰かが犯人であると
疑い、一人ずつ探っていきます。
(この聞き込み等に、上記のステラとの寸劇や変装などが含まれます。)
で、動機は金がとられていることから、そこに目をつけ、上手く絞っていくのです。
ここも見事なのですが、最後の最後がねえ。いや金には違いないけど、
そもそも、シェリンガムのスコットランドヤードやモーズビーとの違いを
出すための、ある種思い込みの招いた結果なのかもしれません(笑
いやはや、単純な事件が実は・・・というのはよくあるかもしれませんが、
本作はそれをさらに超えている、まさに傑作と言って過言ではないですね。
![最上階の殺人 (創元推理文庫) [ アントニイ・バークリー ] 最上階の殺人 (創元推理文庫) [ アントニイ・バークリー ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/3093/9784488123093_1_3.jpg?_ex=128x128)
最上階の殺人 (創元推理文庫) [ アントニイ・バークリー ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,100 円
2024年10月07日
未解決事件は終わらせないといけないから
まずは任天堂さんのホームページから。
(https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000083094)
「この事件、初めて接したときにすごく驚いた覚えがあります。
誰もがそれぞれの理由で嘘をついてました。」
『未解決事件は終わらせないといけないから』は、記憶のパズルのピースを探して組み替え、
未解決事件の謎を解く推理ゲームです。
退職した元警察官・清崎蒼をサポートして、陳述と手がかりを集め、
事件の真相を確かめましょう。
2012年2月5日、公園で遊んでいた少女・犀華が行方不明になったという通報があった。
警察は聞き込みと捜索を繰り返すが、事件は解決せずに未解決事件の書類ファイルに眠る。
清崎蒼警部の退職から12年後、ある日訪ねてきた若い警官。
彼女は清崎が解決できなかった「犀華ちゃん行方不明事件」
を終わらせるよう協力を要請してきた。
清崎はバラバラになった記憶のかけらを思い出して再構成するが、
明らかとなったのは犀華の周りの全員が嘘つきだったということだけ。
今年はゲームで私の好きなミステリアドベンチャーが多く発売されていて、
嬉しい限りです。
まさかまさかのファミコン探偵倶楽部の第4作(BS探偵倶楽部を入れてます)である
「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」
リマスターとはいえ、「かまいたちの夜」30周年記念作品「かまいたちの夜×3」
先にご紹介した「神無迷路」
全てプレイしました(笑)
「ファミコン探偵倶楽部」は従来のオーソドックスなものですが、
ついに空木探偵が!というのがあって驚きました。
さて、本作はニンテンドーダイレクトで紹介されたときから、購入しようと思っていた作品。
いわゆるテキストアドベンチャーではなく、事件関係者の証言から
事件の真相を明らかにするゲーム。
ゲーム自体は全然は違いますが、ある意味証言の嘘や勘違い、矛盾を突くので、「逆転裁判」と
推理は同じような形式かもしれません。
すでにクリア済みなのですが、それは一気にやってしまったかもあります(笑)
色々な証言が出てきますが、この証言は誰がしたものなのか、証言を引き出す鍵は
どこに隠されているのか、そもそも犯人を名乗り自首した人物がいるのに、
なぜ未解決事件なのか等々、とにかく面白い。とにかく証言をよく読むこと、
これに尽きます。
また、製作者さんによって、ちょっとした叙述トリックが仕込まれてます。
(叙述トリックと言えば良いのか、あまり書くとネタバレになるので)
また、是非とも全ての謎を解き明かしてください。
(意味深ですね。)
こういうタイプのゲーム、もっと増えてほしいですね。
(https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000083094)
「この事件、初めて接したときにすごく驚いた覚えがあります。
誰もがそれぞれの理由で嘘をついてました。」
『未解決事件は終わらせないといけないから』は、記憶のパズルのピースを探して組み替え、
未解決事件の謎を解く推理ゲームです。
退職した元警察官・清崎蒼をサポートして、陳述と手がかりを集め、
事件の真相を確かめましょう。
2012年2月5日、公園で遊んでいた少女・犀華が行方不明になったという通報があった。
