コミック雑誌創刊に向けて鬼編集長にしごかれる編集者の綿畑克二。ある日、
行きつけのスナック「蟻巣」で眠りこけ、夢の中で美少女アリスと出会う。
そして彼女との結婚式のさなか、チェシャ猫殺害の容疑者として追われるはめになった。
目が醒めると、現実世界では鬼編集長が殺害されており、ここでも殺人の嫌疑をかけられてしまう。
二つの世界で無実を証すために事件の真相を追うことになった。
日本推理作家協会賞受賞の長篇ミステリー。
以下、ネタバレあり。
相当前から気になっていて、徳間も、双葉社もいずれも絶版?で全然読むことが叶わなかった
作品でした。今回、徳間文庫さんから念願の復刊ということで、早速に購入。
アリスの世界(夢?)と現実世界を行き来する主人公・綿畑克二。
彼が最後に行き着く先はどこなのか・・・?
ともかく、アリスの世界が不条理極まりない世界です。
アリスはともかく、ニャロメやヒゲオヤジ(伴俊作)、さらには鉄人28号まで
登場します。しかも、鉄人28号はこの世界で起きたチェシャ猫が<密室>で殺されている
という事件を解く、最大のキーにもなります。
とにかくレベルの高い言葉遊びが凄い。辻真先御大はこれは執筆していて、
気持ち良かったのだろうなあ。
章タイトルの反射(鏡)表現、しりとりで進む文章、証人から白兎への近似語遊び、
挙げればきりがありません。
それでいて、この夢の世界の殺人事件が実に凝っている。密室を逆手に取ったトリックや、
『仮題・中学殺人事件』の意外な犯人に通じる、犯人を裁く法廷の裁判長が犯人という。
御大のこだわりが見えますね。
現実の世界では『深夜の博覧会』で(私にとってはなじみ深い) 那珂一兵が登場。
こちらの事件はアリバイ崩しがメインとなりますが、そもそも事件の大前提を覆す
『蟻巣』の面々の活躍(?)。明野編集長の執念とも言える思いが彼彼女を
動かしたのでしょう。
しかし、結局こちらの事件の最後はどうなったのだろうか。
最後を飾る章は夢の国の話で、301頁の「これじゃおわらない!」は何を指すのでしょうか・・・
続編にあたる『ピーター・パンの殺人』に続くということなのでしょうか。
ここまで遊びを盛り込んで、それでいて夢と現実いずれの事件も見事な作品。
合わない方も居られるかもしれませんが、復刊したことでぜひ手にとってほしいものです。
【関連する記事】
こんにちは。
ついに読まれたのですね、「アリスの国の殺人」!
「ピーターパンの殺人」は、またガラッと違う作風ですよ。
こちらも「天使の殺人」とあわせて復刊してほしいですね。
ついに読みました。満を持して(笑
「ピーターパン」は全く違うのですかー
wikiで「蟻巣」シリーズの分類なので、関連
しているのかと思いましたが、登場人物が関係
するくらいなのですかね。
本当にこちらも復刊をお願いしたいです。