2021年12月16日

味なしクッキー

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「あなたの秘密を知っています」と、パリの自宅に押しかけてきた女。
別れを決意して、彼のために「最後の晩餐」の支度をする女。
高校時代に自殺した友人の夢を見た女。友人は夢の中で「殺された」と言った。
それが気になり、真相を知ろうとする女。
不倫相手にクッキーを焼く女。
ロングセラーの『天使の眠り』や『Fの悲劇』
『白椿ななぜ散った』などで人気の著者が描く、“わるい女たち"。
「パリの壁」「決して忘れられない夜」「愚かな決断」「父親はだれ?」
「生命の電話」「味なしクッキー」の六作を収録した短篇集を初文庫化!




解説の大矢博子さんではないですが、「やっと文庫としてこの短編集をお届けできる」。
これに尽きます。文庫化まで10年、長い!
それだけこの短編集、読んで損はありません。

まず最初の「パリの壁」からすごい。
なぜ女性はある男性をパリまで追ってきたのか。
最初は名前しかわからない、そして一気に明らかになっていく物語の核心。

「決して忘れられない夜」は、閲読注意ですね。
なんとなく想像できるのですが、したくない結末と、主人公が恐ろしい。

倒叙ミステリである「愚かな決断」。これはある意味小説だからこそ
完璧なミスリードと言えるかもしれません。
それと、田中弘一は完全犯罪を目指そうとしていたのに、電話に出るという、
余りにお粗末すぎる犯人ですね。
騙しの仕掛けは見事ですが、犯人がマヌケ過ぎる。

「父親はだれ?」が本作白眉かと。過去に自殺した同級生が突如目の前に現れる。
そして彼女は妊娠していた。また、主人公自身も新たな命を授かっていて・・・

過去の自殺した事件を解き明かそうとする七菜代。元担任であった夫が父親なのか?
疑心暗鬼に駆られながらも、当時のクラスメート達と再会していき・・・
最後の結末は圧巻。そして彼女のマウスの実験もこれがまた、なんというか、
いやー上手いですね。

表題作「味なしクッキー」は、若年性認知症を患う妻・雪江と夫の物語。
夫の視点と妻の視点で描かれる物語は、認知症という病を考えさせられつつも、
なぜ夫が妻を殺害したのかが語られていく過程、さらには妻の最後の告白の「仕掛け」が
見事な作品。

人間心理を嫌というほど、そして突き詰めていけないところを突いて作品集ですね。
だが、面白い。




味なしクッキー (徳間文庫)

味なしクッキー (徳間文庫)

  • 作者: 岸田るり子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/12/08
  • メディア: 文庫




posted by コースケ at 23:39| Comment(6) | 岸田るり子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サイトー様、nice!ありがとうございます!
Posted by コースケ at 2021年12月19日 18:46
xml_xslさま、nice!ありがとうございます!
Posted by コースケ at 2021年12月19日 18:47
31様、nice!ありがとうございます!
Posted by コースケ at 2021年12月19日 18:48
@ミック様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
Posted by コースケ at 2021年12月19日 18:48
鉄腕原子様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
Posted by コースケ at 2021年12月19日 18:48
yamさま、nice!ありがとうございます!
Posted by コースケ at 2021年12月19日 18:48
コメントを書く
コチラをクリックしてください