毒殺事件が起きた小樽の龍宮神社で、浅見光彦は偶然、天地龍之介と再会する。
神社では榎本武揚が隕石から作らせた流星刀が公開されていた。
同日、小樽の海岸で他殺体が発見される。
二人は石川啄木を暗示する遺留物から連続殺人を疑うが、
被害者に繋がりは見つからない。やがて、流星刀をめぐる謎の刀匠が浮上するや、
第三の悲劇が!名探偵二人に解けない犯罪の公式はあるのか。
浅見光彦×天地龍之介コラボの第2弾。
今回は榎本武揚が作らせた流星刀を巡る事件。
以下、ややネタバレ。
前作よりも楽しめました。
天地龍之介シリーズというより、浅見光彦シリーズに寄せて書かれてますよね。
『御手洗潔 対 シャーロック・ホームズ』も、その筆致は島田荘司御大やコナン・ドイル
のそれを思わせる、まさにパスティーシュと(個人的に)感じました。
なので、当然のことながら、柄刀先生が内田康夫先生へ敬意を表し、
浅見光彦シリーズに筆致を近づけているのだろうと思います。
シリーズの中では、伝説系になるんですかね。後鳥羽伝説、日蓮伝説とか。
また、本書にはなんと浅見光彦の妹である佐和子が登場します。本当にラストだけですが。
また、『小樽殺人事件』についてもかなり触れられており、鳥羽刑事も登場しますし、
浅見光彦ファンにはうれしい限りではないでしょうか。
物語としては、流星刀を作った刀鍛冶の謎は良かったですね。
名探偵の見せ場である推理ですが、
本当に最初ストーカーについての推理と、細島幸穂の持っていた「遺書」の解釈。
この2つの龍之介の推理は驚愕しました。まさに天才。
後者については、なぜ犯人が「遺書」と思ったのか、それを解き明かすという、
事実を解き明かすより、犯人のある種の勘違いを推理する極めて困難な作業なんですよ。
これを見事に解き明かす、しかも電話越し!いやあ天才の名は伊達ではありません。
光彦も負けてません。石川啄木のミスリードや、例の閃きも魅せます。
最後の謎解きも浅見がしっかり解き明かします。
一方で、光彦は一人の女性(いや二人か?)も救ってますね。
なんかこういうのは本編でもあまりない気がして、珍しく感じました。
山前譲さんの解説によると、本シリーズは内田康夫財団公認
のもとにスタートしたとのこと。
願望ですが、二人の名探偵共演ではなく、浅見光彦シリーズパスティーシュを
先生には執筆してほしいですねえ。

流星のソード 名探偵・浅見光彦VS.天才・天地龍之介 (祥伝社文庫)
- 作者: 柄刀一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2021/01/08
- メディア: 文庫