警察は聞き込みと捜索を繰り返すが、事件は解決せずに未解決事件の書類ファイルに眠る。
清崎蒼警部の退職から12年後、ある日訪ねてきた若い警官。
彼女は清崎が解決できなかった「犀華ちゃん行方不明事件」
を終わらせるよう協力を要請してきた。
清崎はバラバラになった記憶のかけらを思い出して再構成するが、
明らかとなったのは犀華の周りの全員が嘘つきだったということだけ。
今年はゲームで私の好きなミステリアドベンチャーが多く発売されていて、
嬉しい限りです。
まさかまさかのファミコン探偵倶楽部の第4作(BS探偵倶楽部を入れてます)である
「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」
リマスターとはいえ、「かまいたちの夜」30周年記念作品「かまいたちの夜×3」
先にご紹介した「神無迷路」
全てプレイしました(笑)
「ファミコン探偵倶楽部」は従来のオーソドックスなものですが、
ついに空木探偵が!というのがあって驚きました。
さて、本作はニンテンドーダイレクトで紹介されたときから、購入しようと思っていた作品。
いわゆるテキストアドベンチャーではなく、事件関係者の証言から
事件の真相を明らかにするゲーム。
ゲーム自体は全然は違いますが、ある意味証言の嘘や勘違い、矛盾を突くので、「逆転裁判」と
推理は同じような形式かもしれません。
すでにクリア済みなのですが、それは一気にやってしまったかもあります(笑)
色々な証言が出てきますが、この証言は誰がしたものなのか、証言を引き出す鍵は
どこに隠されているのか、そもそも犯人を名乗り自首した人物がいるのに、
なぜ未解決事件なのか等々、とにかく面白い。とにかく証言をよく読むこと、
これに尽きます。
また、製作者さんによって、ちょっとした叙述トリックが仕込まれてます。
(叙述トリックと言えば良いのか、あまり書くとネタバレになるので)
また、是非とも全ての謎を解き明かしてください。
(意味深ですね。)
こういうタイプのゲーム、もっと増えてほしいですね。
2024年10月06日
赤虫村の怪談
まずはAmazonさんの紹介ページから。
H・P・ラヴクラフト×不可能犯罪
独自の妖怪伝説が継承される赤虫村――
人知を超えた方法で殺されてゆく
村の有力者一族
第17回ミステリーズ!新人賞受賞作家の初長編
愛媛県の山間部にある赤虫村(あかむしむら)には、独自の妖怪伝説が存在する。
暴風を呼ぶ「蓮太(はすた)」、火災を招く「九頭火(くとうか)」、
無貌の「無有(ないある)」、そして古くから伝わる“クトル信仰”。
フィールドワークのために訪れた怪談作家・呻木叫子は、村の名家である中須磨家で続く、
妖怪伝説の禍を再現するかのような不可能状況下での連続殺人を調査することに。
第17回ミステリーズ!新人賞受賞者による初長編。
久しぶりの更新。今年もあと3ヶ月ですか・・・。早いなあ。
まず全面に「クトゥルフ神話」を取り込んでいるのが、最大の特徴ですね。
クトル信仰。苦取る、なるほどなあと感心してしまいました。
ただ、これを知らない人は???となるだろうな。
それを知らないとしても、充分楽しめるようにはなってますが。
赤虫村のこのクトル信仰を利用しての、最初の殺人が非常に見事。
不可能犯罪というようにしか見えないのに、それが神話(忌み地・禁忌)で
見えなかっただけで、密室のようで、実はルートは存在したのです。
ただし、赤虫村の怪異に対する事前準備(お守り)が必要ですが、
それも警察の捜査段階でしっかり触れられています。
石蔵での殺人も密室。しかしここにも1つの盲点が。
なぜ全てにガソリンを巻いて、全焼させる必要があったのか。そこから呻木は
推理を組み立てます。
前作『影踏亭の怪談』もそうですが、密室が多い。そしてしっかり捻られている。
各殺人事件に、赤虫村の怪異を見立てるのですが、本作では実際に怪異が起こるので、
見立てどころか、本当に怪異そのものが登場するのが恐ろしいところ。
犯人も、そこまでは読めなかったでしょうね。
呻木叫子は、あくまで怪談作家として、赤虫村の怪異にのみ興味があるようで、
事件のことはまるで興味がない模様。金剛満瑠から事件の事を連絡されても
どこ吹く風という(笑
それでも最後はしっかり名探偵するのですから、流石ですね。
しかし、肝心の怪異の方は、かつて『赤虫村民族誌』を執筆した庵下讓治の弟子・瀬島攝から
詳しい話も、庵下が遺した資料も魅せて貰えず。
本人としては消化不良でしょう。
しかし、瀬島の危惧が、後に最悪の形で呻木の身に降りかかる・・・早くそれが読みたい!
