2024年01月28日

折鶴

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ミステリ作家、紋章上絵師、奇術師。
この一冊で著者の三つの顔がすべて楽しめる――末國善己(解説より)
4つの衝撃の結末を描く、ミステリの技巧を凝らした
第16回泉鏡花文学賞受賞作
生誕90年記念出版第2弾

新内節を語れる友禅差しの模様師・脇田は、旅先で三味線弾きの芸妓・彩子と出会う。
脇田は彼女に惹かれるが、彩子と、酒と女で身を持ちくずした彼女の師匠の名新内語りが、
以前ある殺人事件に巻き込まれたことを知る、「忍火山恋唄」。
縫箔の職人・田毎は、自分の名前を騙る人物が温泉宿に宿泊し、
デパートの館内放送で呼び出されるという奇妙な出来事に見舞われていた。
そんな折、パーティで元恋人の鶴子と再会するが。
ふたりの再会が悲劇に繋がる「折鶴」など全4編。
職人の世界を背景に、流麗な筆致で描く恋愛小説と、
巧みな構成が光る本格ミステリを融合した名短編集。第16回泉鏡花文学賞受賞作。

またまた久しぶりの更新となりました。

『泡坂妻夫引退公演』で初めて読んだ、「紋章上絵師」シリーズの系譜、というか
大元的な作品を読んだ気がします。
いわゆる、ステレオタイプ的になりますが、江戸・東京の職人たちを扱っていて、
まず最初読んだだけでは、専門用語が理解できないのですが(苦笑)、
それも大量販売や機械製作の煽りを受けて・・・というのは共通しています。

最初に登場する「忍火山恋唄」は、三味線による唄いを取り上げていて、
これもまたテーマとしては極めて渋い。
ただこれを上手く掘り起こしつつ、最初に主人公が聞いた「幽霊話」を
見事にミステリに仕立てていく技巧はさすが。
しかし、本編はこれに留まらないのです。
上記で書いた、いわば時代の変化と関係させているのか、主人公の推理に
対して、全く違う真実を提示する。
最後の主人公と彩子の会話は何とも言えないものがあります。
事件の謎と今の境遇のようなものを重ね合わせた感。
解説の末國さんは「新内の名人が活躍できなくなる時代の変化が、そのまま素人探偵の
活躍を許さない散文的な状況と重ねられており」と評してますが、言い得て妙でしょう。

表題作「折鶴」も、時代の変遷を描いた名作。そこに自分の名前を騙る人物が
そこかしこに登場するというミステリを加えた作品。
「少し前までは、腕に職を付ける・・・それが見事にひっくり返った」と
主人公が思う場面がありますが、まさにその通り。
本編は悲しい終わり方をするのですが、それ異常に、染め物とか着物とかに関係する
業界の、工業化の煽りの話が身につまされました。

亜愛一郎や奇術とは違った側面の泡坂妻夫作品。ぜひご一読を。



折鶴 (創元推理文庫)

折鶴 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/05/11
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 19:21| Comment(1) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月10日

ダイヤル7をまわす時

まずはAmazonさんの紹介ページから。

【生誕90年記念出版第1弾】
泡坂ワールドのすべてを愉しみ、
愛することができたのは、
この本に出会えたからだ――櫻田智也(解説より)
読めば必ず騙される!
名品『煙の殺意』に匹敵する短編集

戸根市で対立する暴力団・北浦組と大門組は、事あるごとにいがみ合っていた。
そんなある日、北浦組の組長が殺害された。しかも殺害現場で、
犯人が電話を使った痕跡が見つかる。犯人はなぜすぐに立ち去らなかったのか、
どこに電話を掛けたのか? 
「読者への挑戦」付きの、正統派犯人当て「ダイヤル7」。船上で起きた殺人事件。
犯人はなぜ死体をトランプで装飾したのか? 
トランプの名品〈ピーコック〉をめぐる謎を描く「芍薬に孔雀」など7編。
貴方は必ず騙される! 
奇術師としても名高い著者が贈る、ミステリの楽しみに満ちた傑作短編集。

泡坂妻夫先生の本書と、櫻田智也先生の『蝉かえる』が同時文庫発売とは、
明らかに東京創元社さんは狙ってますね。
なお、『蝉かえる』はまだ未読。まずは御大のお手本をと(笑

ここ数年、都筑道夫先生作品と同様、泡坂妻夫先生の作品も数多くが復刊され、
嬉しい限りです。
創元推理文庫を中心に、河出文庫からも刊行されました。
しかし、まだまだ作品は多くあり、本書も当然ながら未読でした。

