「葉桜の季節に君を想うということ」で
日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞など
2004年のあらゆる賞を総なめにした作者の渾身(?)の作品
解説によると本書は三部作構想になるとか。
(すでに第2作「密室殺人ゲーム2.0」は発売)
さて本書はハンドルネーム、チャット、という
インターネットの仮想空間での4人が登場します。
こうしたネットの仮想空間やハンドルを利用した
作品で真っ先に思い出すのは
小説版金田一少年の事件簿「電脳山荘殺人事件」です。
この作品では、パソコン通信で知り合った男女複数名が
それぞれの「役割」をこなすことで、一人の男性を殺害する
という内容。
オフ会にてそれぞれのハンドルを名乗った彼らが
次々と殺害され、金田一はその連続殺人の謎を解きます。
そこで本書に立ち戻ると、
本書は<044APD>、<axe>、<ザンギャ君>
<伴道全教授>、そして本作の語り手である<頭狂人>
の5名が映像と音声によるAVチャットを行うという設定になっています。
そしてそこで語られるのは各人が起こした現実の殺人事件。
他の4人はその事件の謎を解く、<探偵役>となるのです。
4人からすれば犯人はわかっている、なので
犯人から示された謎(ミッシング・リング、アリバイ、密室etc・・・)
を、犯人から与えられたヒントやネットなどからの情報を基に
解き明かしていくわけです。
本書を読んで思ったのは、探偵とはなんともやるせない存在ですね(苦笑
目の前に犯人が居て、犯人からのヒントや情報が無いと、
どうすることもできない。
<axe>による連続殺人は止めることはできませんでした。
探偵とはなんと無力なのか?(笑
あくまで自らが実行したい計画に乗っ取った殺人。
そこに動機も怨恨もそうした個人的感情は存在しない。
だからこそ純粋に推理ゲームとして、彼らは楽しめるのでしょう。
それにしても度々出てくる本格への皮肉やらネタがおもしろい。
それに「生首に聞いてみる?」は死体焼失トリックとして見事。
法月さんのアレが元ネタですよねえ(笑
本編途中からクライマックスまでは、
<頭狂人>が暖めに暖めた殺人を実行。
まあこれこそ彼でなければできなかったというものですね。
そしてラストはさらなる欲求や興奮を求めて
彼はとてつもない行動に打って出ます・・・
さて続編は再び彼らが登場するのか、
それともまた別の登場人物による話なのか、
早く読みたいなあ。
2010年01月29日
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