ところで、本作ではコメディリリーフ的な役割をみせる一面もある鰐口ですが、
彼女がこのシリーズの要でもあるなあと読んでいて思いました。
ある意味呻木の猪突猛進を止めることができるのは、彼女だけだろう。
そしてさらりと解決に導く一言をいう。
前に『影踏亭の怪談』の時に書いたのですが、呻木先生は行方不明になっていて、
編集部も探しているという記載がありましたが、あれは作中内作品の恐怖を煽る一文
だったのかなあ。本作で平然と登場していて、ビックリしました。
作中内の時系列もよくわからないので、何とも言えないのですが。
すでに次作も刊行されていて、いやいや、今一番楽しみな作品になりつつあります。
H・P・ラヴクラフト×不可能犯罪
独自の妖怪伝説が継承される赤虫村――
人知を超えた方法で殺されてゆく
村の有力者一族
第17回ミステリーズ!新人賞受賞作家の初長編
愛媛県の山間部にある赤虫村(あかむしむら)には、独自の妖怪伝説が存在する。
暴風を呼ぶ「蓮太(はすた)」、火災を招く「九頭火(くとうか)」、
無貌の「無有(ないある)」、そして古くから伝わる“クトル信仰”。
フィールドワークのために訪れた怪談作家・呻木叫子は、村の名家である中須磨家で続く、
妖怪伝説の禍を再現するかのような不可能状況下での連続殺人を調査することに。
第17回ミステリーズ!新人賞受賞者による初長編。
久しぶりの更新。今年もあと3ヶ月ですか・・・。早いなあ。
まず全面に「クトゥルフ神話」を取り込んでいるのが、最大の特徴ですね。
クトル信仰。苦取る、なるほどなあと感心してしまいました。
ただ、これを知らない人は???となるだろうな。
それを知らないとしても、充分楽しめるようにはなってますが。
赤虫村のこのクトル信仰を利用しての、最初の殺人が非常に見事。
不可能犯罪というようにしか見えないのに、それが神話(忌み地・禁忌)で
見えなかっただけで、密室のようで、実はルートは存在したのです。
ただし、赤虫村の怪異に対する事前準備(お守り)が必要ですが、
それも警察の捜査段階でしっかり触れられています。
石蔵での殺人も密室。しかしここにも1つの盲点が。
なぜ全てにガソリンを巻いて、全焼させる必要があったのか。そこから呻木は
推理を組み立てます。
前作『影踏亭の怪談』もそうですが、密室が多い。そしてしっかり捻られている。
各殺人事件に、赤虫村の怪異を見立てるのですが、本作では実際に怪異が起こるので、
見立てどころか、本当に怪異そのものが登場するのが恐ろしいところ。
犯人も、そこまでは読めなかったでしょうね。
呻木叫子は、あくまで怪談作家として、赤虫村の怪異にのみ興味があるようで、
事件のことはまるで興味がない模様。金剛満瑠から事件の事を連絡されても
どこ吹く風という(笑
それでも最後はしっかり名探偵するのですから、流石ですね。
しかし、肝心の怪異の方は、かつて『赤虫村民族誌』を執筆した庵下讓治の弟子・瀬島攝から
詳しい話も、庵下が遺した資料も魅せて貰えず。
本人としては消化不良でしょう。
しかし、瀬島の危惧が、後に最悪の形で呻木の身に降りかかる・・・早くそれが読みたい!
ところで、本作ではコメディリリーフ的な役割をみせる一面もある鰐口ですが、
彼女がこのシリーズの要でもあるなあと読んでいて思いました。
ある意味呻木の猪突猛進を止めることができるのは、彼女だけだろう。
そしてさらりと解決に導く一言をいう。
前に『影踏亭の怪談』の時に書いたのですが、呻木先生は行方不明になっていて、
編集部も探しているという記載がありましたが、あれは作中内作品の恐怖を煽る一文
だったのかなあ。本作で平然と登場していて、ビックリしました。
作中内の時系列もよくわからないので、何とも言えないのですが。
すでに次作も刊行されていて、いやいや、今一番楽しみな作品になりつつあります。