論理を武器に道を開くことの力強さが、
方丈作品には備わっている。若林踏(解説より)
復讐を企てる竜泉佑樹の前に現れる、標的の死体――
孤島で起こる人智を超えた不可能殺人に
推理で立ち向かう、異形の本格ミステリ。
〈竜泉家の一族〉三部作 第二弾
謀殺された幼馴染みの復讐のため、テレビ局のADとなった竜泉佑樹。
ターゲットの3名を含む9名で曰くつき無人島のロケに参加した佑樹だったが、
初日からターゲットの一人が殺されているのを発見する。自らが手を下すはずが、
一体何者の仕業なのか? しかも、その犯行には人ではない何かが絡み、
佑樹たちの中に紛れ込んでしまった!? 疑心暗鬼の中、またしても佑樹のターゲットが殺害され……。『時空旅行者の砂時計』で話題を浚った著者が贈る〈竜泉家の一族〉三部作第二弾、
予測不能な孤島本格ミステリ長編。
以下、ややネタバレあり。
竜泉寺家の一族シリーズ第2弾。
名前だけではありますが、前作主人公・加茂冬馬も登場します。
で、この加茂冬馬の書いたルポが、幽世島で起きた不可思議な出来事を
ある意味言い当てていたというのが、終盤で真犯人から少し触れられるのが嬉しいです(笑
本作は特殊設定ミステリ+吹雪の山荘ものになっています。
最も、特殊設定自体は、かなり早い段階で、本作主人公の竜泉佑樹がその特徴を看破
していくので、そこまで違和感はありません。
むしろ、この設定の上で、ここまでの館ミステリを創り上げた作者に敬意を表します。
私が特に秀逸だと感じたのは、小火を起こしてからの、焼死体のトリックです。
これは遺体を誤認させるトリックなのですが、登場人物が指摘しているとおり、
実人数との関係では、最初の推理に行き着くのは当然の帰結なのですが、
犯人のある特性を知った後では、大きく変わることになります。
また、個人的には「首の無い死体」の亜種バージョンでもあるのでは?と思いました。
遺体の処理が一番大変なのだというのが、かつて『金田一少年の事件簿』で語られた
ことがありますが、本作の遺体誤認トリックは、(その前の誤認含め)
遺体が誰なのか、だけで無く、その数含め、来訪者達を混乱させており、
本作の核ともいうべきトリックだと思います。
最後の船での会話は、さらなるあとがき、的な感じで、それはそれで楽しめました。
しかし、生き残った人たちは口裏合わせをしたようですが、果たして上手くいくのか(笑
いよいよ、次が竜泉寺一族ラストとなります。
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