タイトルの「ダイヤル7」は、先生作品では珍しい犯人当て小説!
当然のことながら、わかりませんでした(苦笑

今の若い世代が読んでも、まずわからない「ダイヤル」式の電話ですが、
鑑識の意地の捜査で、触れているダイヤルがわかり、そして、なぜ
犯人が殺人を犯した後に電話をしなければならなかったのか?ここに全ての謎が
詰まっています。
ところで、本作はある場で聴衆がいる前で、塚谷さんの依頼で、長く警察に勤めていた
久能なる人物が語る内容になっています。
ここは犯人当てとは直接的に関係ないものの、ラストまで行くと決して犯人当てだけでは
終わらない結末となっています。

「芍薬と孔雀」は、奇術師の顔を持つ御大ならではの作品です。
そしてトランプが事件の鍵を握るのも流石。
しかもこの作品。謎の解けていく過程が見事で、本書所収内で一番かと思います。

「飛んでくる声」は「意外な結末」の好編。
さらには「意外な探偵」も登場します。

「可愛い動機」、動機がものすごいところから来てますが、
今の世の中では珍しくないかもしれないと思ってしまうところが怖いですね・・・

「金津の切符」はコレクター同士の諍いを描く物語。
倒叙形式で書かれていて、箱夫の心情がそれなりにわかるだけに、すこし辛い作品ですね。
しかし刑事のラストの謎解きは、刑事コロンボのラストのような驚きがあります。

さて本作の中で私のオススメは「広重好み」です。
この作品は、亜愛一郎シリーズの「DL2号機事件」を、個人的には彷彿とさせました。
殺人や盗みなどの犯罪は一切描かれないものの、このタイトルの意味と結末は
泡坂先生にしか書けないのではないか。

「青泉さん」は、彼によって周囲の人生が変わる物語。
殺人が起きてはいますが、そこが主眼ではなく、「青泉さん」の生き方が主眼です。


ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/02/20
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 23:42| Comment(1) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月04日

奇術探偵曾我佳城全集 下

まずはAmazonさんの紹介ページから。

美貌の奇術師にして名探偵・曾我佳城が解決する事件の数々。花火大会の夜の射殺事件で容疑者の
鉄壁のアリバイを崩していく「花火と銃声」。雪に囲まれた温泉宿で起きた、
“足跡のない殺人”の謎を解く「ミダス王の奇跡」。佳城の夢を形にした奇術博物館で悲劇が起こる、
最終話「魔術城落成」など11編を収録。奇術師の顔を持った著者だからこそ描けた、
傑作シリーズをご覧あれ。

以下、ややネタバレ。




上巻から時間が空いてしまいましたが、下巻も粒ぞろいです。
平然とした文章が逆に恐怖でもあり、ホワイダニットの快作でもある「ジグザグ」
事件そのものは凄惨なのですが、ラストに救いがありました。

タイトルからはおぞましさを感じる「だるまさんがころした」も、
ラストで見事な解決を魅せる話。
何のためにこんな怪文書が出回るのか?

説明では足跡の無い殺人を解く、としかありませんが、この曾我佳城全集で
キーポイントとなるのが「ミダス王の奇跡」です。
この作品、見事な叙述トリックです。しかも登場人物がさらっと間違えることで
実にうまくそのトリックが隠されています。
これが最終話の伏線となるというのだから、実に見事です。

「真珠夫人」はどこか亜愛一郎を思わせる作品に私は感じました。
希有なアクシデントで失った真珠をなぜかたくなに受け取らなかったのか。
その謎が、なんとなくそう思わせました。

最終話「魔術城落成」は佳城のラストとしては非常に悲しい物語なのですが、
これまでの作品にちりばめた伏線を全て回収し、こういうラストしかなかった、
そう思わせる作品でもあります。



奇術探偵 曾我佳城全集 下 (創元推理文庫)

奇術探偵 曾我佳城全集 下 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: 文庫
posted by コースケ at 15:38| Comment(5) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月18日

奇術探偵曾我佳城全集 上

まずはAmazonさんの紹介ページから。

若くして引退した、美貌の奇術師・曾我佳城。普段は物静かな彼女は、
不可思議な事件に遭遇した途端、奇術の種明かしをするかのごとく、鮮やかに謎を解く名探偵となる。
殺人事件の被害者が死の間際、天井にトランプを貼りつけた理由を解き明かす「天井のとらんぷ」。
本物の銃を使用する奇術中、弾丸が掏り替えられた事件の謎を追う「消える銃弾」など、
珠玉の11編を収録する。

