2025年01月21日

コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎

まずはAmazonさんの紹介ページから。

昨日行った居酒屋が消えた? 引き出しのお金が四万七千円も増えていた? だれも死んでいないのに姉が四方八方に
喪中はがきを送りつけていた? ミステリ談義の集まりにひとりゲストをお呼びして、
毎回カフェ〈アンブル〉でゆるゆると行う推理合戦。それなりにみんながんばるのだけど、
いつも謎を解き明かすのは店長の茶畑さんなのだった。──もっと気軽に謎解きを楽しみたいと思っていた皆さんへ贈る、
ほがらかなパズル・ストーリー7編。期待の新鋭がデビューを果たした安楽椅子探偵シリーズ第1弾。


更新が止まってました。
コロナに罹患してなんやらかんやらありまして。

気を張らずに、ゆっくり読める、まさにうってつけのミステリを読了。
コージーミステリ好きがあつまり、ミステリ談義をしている最中、どこからともなく
謎が持ち込まれ、メンバーのあれやこれやの推理の後に、真打たる店長が名推理を披露するという展開。

アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』をどこまでオマージュした本作は、
コージーミステリあるいは安楽椅子探偵ものとして定番になるかもしれません。

個人的おススメは「あるいは謎の喪中はがき」
これは純粋にわかりませんでした(笑)
先手を打ったということなんですねえ。
誰しもそういう病というかありますから、このお姉さんの感情は理解できる。
しかし喪中はがきとは・・・徹底してますね。
筆者もあとがきで書かれてますが、年賀はがきがいつまで続くのか、どうなることか。

「見知らぬ十万円」はやや強引かなという印象。
犯人はすぐわかるでしょう。まずその場で確認しろという。

「郷土史症候群」はタイトルは非常に面白いのですが、
謎はなんとなく予想がつきます。ただし動機まではわからず。

すでに第2弾のお話もあるようで、いやいや楽しみです。

コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 (創元推理文庫) - 笛吹 太郎
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posted by コースケ at 20:06| Comment(0) | 笛吹太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月04日

檜垣澤家の炎上

まずはAmazonさんの紹介ページから。

『細雪』×『華麗なる一族』×ミステリ!
「女であっても、私はすべてを手に入れたい」
富豪一家に拾われた娘のたったひとりの闘いが始まる。


横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。
互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。
陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは──。
小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。【解説=千街晶之】

というわけで、以下若干のネタバレあり。






『このミス』でい第3位に輝いた、新潮文庫書き下ろし作品。
書き下ろしミステリ、と書くべきなのでしょうが、中々難しい。

当然ながら『本格ミステリ・ベスト10』にはランクインしていません。
となると、『このミス』は何を評価して、このランキングなのか。

『このミス』のMY BEST 6でも結構取り上げられており、大河小説と評している方や、
重厚な物語の中に様々な伏線を張り巡らせた、まぎれもなくミステリとの評。

檜垣澤という女系一族の中の、妾腹の子であった高木かな子が、引き取られ、
どう生きていくのか、そして成長するにつれ、いかに自分の立場に見合ったものを手に入れるか、
子どもとは思えない行動と洞察力で、明治から大正を生き抜く物語。

女系とあえて書きましたが、これもミスリードですよね。
「ハル様」なる祟りをもたらす存在、
何もかも見通す、女刀自・スヱ。

自分をおもちゃのようにしていた、珠代や雪江、彼女たちが嫁いでしまうシーンは必読ですね。
かな子の人間味というか、なんだかんだ言っても、ずっと暮らしていたことへの思いがあったのでしょう。
これはラストの、まさに「炎上」の時にも見られます。それも感情が抑えられない程に。

花も自分のことをよく考えてくれていた。花なりに。
そんな感謝をするかな子の成長まで読めるのが良いです。

一番謎のような存在で描かれるのは西原でしょう。
かな子は油断ならない相手と警戒しつつ、最後の面会で感じたものは男女のそれなのか、いや上手い描き方です。

明治から大正末年までを描く本作。
かな子が唯一予想だにしなかった人が、放火&殺人事件の犯人。
でもこれは、スヱも噛んでいるわけで、その先、そのままの状態がいいとは誰も思っていなかったはずなので、
スヱは最後どうするつもりだったのだろうか。

大正末まで描かれれると記しましたが、最後に起こるのは関東大震災です。
この災害で、檜垣澤家はほとんど亡くなってしまい、
かな子は改めて、自分が求めていた立場に立つのですが、一方で、とてつもない後悔のようなものにも襲われます。
でも彼女にはまだ頼れる人が最後に現れましたし、持ち前の性格で立て直すでしょう。

解説の千街さんが、京極夏彦先生の『絡新婦の理』の一節を挙げているのは流石。
そう、本作確かに共通点が非常に多い。しかし、『絡新婦』と違うのは、とあとはぜひ読んで楽しんでください。

檜垣澤家の炎上(新潮文庫) - 永嶋恵美
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posted by コースケ at 17:38| Comment(0) | 永嶋恵美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月01日

名探偵は誰だ

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「ホテルの客で唯一、自分を殺そうとしていないのは?」「一人暮らしの老婦人を始末しようとしているのは?」
「伝説の殺し屋のターゲットは?」「雪の山荘が爆破される緊急事態に生き残ったのは?」
「画廊に現れた《怪盗万華鏡》の正体は?」……。新本格ミステリの名手が贈る、
トリックとロジックとサプライズに満ちあふれたフーダニット7編。(解説・若林踏)

本年もどうぞよろしくお願いします。
犯人当てではない、ミステリといえば、パット・マガーの『被害者を探せ!』『探偵を探せ!』『七人のおば』
挙げればきりがありませんが、やはりマガーの作品群は色あせません。

芦辺さんの本作も当然ながらマガー作品を踏まえた上で、様々な切り口から我々を楽しませてくれます。
個人的愁眉は、第5話の「生き残ったのは誰だ?」。
解説にあるように、「雪の山荘が爆破される緊急事態に生き残ったのは?」というのを明らかにするのですが、
いわゆる本格の舞台装置を逆手に取った名作。
なるほど、関係者を一堂に会するの意味も、大きく(思っていたのと)違い、いやいや、素晴らしい短編です。

最初の「犯人以外を当てる」のは、読者も解けるようになっています。容疑者の会話から
果たして皆さん見つけることができるでしょうか?

ところで、パット・マガーのWikipediaでは、上記に挙げた作品は「変格推理」に分類されていて、
そういう分類あるんだろうかと、少し気になりました。

名探偵は誰だ (光文社文庫 あ 36-10) - 芦辺拓
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名探偵は誰だ (光文社文庫) [ 芦辺拓 ] - 楽天ブックス
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posted by コースケ at 23:42| Comment(0) | 芦辺拓 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする