大学教授の曽根原は、ふと気づくとバー〈スリーバレー〉の前に足が向いている。
女性バーテンダー・ミサキの魅力なのか、文学談義のせいなのかは分からない。
ある晩、ミサキが質問を繰り出したのは、川端康成の『雪国』についてだった。
『雪国』はミステリでなはいか、というミサキの疑問に、途中から入店してきた宮田が
珍妙な回答を話し始めて……。
さらに、田山花袋『蒲団』、梶尾基次郎『檸檬』、三島由紀夫『金閣寺』と
日本文学界の名作の新解釈で贈る、鯨統一郎最新作。
前作よりも楽しめました。
日本文学界の重鎮・曽根原が良い味を出してます。
『邪馬台国はどこですか?』に続く早乙女&宮田シリーズも、
いつの間にか主人公は<スリーバレー>に足が向いてましたが、
曽根原の場合、美人バーテンダーのミサキのことが気になり始めて、
ついつい足が向いてしまうのですかねえ。
必ず出会う宮田のことを4話通して馬鹿にしているという、認識をまるで変えていない
という一貫性も面白いですが。
田山花袋の『蒲団』の解釈は中々斬新だなと思いました。
ネタバレになるので書きませんが、現在の小説界の一大ジャンルの原点、
いや田山花袋をその原点と書いているんですよね。
ただやはり本作愁眉は、第四話『金閣寺』でしょう。
三島由紀夫という人物へも迫りつつ、本書の「金閣寺」とは何を指しているのか?
宮田の解釈に唸らされました。
ところで、最終話に登場したすごい美人というのは、もちろん早乙女静香ですよね?
宮田との関係はどうなったんだろうか。

金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)
- 作者: 鯨 統一郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2021/11/11
- メディア: 文庫