講談社文庫から刊行されていた『曾我佳城全集』を底本にしつつ、
発表順に再編集したのが創元推理文庫版となります。
以下、ややネタバレ。





これまで数多くの作品で泡坂ワールドを堪能してきましたが、
奇術師である御大の真骨頂ともいうべき作品が本作なのかもしれません。

最初の「天井のトランプ」から、その魅力は存分に発揮されます。
レギュラーキャラクターとなる竹梨警部も登場。
カードマジックという、奇術の基本から入るのも良いですね。

次作「シンブルの味」は奇術大会を見る団体が突然登場し、
あれ佳城は・・・?と思いきや、「大岡佳子(おおおかよしこ)」がなんと曾我佳城!
考えてもみれば、すでに彼女は引退しているわけで、本名を名乗っているという
のは不思議でもなんでもないのです。しかし、私はこの名前の問題こそが、下巻に続く
壮大なトリックの足がかりでもあるのです。これが実にうまい。

戯曲風の文体で描かれる「白いハンカチーフ」も印象的。
テレビの生放送内での事件解決で、最後も番組終了で締めくくるという、
テレビやマスコミの風刺ともいえるラスト見物。

もう一人のレギュラーキャラクター、いや佳城の弟子となる串目匡一が初登場する
「消える銃弾」、銃弾のトリックも見事なのですが、もの悲しい結末なんですよね。

「シンブルの味」に通じるものもある「石になった人形」。
昔の見世物小屋的なことを想像したりもしましたが、ここでは佳城のこれまでとは
違った一面を竹梨警部が発見してしまう所が一番の衝撃でしょうか。

ラスト「剣の舞」はこれまたもの悲しい物語。
「わたしには悲劇でした」と平然と話す佳城が印象的です。

佳城と串目匡一の魔術城への道程は下巻へと続きます。


奇術探偵 曾我佳城全集 上 (創元推理文庫)

奇術探偵 曾我佳城全集 上 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: 文庫
posted by コースケ at 19:10| Comment(4) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月09日

泡坂妻夫引退公演 絡繰篇

まずはAmazonさんの紹介ページから。

緻密な伏線と論理展開の妙、愛すべきキャラクターなどで読者を魅了する、
ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。著者の生前、単行本に収録されなかった
短編小説などを収めた作品集を、二分冊にした文庫化でお届けする。
絡繰篇は、大胆不敵な盗賊・隼小僧の正体を追う「大奥の七不思議」ほか、
江戸の雲見番番頭・亜智一郎が活躍する時代ミステリシリーズ、
五節句の紋を誂えた着物にこめられた想いを読み解く「五節句」ほか、紋章上絵師たちのシリーズ、
背中に見事な彫物を持つと評判の美女を巡る「荼吉尼天」といったノンシリーズなど、17編を収めた。



なんといっても本作は雲見番頭の亜智一郎シリーズ続編が読めるのが大きいです。
時は幕末、内憂外患、さらには尊王攘夷吹き荒れる中でも、そんな世の中の動向には
我関せず、亜たちは変わらず雲見を続け、将軍側衆・鈴木阿波守正團の指示を受け、
様々な依頼をこなしていきます。

「吉備津の釜」は、御庭番御用を務める二人が、長州藩への調査で行方不明になったという、
いよいよ幕末の激動に智一郎たちが巻き込まれる?!と思いきや・・・
なんという脱力!これこそ智一郎シリーズかつ泡坂作品。

「大奥の七不思議」は私のオススメ。
干物をくわえて出て行った狸(阿波守)、そしてラストに阿波守が言う台詞。
狸が化けた姿だったのか、それとも本当の阿波守だったのか。
いや、台詞を考えれば後者なんですが、そうだとするとあまりに行動が奇妙過ぎる(笑

ホラー小説である「母神像」や、奇妙な味わいを感じる「荼吉尼天」もオススメです。
紋章上絵師のシリーズは<手妻篇>の奇術シリーズ的な位置付けでしょうか。

しかしもう新作が読めないのが本当に残念です。
絶版や入手困難な作品がまた復刊することを望みます。


泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 22:17| Comment(5) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月10日

