2024年10月13日

最上階の殺人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

私は本書を通じて、バークリーの
魅力に開眼したのです。――阿津川辰海
名探偵vs.警察捜査、火花散る推理合戦!
謎解きの魅力ほとばしる著者屈指の傑作。

閑静な住宅街、四階建てフラットの最上階で女性の絞殺死体が発見された。
現場の状況から警察は物盗りの犯行と断定し、容疑者を絞り込んでいく。
一方、捜査に同行していた小説家ロジャー・シェリンガムは、
事件をフラットの住人の誰かによる巧妙な計画殺人と推理し、
被害者の姪を秘書に雇うと調査に乗り出す! 
心躍る謎解きの先に予測不能の結末が待ち受けるシリーズ屈指の傑作。
エッセイ=真田啓介/解説=阿津川辰海


ややネタバレあり。
解説の阿津川先生のいう、抱腹絶倒の意味は最後まで読むと納得(笑

銀行を信じず、それでいて金を家に貯めていたという噂のある、
高齢女性が殺害された。警察はその手口から、名のある窃盗犯に狙いを定めるが、
その場にたまたま居合わせた(現場へ行くことになった)ロジャー・シェリンガムは、
この事件はそんな単純なものではないのではないかと、推理を巡らせ・・・

という始まりです。
とにかく、シェリンガムは「間違える」名探偵なのでしょう。
以前に読んだ『レイトン・コートの謎』もそうでした。
しかも、本作に限ると、最後の最後で重大な誤りを犯してしまい、
それをなんとか取り繕うためにヤードの総監補まで上手いこと利用してしまうのですから。
取り繕うのも流石です(笑

彼がいきなり、被害者の姪であるステラ・バーネットを自らの秘書にしてから、
彼女との本気なのか冗談なのか、とにかく二人のやりとりが面白すぎます。
洋服店での彼女の変貌ぶりには大注目でしょう。

素晴らしい美女なのに、まったく魅力を感じないとしつこく言うロジャー。
その割に、最後の最後で、僕と結婚しない?なんてセリフを!
ステラから「まさか」と答えられ、「やれやれ、助かった」と答えるロジャー。
ここで終幕。
どこまで本気で冗談なのか、本当にわかりませんでした(笑

わからないのは、ステラが婚約者に仕立てた幼馴染のラルフも同様。
彼はヤバい。今でも十分通じるヤバさです(笑)
あれが演技なのか、そう演技をしてくれと頼まれたのか、それすら
全くヒントすらなく、わからないありさま。
ここも良いんですよ。『レイトン』の競馬の描写のよう。

肝心の事件ですが、シェリンガムの推理は大体においてはかなり正確で、
特に未解決の謎を箇条書きで書き出したり、変装までしてモンマス・マンションに
聞き込みに行ったり、とにかくヤードやモーズビー首席警部の見ている先が
誤っているのだと、ある意味猪突猛進に進みます。

死亡推定時刻のトリックというか、これが大きな間違いであることを
見破る過程は、そのヒントとなる描写も含めて素晴らしいです。
被害者の胃に遺されていたものが、いつ食べられたのか、から
いつ食べられたものなのか、に辿り着く所は、個人的に一番好きかもしれません。

また、死亡推定時刻に目撃された走る男も非常に重要な意味を持っています。

で、上に書いたのは、あくまで最後の方の推理の過程ですが、
シェリンガムはあくまで名のある窃盗犯でなく、マンション内の誰かが犯人であると
疑い、一人ずつ探っていきます。
(この聞き込み等に、上記のステラとの寸劇や変装などが含まれます。)
で、動機は金がとられていることから、そこに目をつけ、上手く絞っていくのです。
ここも見事なのですが、最後の最後がねえ。いや金には違いないけど、
そもそも、シェリンガムのスコットランドヤードやモーズビーとの違いを
出すための、ある種思い込みの招いた結果なのかもしれません(笑

いやはや、単純な事件が実は・・・というのはよくあるかもしれませんが、
本作はそれをさらに超えている、まさに傑作と言って過言ではないですね。





最上階の殺人 (創元推理文庫)

最上階の殺人 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2024/02/29
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 23:32| Comment(1) | 海外ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by コースケ at 2024年10月20日 22:58
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