盛岡のレストランで宮沢賢治の童話朗読会が開かれた。
取材に赴いた夕刊紙記者・可能克郎は奇妙な出来事に遭遇。
台本に賢治作品の贋物が紛れ込んでいたのだ。
参加者を震撼させた“贋作騒動”は未解決。
ところが二か月後、参加者の一人・倉村が変死する。
朗読会に出演したタレント三木七重と参加メンバーの関係に不審を覚えた克郎は調査を進めるが……。
今年の最初に『夜明け前の殺人』が同じく実業之日本社文庫から復刊されていて、
そちらは購入しなかったのですが、本書は解説にある「可能」の文字で購入しました(笑
辻作品で「可能」といえば、可能キリコ&牧薩次のポテト&スーパーシリーズでしょう。
そして可能克郎は、『仮題・中学殺人事件』で初登場した、キリコの兄。
彼が主人公の作品なんてあったのか!と購入。
解説によると、300冊近い辻作品の中でも、可能克郎は、辻御大が生み出した数多くの
名探偵と顔見知りという、まさに辻ワールドの橋渡し役のようです。
彼の足跡を追えば、辻作品の大半を網羅できるという、偉大な人物。
しかし、彼はホームズ役でもワトソン役でもないというのがまた面白いところ。
本書の中で、克郎は、自らがホームズとワトソン両役になり、事件の解決に挑むのですが・・・
良いところまではいきつつも、最後は幸運に助けられて命は助かったという始末に。
しかし彼がこのように登場する作品は数多くあるようで、解説で触れられている
作品群は、ぜひとも復刊してほしいですね。
本書は宮沢賢治尽くしです。章タイトルから、登場人物まで。
宮澤賢治についてほとんど知らない私でも、時折引用される童話など、楽しめました。
事件のトリックが、牧薩次の書いた本からというのは、中々洒落が効いてます。
さらなる辻作品の復刊が続くことを願いつつ。
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