泡坂妻夫引退公演 手妻篇

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。その最後の贈り物である作品集を、
二分冊にした文庫化でお届けする。
手妻篇は、辛辣な料理評論家を巡る事件の謎を解く「カルダモンの匂い」ほか、
ヨーガの達人にして謎の名探偵・ヨギ ガンジーが活躍するミステリシリーズ、
酔象将棋の名人戦が行われた宿で殺人が起こる、単行本刊行後に発見され初書籍化となる「酔象秘曲」、マジシャン同士の心の機微を描く「ジャンピング ダイヤ」ほか、
マジックショップ・機巧堂を舞台にした奇術もの、
住人が次々と死んだマンションの一室で交霊会を行い、
真実を暴く戯曲「交霊会の夜」など13編を収録。

ずいぶん前に「引退公演」は読了していたのですが、アップが遅くなりました。

本書にはなんといってもヨギ ガンジーシリーズ短編が久しぶりに読めることが大きい。
ただ『ヨギ ガンジーの妖術』収録のものと少し異なり、
「カルモダンの呪い」「未確認歩行原人」いずれも、より「日常の謎」が強く出ているかなと
感じました。
それだけに未完に終わった「ヨギ ガンジー、最後の妖術」が残念でなりません。

本書所収白眉は「酔象秘曲」という、かつてあった「酔象」という駒を使った
将棋をめぐる殺人事件。
少し艶っぽい描写、またトリックありと、楽しめる作品となっています。

またわずか4ページの「絶滅」は星新一のショート・ショートを彷彿とさせる快作。
「聖なる河」も短編ながらも最後にどんでん返しが待っている良作です。

「交霊会の夜」はぜひ戯曲を小説として描いて欲しかったなあ。
かつてクリスティのポワロもので戯曲「ブラック・コーヒー」を
別の作者が小説として刊行した事がありますが、これを小説化してくれる方が
居ればなあ。

近日中に「絡繰篇」もアップ予定です。


泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 19:54| Comment(5) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月15日

毒薬の輪舞

まずはAmazonさんの紹介ページから。

鳴らないはずの病院の鐘楼の音が聞こえたとき事件が起きた―夢遊病者、自称億万長者、狂信者、
誰も見たことがない特別室の入院患者など、怪しい人物が集う精神科病院で続発する毒物混入事件。
そして遂に犠牲者が…犯人は、使用された毒物は?
病棟に潜入した海方と小湊は事件を解決できるか?海方シリーズ第2弾!

前作とは打って変わって、ある種、閉ざされた孤島での事件のようです。
というより、そもそも事件が起こっているのかどうかすら、
読み進めていっても、ほとんどわからない状態に陥ります。

これは別に悪い意味ではなく、良い意味でなのです。
解説の有栖川先生は、迷路にでも迷い込んだと本書を評しますが、
まさに正鵠を得ています。

入院患者たちのそれぞれの行動、精神病院に隠された謎。
これらは全て、物語の枝葉のようにみえ、実のところ物語の核心なのです。

本当に終盤になり、ある事故(事件?)が起き、
それを含め、舞台となった精神病院でのあらゆる謎が、
一気に収斂され、明かされていく様は、見事というほかありません。
有栖川先生が言う、論理仕掛けの奇談、言い得て妙です。

第1作目とは、作風そのものが全く違いますが、それでも
シリーズものとして読めてしまう、海方と小湊コンビも相変わらずです。
こんな作品があったとは・・・傑作です。


ところで前作と同様、カバーが遠藤憲一さんになっているのですが、
これは海方警部補がドラマ化したら、遠藤憲一さんが適任という
意味なのでしょうか。それは謎として残りました。


毒薬の輪舞 (河出文庫)

毒薬の輪舞 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/04/05
  • メディア: 文庫



毒薬の輪舞 (講談社文庫)

毒薬の輪舞 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1993/09/15
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 21:26| Comment(5) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月14日

しあわせの書-迷探偵ヨギガンジーの心霊術

まずはAmazonさんの紹介ページから。

二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体“惟霊講会”。
超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、
布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。
41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、
実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ―。
マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企てを、
どうか未読の方には明かさないでください。

このところ泡坂作品の復刊、そして文庫化は素晴らしいものがありますね。
『泡坂妻夫引退公演』に続き、『曾我佳城全集』も創元推理文庫で
再文庫化されるとの情報もあり、うれしい限り。

そこで前回に続き、ヨギガンジーシリーズを一気読み。
本作は『ヨギガンジーの妖術』で弟子となった不動丸、そして途中から突然合流した
美保子の3名で旅を続けていて、『妖術』を読んでいた方がより楽しめるかも。

