2025年03月30日

非武装地帯

まずはAmazonさんの紹介ページから。

格安で購入した白亜の豪邸。喜んで引っ越して来た浅川家だが、家の前でフェラーリが炎上したり、謎の男がうろついたり、
近所の住民が妙に物言いたげだったり……。周囲で不穏な出来事が相次ぐ。
なんと、豪邸はもともと殺された暴力団会長の住まいだったのだ。
やがて組の跡目争いが勃発。夢の新居は、物騒な抗争の〈中立地帯〉にされてしまう! 浅川家の運命は!?


暴力団の跡目争いのど真ん中に家を購入した浅川家。
相変わらずの怒涛の展開ですが、自らの家を中立地帯としたところは、
現代社会の戦争でも、緩衝地帯であるとか、言葉を変えて存在していますね。

現実ではそう簡単にいかないですが、浅川家は、一家揃って肝が据わっていて、
実に見事な采配と解決ぶりを発揮します。

女子高生のみどりの活躍はともかく、
弟で5歳の登は素晴らしい。
母親の沙江子もまるで違和感かく活動しています(笑
影の薄かった父親・克哉も最後に見せ場をつくるなど、抗争そっちのけで
浅川家が獅子奮迅です。

しかし、当然死者もでます。
悲しんでいられないのが、この抗争でもあり、小さいながらも戦争なんでしょう。

非武装地帯ではなく、武装地帯がそもそも無くならない限り、なかなか難しい。

非武装地帯 (光文社文庫 あ 1-195) - 赤川次郎
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posted by コースケ at 19:09| Comment(0) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月15日

都市伝説解体センター

集英社ゲームズさんからの紹介ページから
https://shueisha-games.com/games/umdc/

呪いの箱、事故物件、異界…都市伝説の正体と真実とは

怪異、呪物、異界などの調査・解体を行う『都市伝説解体センター』。
主人公の福来(ふくらい)あざみは、『都市伝説解体センター』のセンター長であり
国内屈指の能力者である廻屋渉(めぐりやあゆむ)とともに、「都市伝説」絡みの依頼を解決していくことになるが…


傑作です。ミステリ好き、都市伝説などのオカルト好き、アドベンチャー好きならば、
絶対にプレイして損はない作品です。

ブラッディ・マリーやコトリバコ、さらにドッペルゲンガーなど、
古来からかなり前に流行った「洒落怖」ネタの都市伝説まで、かなり網羅したうえで、
各事件が、どの都市伝説なのか<特定>し、その事件の真相を<解体>する。
情報収集はSNS、現場での聞き込みと、福来あざみだけが出来る念視で、事件の真相に迫っていきます。

全6話で、基本は上記の手順で、途中から作業的になりがちですが、
本作は、小説でいれば連作短編集。
SAMEJIMA管理人とはだれか、グレート・リセット(GR)とは何か。
物語が進むにつれ、廻屋と福来はこの謎に迫っていきます。

そして明らかに警察関係者と思われるジャスミンも独自の行動を取りつつ・・・

鮫島事件を元にしたSAMEJIMA管理人の正体は、おそらくほとんどの人が想像が付くのです。
だから、福来が廻屋の解体の後に、また元に戻して解体するのは、あーと私は思ってしまいました(笑

ところが、本ゲームは、そんなレベルでは終わりませんでした。
最後のどんでん返しはあまりに強烈で、これを見抜けた人は居なかったのではないでしょうか。
(だからこそのドット絵だったのかとも。)

もう1つ、本作はSNSの恐ろしさを真正面から捉えています。
だからこそ、最後にGRを行い、全ての情報を公開するという手段にでて、世間を大混乱に陥れます。
(ところが、エンディングではSNSはまた日常を取り戻しているとジャスミンたちから語られるところが、また恐ろしい。)
GR信者などもその1つでしょう。

また非解決事件、あったものをなかったものにする、警察庁の通称クローゼットというものが登場します。
あった事件を無かったことにしてしまう。未解決事件ですらない。
真犯人の目的は、ここへの侵入も大きかったのでしょうね。

