真相は常に目の前にある――
英国本格技巧派の芸術的手腕
正義を貫こうとし、全てを失った弁護士。
彼の帰郷は家族と事件関係者に波紋をもたらす。
やがて発生した殺人は、過去に起因するものなのか?
全作翻訳刊行を記念し入手困難の傑作を復刊
「おまえの助けが要る。たった今、きわめて重大と思われるあることがわかった。おまえの義弟のデレクは――」
勘当されて以来四年ぶりに実家を訪ねたマークが見つけた、父パトリックの手紙の下書きは何を意味しているのか。
当の父は死体となり新聞社で発見される。どうやら父はロイストン事件の再調査をしていたらしい。
それは教師をめぐるスキャンダルで、弁護士として事件に関わったマークは、
父の意向に逆らって義弟を告発したために勘当されたのだった。父を殺した犯人を突き止めようと、
マークの推理が始まる。巧手ディヴァインの第三長編。
初めての作家さんです。
東京創元社さんの紹介文に惹かれて購入しました。
1日に読むページが少なく、読み終わるのに時間がかかってしまいました。
純粋に、ミステリとして十分おもしろいです。
まず、このタイトルがいい。
『ロイストン事件』、これが何の事件なのか語られるまで、
かなりのページ数を割いてます(笑
だから、そもそもなぜ主人公のマークが父と断絶していたのか、よくわからないまま
父親が殺され、異母弟が犯人の可能性が浮上し・・・と物語は一気に進みます。
ある意味、幕間のような形で、マークの過去や「ロイストン事件」、ポール・ウィラードとの関係等が語られます。
しかも物語が進むにつれて、ロイストン事件そのものではなく、ポールの新聞記事の元ネタの話や
マークの父親のファイルに謎の焦点が移っていきます。
解説では、(解説者ではなく)当時の評論として「ごたごたと混乱した物語」と低評価されていると記載があります。
確かに、書のタイトルとは、徐々にかけ離れていく(もちろん無関係ではなく、関係している1つ)ところや
やや個人的には冗長に感じたところもあります。
マークが犯人がわかったところ&それを炙りだそうと罠を張るところが、本書最大の盛り上がりなのですが、
これが少し弱い。スレイド主任警部が躊躇うのも無理はないでしょう。
物的証拠がまるでないのですよね。で、罠を張りどうなったかというと、非常に運よく犯人があることに反応し激昂、
それによりなんとか逮捕できるのです。
ここの犯人の行動にはいささか疑問。もともと犯行に手を染めるきっかけが迂闊ではあったのですが、
物語で描かれている限りでは、冷静な人物に読み取れます(それが作者の仕掛けかもしれませんが)。
だからここで犯人が激昂したのが、かなり不思議でした。
まあ、おそらくはキャロルの被害者女性の役がアカデミー賞ばりの名演技だったのは確かなんだろうと思いましたが。
事件と関係があるのかないのか、痴情のもつれ、複雑な男女関係、義母と義弟の関係・・・
様々な事柄が描かれていきます。それが「混乱した物語」と評された理由だと思いますが、
逆にまるで事件が見えなくなるというのも事実。
最後まで犯人が誰なのか、まるでわかりませんでした(苦笑)
しかも、動機は極めて単純です。それすらわからず。
こうした古典作品は、同時代や少し前の推理小説・探偵小説の影響などがどうであったのか、
そういうものが知りたくなりました。
ディヴァイン、『こわされた少年』もすでに購入済みなので、こちらもじっくり読みたいと思います。

ロイストン事件 (創元推理文庫) - D・M・ディヴァイン, 野中 千恵子
![ロイストン事件 (創元推理文庫) [ D・M・ディヴァイン ] - 楽天ブックス](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/0141/9784488240141_1_8.jpg?_ex=128x128)
ロイストン事件 (創元推理文庫) [ D・M・ディヴァイン ] - 楽天ブックス