『しあわせの書』なる本は何が、しあわせ、なのか。
なぜ死亡したとされる人々が「惟霊講会」に居るのか。

様々な謎が断食中のガンジーの推理から一気に語られる
中盤から終盤にかけての盛り上がりは圧巻。
迷探偵とありますが、いやいや御謙遜を、名探偵ですよ。

ただし、確かにマヌケな面もあるのは否定しません(笑
しかし、しあわせの書の意味が個人的にはツボでしたね、なるほどと(笑



ところで本書にはもうひとつ、筆者ならではのある驚異の「仕掛け」が施されて
いるのですが、それを書くのはナンセンスでしょう。
この「仕掛け」はぜひ皆さんお読み頂いて、筆者の凄さを味わってください。




しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/07/31
  • メディア: 文庫
posted by コースケ at 22:47| Comment(6) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月06日

ヨギ・ガンジーの妖術

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名(酩?迷?)探偵ヨギ ガンジー登場!ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひき、
ロンドンではヨーガを教え、シカゴではすりの実演、東京では医者を相手に催眠術の講義をする、
謎の男ヨギ ガンジー。心霊術、念力術、予言術、枯木術、読心術、分身術、そして遠隔殺人術…。
頭にターバンを巻き、長い白衣を着た正体不明の名探偵が、超常現象としか思えない
不思議な事件の謎に挑む!

泡坂御大作品の復刊と、『引退公演』の文庫刊行が近く
とてつもなく有名だけど、未読のヨギ・ガンジーシリーズを購入しました。
なお、長編2編も購入済みです。
以下、少しネタバレ。



オススメは「王たちの恵み<心霊術>」と「釈尊と悪魔<読心術>」の2編。

前者は募金箱から「誰が」寄付金を盗んだのか?という謎が、
ガンジーにより180度逆転するという傑作。
最初の登場作品なのに、泥棒に間違われているガンジーも面白いです。

後者はガンジーの謎解きもさることながら、霧丸の役者ぶりが良い。
しかし、ガンジーと不動丸のコンビは確かに劇団に向いてそうですね。

それにしてもガンジーは各方面で先生と呼ばれながら、実際に神秘的な力を
持っていないというのを、その人たちも知っているというのが中々に面白い。
ところで名探偵→迷探偵→酩探偵とその表記の変化は当然見逃せません。
私としては、もっと短編で「名探偵」のガンジーの活躍が読みたかったですね。



ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/01/27
  • メディア: 文庫



ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 20:09| Comment(7) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月22日

死者の輪舞

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大観衆に湧く競馬レースの最中、男が刺殺された。偶然居合わせた警視庁特犯課の
新米刑事・小湊進介はベテラン刑事・海方惣稔とともに捜査を開始。
鮮やかな手口からすぐに容疑者の名前が挙がるが、この殺人を皮切りに容疑者が
次から次へと殺されていく殺人リレーがはじまり…果たして真犯人が仕組んだ謎を、
二人は解けるのか?

久しぶりの更新です。
昨年、河出書房が泡坂妻夫作品を3作(「花嫁のさけび」「妖盗S79号」「迷蝶の島」)
が復刊されましたが、なんとそれに続く泡坂作品復刊です。

本書は全く知りませんでした。そして長編。しかも刑事が探偵訳を務める作品とは。

海方の名台詞(?)の「これにてお終い、目出度く千秋楽、ちょんちょんだ」は
本書で何度も何度も登場します(笑

海方はこの殺人が連続殺人、リレー殺人であることに少し気付きながら、
早く解決させたい(捜査が面倒くさいから・笑)ため、上記台詞を多用しているんでしょうねえ。

ただし、立田一圓の「宝くじに当たる以上の確率の」死去は、海方にとっては
自らの考えに疑念を持ったのかもしれませんが。いや、面倒だっただけか(笑

被害者の繋がりに勝畑病院が関係しているのは想像できるのですが、
立田の殺人と、最後のあるどんでん返しがお見事。
ただし、海方と小湊は情けないなあ・・・

次作の『毒薬の輪舞』も4月に発売予定!楽しみです。


死者の輪舞 (河出文庫)

死者の輪舞 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/02/06
  • メディア: 文庫



死者の輪舞 (講談社文庫)

死者の輪舞 (講談社文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: 文庫



死者の輪舞 (講談社文庫)

死者の輪舞 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: Kindle版
posted by コースケ at 01:25| Comment(5) | 泡坂妻夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする