大山誠一郎さんの初短編集。
まずはAmazonさんの解説ページから。
警視庁捜査一課刑事の後藤慎司、翻訳家の奈良井明世、精神科医の竹野理絵は、
彼らが住むマンションのオーナー峰原卓の部屋に集まり推理合戦に興じる。
指紋照合システムに守られた部屋で発見された死体、
クルーズ船の殺人現場に残された奇妙なダイイング・メッセージ、
三転四転する悪魔的な誘拐爆殺事件
名探偵の推理と意外な真相を鮮やかに描く、本格推理界の俊英第一の著書。
オーナーである峰原卓を探偵役とし、
捜査一課刑事である後藤が持ち込む難事件を
鮮やかに解き明かすという形式になっています。
ただ、奈良井や竹野の推理も良いところを突いていて、
峰原以外の3人も十分に探偵役の素質あり。
その点が実は最後の「Yの誘拐」に繋がる伏線でもあるわけです。
3編の中では「Fの告発」を推します。
3人しか犯人たり得ないのに、3人とも違う、
その謎を解く鍵は密室を作り出している「Fシステム」にあり。
話を聞いただけで、真相を看破した峰原は見事としか言いようがありません。
さて本書は4編収録されていますが、
最後の「Yの誘拐」だけは他3編とは別モノです。
実際に4人が実地調査に赴き、2つの推理を導き出します。
第一部 成瀬正雄の手記、第二部 再調査、
エピローグという構成となっており、
エピローグでは今までとは違う趣向が加えられています。
「Yの誘拐」は結局は未解決であり、どの推理が正しかったのか、
実のところわかりません。
普通に感想を述べると、手記を読んだ4人が気付いたおかしな点は
本来警察も当然気付いてしかるべきなのに、
京都府警はいくらなんでもマヌケすぎるという(笑
実際後藤が所属する第九係班長の大槻警部ならば、
看破していたでしょう。
推理としては峰原が辿り着いた推理が合理的なものではないか
と思うのですが、「Yが偽者」という発言がどうもわかりません。
それはエピローグでの推理でもそうで、う~ん・・・
とまあ僕が納得していないだけですが(苦笑
それとエピローグの推理はすこし唐突感が否めません。
前3編でそのあたりの伏線を散りばめておいた方が、
ぐっと「あっ!」と驚かせる推理になっただろうなと思います。
「密室蒐集家」の文庫化が楽しみです。
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