しかし、本来噂話、もっといえば、なかったものをあったものにしてしまうSNSあるいは都市伝説との
対比が非常に面白い。

最後に再び、都市伝説解体センターは、開設されます。
これは、クローゼットへの反発なのか、いまだ無数に生まれてくる都市伝説・SNSへの対抗なのか。

続編が出来なさそうなのが残念でなりません。
素晴らしい作品でした。

都市伝説解体センター -Switch
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posted by コースケ at 20:29| Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月01日

ロイストン事件

まずはAmazonさんの紹介ページから。

真相は常に目の前にある――
英国本格技巧派の芸術的手腕
正義を貫こうとし、全てを失った弁護士。
彼の帰郷は家族と事件関係者に波紋をもたらす。
やがて発生した殺人は、過去に起因するものなのか?
全作翻訳刊行を記念し入手困難の傑作を復刊

「おまえの助けが要る。たった今、きわめて重大と思われるあることがわかった。おまえの義弟のデレクは――」
勘当されて以来四年ぶりに実家を訪ねたマークが見つけた、父パトリックの手紙の下書きは何を意味しているのか。
当の父は死体となり新聞社で発見される。どうやら父はロイストン事件の再調査をしていたらしい。
それは教師をめぐるスキャンダルで、弁護士として事件に関わったマークは、
父の意向に逆らって義弟を告発したために勘当されたのだった。父を殺した犯人を突き止めようと、
マークの推理が始まる。巧手ディヴァインの第三長編。

初めての作家さんです。
東京創元社さんの紹介文に惹かれて購入しました。

1日に読むページが少なく、読み終わるのに時間がかかってしまいました。
純粋に、ミステリとして十分おもしろいです。
まず、このタイトルがいい。
『ロイストン事件』、これが何の事件なのか語られるまで、
かなりのページ数を割いてます(笑
だから、そもそもなぜ主人公のマークが父と断絶していたのか、よくわからないまま
父親が殺され、異母弟が犯人の可能性が浮上し・・・と物語は一気に進みます。

ある意味、幕間のような形で、マークの過去や「ロイストン事件」、ポール・ウィラードとの関係等が語られます。

しかも物語が進むにつれて、ロイストン事件そのものではなく、ポールの新聞記事の元ネタの話や
マークの父親のファイルに謎の焦点が移っていきます。

解説では、(解説者ではなく)当時の評論として「ごたごたと混乱した物語」と低評価されていると記載があります。

確かに、書のタイトルとは、徐々にかけ離れていく(もちろん無関係ではなく、関係している1つ)ところや
やや個人的には冗長に感じたところもあります。

マークが犯人がわかったところ&それを炙りだそうと罠を張るところが、本書最大の盛り上がりなのですが、
これが少し弱い。スレイド主任警部が躊躇うのも無理はないでしょう。
物的証拠がまるでないのですよね。で、罠を張りどうなったかというと、非常に運よく犯人があることに反応し激昂、
それによりなんとか逮捕できるのです。

ここの犯人の行動にはいささか疑問。もともと犯行に手を染めるきっかけが迂闊ではあったのですが、
物語で描かれている限りでは、冷静な人物に読み取れます(それが作者の仕掛けかもしれませんが)。
だからここで犯人が激昂したのが、かなり不思議でした。

まあ、おそらくはキャロルの被害者女性の役がアカデミー賞ばりの名演技だったのは確かなんだろうと思いましたが。

事件と関係があるのかないのか、痴情のもつれ、複雑な男女関係、義母と義弟の関係・・・
様々な事柄が描かれていきます。それが「混乱した物語」と評された理由だと思いますが、
逆にまるで事件が見えなくなるというのも事実。
最後まで犯人が誰なのか、まるでわかりませんでした(苦笑)
しかも、動機は極めて単純です。それすらわからず。

こうした古典作品は、同時代や少し前の推理小説・探偵小説の影響などがどうであったのか、
そういうものが知りたくなりました。

ディヴァイン、『こわされた少年』もすでに購入済みなので、こちらもじっくり読みたいと思います。

ロイストン事件 (創元推理文庫) - D・M・ディヴァイン, 野中 千恵子
ロイストン事件 (創元推理文庫) - D・M・ディヴァイン, 野中 千恵子
ロイストン事件 (創元推理文庫) [ D・M・ディヴァイン ] - 楽天ブックス
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posted by コースケ at 23:48| Comment(0) | 海外ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする