2024年02月04日

新シャーロック・ホームズの冒険 顔のない男たち

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名コンビが、映画誕生期に起きた怪事件を追う!

ホームズとワトスンが下宿しているベイカー街221Bへ
白髪頭に長く白い顎ひげの依頼人が訪ねてくる。
彼の名はエドワード・マイブリッジ。かつて走る馬の連続写真で時の人となったが、
現在はアメリカから帰国して
細々と講演活動を続けている。何者かに脅迫されていて、講演中、
大きなスクリーンに映写した自身の顔に
不吉な傷がつけられていたり、街路で馬車に轢かれそうになったりした。
犯人の動きを探っていた矢先、不可解な焼死体が見つかったことから、
事件は思わぬ展開を見せ……

ティム・メジャーによる、ホームズパスティーシュ第2弾。
本作は『漱石と倫敦ミイラ』など、実在の人物とホームズ&ワトソンの冒険譚。
エドワード・マイブリッジは実在の写真家、のようです。

連続写真や映画史などに詳しい人が読むと、本作はさらに楽しめるのだろうと
思います。
ホームズ冒険譚としてみると、ワトソンがやたらと僻んでいるなあと言う印象。
ホームズはそんなに秘密主義だったかなあ?
謎解きの場面では、ワトソンに推理を促す行動も見られたりして、
ワトソンの僻みは収まってたようですが・・・

本作ではいわゆる「顔の無い死体」が登場します。これは副題からもなんとなく
想像が付くと思いますが、もう1つ、この副題には意味があります。
人の顔というのは意識して見ていないと、中々覚えていないということ。
そこを上手くミステリに落とし込んでます。

さて、パスティーシュとしての出来はともかく、やはりホームズ冒険譚は短編
が良いなあと改めて思いました(笑)
ここ最近のパスティーシュはほぼ長編が多い印象(もちろん個人的な、です)で、
短編は中々アイデアを活かすのが難しいとかあるんですかねえ。


新シャーロック・ホームズの冒険 顔のない男たち (角川文庫)

新シャーロック・ホームズの冒険 顔のない男たち (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/06/13
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 18:00| Comment(6) | シャーロック・ホームズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月02日

新シャーロック・ホームズの冒険

まずはAmazonさんの紹介ページから。

今度はトリオで謎解き!?

知念実希人さん絶賛!
「誰もが愛した名探偵が霧のロンドンに戻ってきた!
二人の活躍を堪能できる喜びに打ち震えた」

世界中で愛されるシャーロック・ホームズシリーズに新たなパスティーシュ作品が登場!
小説家の創作ノートから本物の殺人事件が生まれ。ホームズが難事件に挑む!

初老の男が服毒による変死を遂げたと新聞で報じられた朝、三十代前半の女性が
ベイカー街221Bへホームズを訪ねてくる。彼女はアビゲイル・ムーンと名乗り、
ダミアン・コリンボーンなる男性の筆名で探偵小説を書いている。
コリンボーンといえば、相棒ワトスンの本棚にも作品が置いてあるほどの売れっ子作家だ。
依頼の内容は、「真犯人に被害者と犯行の手口を盗まれた、自分の無実を証明してほしい」。
彼女は次作に向けてストーリーの構想を練っているところだったが、
昨日ヴォクスホール公園で死んだ男は、被害者として自分が選んだ人物だった。
なぜ変死事件は起きたのか?ホームズとワトスンは調査に乗り出すが……。


新たなホームズパスティーシュが登場しました。
本シリーズ、すでに新作2作は刊行予定とのこと。これは楽しみです。

ホームズを探偵役とした作品群については、これまでも若干私見を書いてきましたが、
本作は、コナン・ドイル財団公認の『絹の家』や『芸術家の血』『眠らぬ亡霊』、
これらの作品よりも遙かにホームズ探偵譚で、本当に楽しめました。

ホームズを探偵とする以上、やはり事件も「聖典」に近い作風・筆致になるのが
妥当なのではないか、と個人的に思います。
もう古典的名作になってしまっているかもしれませんが、
ジューン トムスンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』から始まるパスティーシュ
は素晴らしかったです。また新たにホームズとワトソンの冒険が読めるとは、と。

先に挙げた3作品は、事件の内容やホームズの過去に迫る手法が、私としては
それは違うのではないか、と思っています。ミステリとして優れているかどうかはともかく、
ホームズ冒険譚としては違うだろうと。

今回、この作品、何の事前情報もなく読んだのですが、見事にホームズ冒険譚だなと。
長編『ボスコム渓谷の惨劇』を彷彿とさせる後半などは見事です。

前半はホームズの捜査とワトソンの捜査(?)で読ませつつ、
ホームズ伝記作家の地位を脅かされるアビゲイル・ムーンとの対決(?)もそこかしこに。
とはいえ、後者はワトソンの杞憂でしかなく、訳者あとがきや解説で述べられているよう、
アビゲイル・ムーンの苦悩は、当時の女性の地位を考えるという意味で、興味深かったです。
ヴィクトリア朝の女性がどう生きていくのか、中々考えさせられます。

「聖典」にも優れた女性が数多く登場しますが(ヴァイオレット嬢とか)、
彼女たちが就いている職業は、確かに女性のみというものなのでしょう。

アビゲイル・ムーンはある種果敢にそこに挑戦しようとした、とも読めますが、
彼女の物語からの退場は悲しい場面でした。

事件の謎は、被害者がどう毒を飲まされたのか、そして彼の持っていたメモは何か、の2点。
とにかくホームズ探偵術で解かれていく事件の真相をただただ楽しんでほしいです。
ただ1点。このタイトルはそれ以上に訳しようがなかったのですかね。
原題は何だったか・・・


新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫)

新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/08/24
  • メディア: 文庫




posted by コースケ at 12:08| Comment(9) | シャーロック・ホームズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月28日

シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊

まずはAmazonさんの紹介ページから。

1889年冬。とある名家のマダムと知り合ったホームズとワトスンは、一族の夕食会に招かれた。
だが最後の料理皿の銀蓋を開けると、そこに人間の切断頭部が…。事件調査のため、
一族が暮らすスコットランドの古城にすぐさま向かった二人。その城は幽霊が出ると噂されていて、
何年も前から不審死が相次いでいるようで―。
すべての謎はやがて予想外の結末へ!本格パスティーシュ第2弾。

ポニー・マクバードによるシャーロック・ホームズの冒険譚第2弾。
前作と本作を読んで、なんとなくですが、これらはポニー・マクバードが
シャーロック・ホームズという人物を探偵役に据えて描いた事件で、
ホームズパスティーシュではないのではないか、ということです。

ホームズを探偵役とすれば、パスティーシュあるいはパロディだと
考えるのが当然なのでしょうが、
「芸術家の血」と本作で描かれているホームズは
聖典のホームズとは、違う印象を強く持ちます。

前作も本作もホームズらしからぬミスがあったり、
前作は派手なアクションシーンらしきものがいくつも出てきたり、
本作では、ホームズの語られざる学生時代、しかもそこに
アイリーン・アドラー以上の女性が登場したりと、
聖典からだいぶかけ離れてるなあと。

特に本作では上記の語られざる学生時代の話が、物語の核心でもあるし、
想像を逞しくすれば、ホームズがアイラ・マクラーレンからの依頼を
頑なに受けなかったのも、上記の過去が関係している事は明白ですね。
何よりも事件そのものへの興味から、ホームズは依頼を引き受けるのであって、
邪推かもしれませんが、個人的な事で引き受けないというのも
聖典ではないでしょう。

解説で日暮雅通さんが書かれているように、ホームズがなぜ大学を去ったのか、
女性を避けるようになったのかを、見事に説明している、という捉え方も
あるのでしょうが、うーん、中々に難しい。
シャーロキアンの方々は、本シリーズをどう受け止めているのだろうか。

事件の始まりや、亡霊の出る館の秘密など、それらの謎は中々面白く、
終盤にあかされていくマクラーレン家(当主)の抱えていた秘密と密接に関係してきて、
読み応えがあるのですけどね。
(ただし、エリザベス・マクラーレンの死はよくわからず。)

といいつつも、おそらく三部作最終作も購入して読むはずです(笑



シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

  • 作者: ボニー マクバード
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ジャパン
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: Kindle版
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2018年06月03日

シャーロック・ホームズの蒐集

まずはAmazonさんの紹介ページから。

1927年、アーサー・コナン・ドイルによる最後のシャーロック・ホームズ活躍譚「ショスコム・オールド・プレース」が《ストランド・マガジン》に掲載されて以降も、この不滅の人気を誇る名探偵の贋作は、数多くの作家によって描かれてきた。本書はそれらに連なる最新の傑作である。大英帝国を縦横無尽に駆け巡るホームズと相棒ワトスン博士の〈語られざる事件〉を、世界有数のホームズ・ファンが愛と敬意を込めて作品化した、最高水準のパスティーシュ。六編を収める。

日本屈指のシャーロキアンである北原さん執筆によるホームズパスティーシュがついに登場!
各編の最後に、どの「語られざる事件」なのか記述してあるのが、かっこいい。

オススメは「結ばれた黄色いスカーフの事件」と「ノーフォークの人狼卿の事件」
前者は依頼人には辛い思いをさせましたが、ホームズの解決が実に鮮やか。
そして「オレンジの種五つ」を彷彿とさせる謎めいた犯人からの脅迫も不気味です。
ホラーテイストの強さでは後者。
「バスカヴィル家の犬」や「這う男」を彷彿とさせる不気味さと奇妙な謎から、
ホームズがいかに合理的に謎を解いていくのかが楽しめる一編。

ある種の「らしさ」を感じるのは「詮索好きな老婦人の事件」
ホームズ&ワトソンではなく、老婦人ことホスキンズ夫人の活躍が一番の見せ場。

それにしても、聖典にほんの少ししか出てこない記述から、
いかに物語を膨らませるか、作り込んでいくかを考えると、
北原さん始め、多くのホームズパスティーシュを書かれた作家さんの苦労は
並大抵ではないでしょう。ホームズらしさを失わず、それでいてオリジナリティを
求められるのは、相当の技量が無いとまず書けません。

語られざる事件はまだまだたくさんあります。
北原さんにはぜひそれらの事件も書いてほしいですね。


シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

  • 作者: 北原 尚彦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/03/22
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/03/23
  • メディア: Kindle版
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2018年01月14日

シャーロック・ホームズの栄冠

まずはAmazonさんの紹介ページから。

シャーロック・ホームズ――作家アーサー・コナン・ドイルが生み出した紙上の登場人物にして、世界中の人々を惹きつけてやまない名探偵の代名詞である。彼の活躍はドイル自身の手も離れて、初登場から130年も経った今なお、数多くの新たな冒険譚が語り続けられている。著名な推理作家による本邦初訳の一品から異色作家による珍品まで、星の数ほどある“知られざる"冒険譚のなかから選び抜いた類稀なるホームズ・アンソロジー。

ホームズアンソロジーは星の数ほどあれど、それが文庫化するというのは極めて稀です。
本書も2007年発売から10年の時を経て、文庫化されました。
しかし、それだけ内容は非常に充実しています。
特に本当に失われた物語のようなものまで採録されていて、
シャーロキアンならずとも、ミステリ好きにはとても充実した時間をプレゼントしてくれます。

やはり一番のオススメは「一等車の秘密」。
謎から解決までが極めて鮮やかかつまさにホームズそのもの。
変わり種として「シャーロック・ホームズなんか怖くない」
ホームズという名前の偉大さと、警察の対応を逆手に取った見事な作品。

海外では多くパスティーシュやパロディが編まれるホームズ作品。
日本でもぜひ次々と刊行されてほしいものです。


シャーロック・ホームズの栄冠 (創元推理文庫)

シャーロック・ホームズの栄冠 (創元推理文庫)

  • 作者: ロナルド・A・ノックス
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/11/30
  • メディア: 文庫
posted by コースケ at 00:22| Comment(6) | シャーロック・ホームズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血

まずはAmazonさんの紹介ページから。

1888年。はじまりは、ベイカー街221Bに舞い込んだ1通の手紙――
ホームズ × ワトスン、知られざるもうひとつの事件!

ベイカー街221Bにパリから1通の手紙が届いた。 二重仕掛けになった文面には、
失踪した10歳の息子を捜してほしいという 切羽詰まった女性の訴えが。
子供の父親が別件で美術品窃盗の疑いがある曰くつきの伯爵と知り、
ホームズとワトスンは一路パリへ。すぐにこれがただの失踪事件ではないと気づき――
子供の失踪と国際的な美術品窃盗、その周囲ではびこる謎の連続殺人。
全ての事件はやがて繋がりを見せる!

ホームズパスティーシュの一作。
1888年のホームズの語られざる事件。

マイクロフトとフランス人女優の二人から事件を依頼されるホームズ。
美術品窃盗と子どもの失踪という2つの事件、はたしてどう関係するのか?

本作ではホームズがまさに「瀕死の探偵」になる場面が描かれます。
あの時のホームズは少しばかり焦りすぎたように見えましたねえ。

事件はかなり奇妙で、果たして誰が犯人なのか、それが最後まで
見えない所がとてもおもしろい。
依頼人やフランス人探偵にも翻弄されてしまうホームズ。
それは依頼人にやや惹かれているからなのかもしれないですね。

ところで、物語終盤で、子どもがなぜ「失踪」したのか語られるのですが、
これが『絹の家』を思い起こさせました。
それにしても奇しくも類似の話とは・・・ちょっと興ざめしてしまいました。
あくまで個人的ですけど。

解説の日暮氏によれば、本シリーズは三部作とのこと。
果たしてどういう終わりを見せるのか。気が早いですが、
楽しみです。


シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血 (ハーパーBOOKS)

シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血 (ハーパーBOOKS)

  • 作者: ボニー・マクバード
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2016/10/25
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血 (ハーパーBOOKS)

シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血 (ハーパーBOOKS)

  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ジャパン
  • 発売日: 2016/10/20
  • メディア: Kindle版
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2015年11月28日

シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち 2

最近ホームズものが多いですが、やっぱりホームズはおもしろい!
1に続いて購入しました。内容的には2の方がオススメ。

最初にAmazonさんの紹介ページから。

ホームズ・パスティーシュの新機軸、その後編。
ドイルの同時代人、E・W・ホーナングが生んだ紳士泥棒A・J・ラッフルズとの知恵比べ、
地下鉄の工事現場に夜な夜な現れるミイラ男の怪。
ホームズがタバコ入れとしている“ペルシャ製スリッパー”の謎が明かされ、
あのH・G・ウェルズが登場する。そこはなんと、“宇宙戦争後”の世界なのだ!
エリック・ブラウン、リチャード・ディニック、マーク・ライトら、
俊英が妄想力と遊び心を詰め込んだ奇想天外な8編。お楽しみあれ。

「閉ざされた客室」と「ハドソン夫人は大忙し」の2編がオススメ。
前者は正典を彷彿とさせる物語で、ホームズ、ワトソンともに活き活きとしています。
いわゆる奇妙な謎や不可解な事から物語が始まるのが、ホームズものの特徴の1つだと
思いますが、本書はその点は若干弱いかもしれません。

しかし内容的には十分おもしろい。密室の謎や被害者に残された100ポンド近い
現金等々・・・

後者はホームズが解決したと言われている事件は、実はハドソン夫人が
解決していたという、パスティーシュ。
この物語に出て来るホームズとワトソンは実に滑稽に描かれていて、
それだけでも楽しめます。
ハドソン夫人の捜査方法が拝めるのは必読です(笑

海外では多く出されるホームズパスティーシュ。日本でも翻訳、そして
文庫化を改めて御願いしたい。



シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち 2 (扶桑社ミステリー)

シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち 2 (扶桑社ミステリー)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2015/11/01
  • メディア: 文庫
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2015年11月18日

シャーロック・ホームズ 絹の家

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ホームズの下を相談に訪れた美術商の男。アメリカである事件に巻きこれまて以来、
不審な男の影に怯えていると言う。ホームズは、ベイカー街別働隊の少年達に捜査を手伝わせるが、
その中の1人が惨殺死体となって発見される。手がかりは、死体の手首に巻き付けられた絹のリボンと、
捜査のうちに浮上する「絹の家」という言葉…。
ワトスンが残した新たなホームズの活躍と、戦慄の事件の真相とは?

コナン・ドイル財団公認という、まさに「正典」の続編を与えられた作品です。
年老いたワトソンが事件を回顧し、お馴染みのチャリング・クロスにあるコックス銀行に預けられている
原稿という所から、物語は始まります。

ホームズというと、やはり短編がおもしろいと想いますし、
これまで無数に出ているパスティーシュやパロディも大半は短編でした。
しかし、本作は「恐怖の谷」以来の長編作品で、さてどうかなあと思いつつ読み始めました。

本作のホームズは監獄に入ってからはめまぐるしい活躍ですが、
それまでの行動がちょっと残念な印象です。

ある人物から、(警告ではなく)暴いてほしいという意味で送られた「絹のリボン」に
気付くのがちょっと遅かったり、手掛かりが全くなく、直感で動いたり。

新聞広告で大々的に挑戦状を叩き付けるのはさすがだと思いましたが、
その後がいくらなんでも簡単に罠にかかりすぎでは・・・しかも少女を犠牲にしてしまって
ますしね。ここはホームズらしくない。

それと、マイクロフトが「絹の家」を全く知らないというのも、ちょっと不思議ですね。
彼はある意味では政府そのものではなかったか、と。

ところで、事件そのものは「絹の家」は人によっては受け付けない、ホームズものではない、
と思われる方も多いと思います。
ただ最初のカーステアーズが持ち込んだ事件と「絹の家」事件、
双方の関係には驚きました。
ベイカー街別働隊のロスが一体何を見たのか?ここに全ての謎が収斂されているのです。

次作も長編のようですが、ぜひ作者には短編も書いてもらいたいですね。


シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2015/10/25
  • メディア: Kindle版
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2015年06月13日

シャーロック・ホームズ 恐怖!獣人モロー軍団

まずはAmazonさんの紹介ページから。

“神の息吹殺人事件”の解決後まもなく、シャーロックのもとに兄マイクロフト・ホームズが現れる。
表向きは政府の役人だが、実は重要なポストについているマイクロフトは、
天才的な生理学者チャールズ・モロー博士と彼にまつわる奇想天外な話を語りだした。
残虐な動物実験が公となり学界を追放されたモローは、
マイクロフトの申し出で南海の孤島で新たな実験に取り組んでいたが、8年前に音信不通となる。
一方、海難事故に遭った若者プレンディックは、流れ着いた島でモローの生体実験によって
作られた獣と人間のハイブリッドを目撃していた。
ロザハイスで発見された動物に噛み殺された死体から、
モローがロンドンに舞い戻ったと危惧するマイクロフトは、
シャーロックに真相の解明を依頼するが…。

前作「神の息吹」も読みましたが、そちらはまだホームズさを残していたかなと
思います。
ただ本作はホームズパスティーシュとしてはぶっ飛びすぎという印象。
おそらくたくさんあるとは思うのですよ、そうした作品は。
個人的には、いわゆる「聖典」のような、物語が好きなので、
本シリーズにそれを望むのはなかなか難しいとは思いますが・・・

クライマックス部分はワトソン一人称の語りでなく、
様々な人物からの視点で描かれていて、ここは結構おもしろい。

後、本作というか本シリーズをさらに楽しむには、
登場する作品を読んでないと無理だなと思いました。
本作でいえば「モロー博士の島」(H・G・ウェルズ著)は必読でしょう。

ところで次作は出ているのか、どうなんでしょうね。
なんだかんだと購入している未来が見えます(笑


シャーロック・ホームズ 恐怖!獣人モロー軍団 (竹書房文庫)

シャーロック・ホームズ 恐怖!獣人モロー軍団 (竹書房文庫)

  • 作者: ガイ・アダムス
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズ 恐怖!獣人モロー軍団 (竹書房文庫)

シャーロック・ホームズ 恐怖!獣人モロー軍団 (竹書房文庫)

  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: Kindle版
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2014年10月22日

シャーロック・ホームズ 神の息吹殺人事件

まずはAmazonさんの紹介ページから。

新世紀の幕開け直前のロンドン。人々を恐怖させ、大混乱に陥れたその事件は、
宵のうちから降りだした雪が風に舞うなかで始まった。
翌朝、一人の男の死体が発見された―体中の骨が砕け、青あざだらけで膨張した、見るも無惨なもの。
しかし、周囲には足跡ひとつなく、ましてや凶器もなかった。
まるで空気、いや“神の息吹”に殺されたかのようだった…。
このあまりにも“不自然な死体”の謎がシャーロック・ホームズのもとに持ち込まれた。
相談にやってきたのは、“心霊医師”の異名をとるジョン・サイレンス博士。
うさんくさげな人物に難色を示すシャーロックだったが、
「事件はこれだけでは終わらない」、と告げられ相棒のワトソンと共に、
“神の息吹”の謎を解明すべく行動を開始する。
それはロンドン中を巻き込む、大事件の始まりだった…。

ホームズのパスティーシュものは単行本等では結構出ているかと
思いますが、文庫化までいくのはあまりないと個人的に思っています。

創元推理文庫のジューン・トムスンの一連のシリーズは非常に有名だと
思いますが、それ以外だとなかなかないですね。

本書作者のガイ・アダムス氏は、スペイン在住の俳優経験もある方との事。
すでに第2作目も上梓されているようです。

本作はかなりオカルト色が強い作品になっています。
ワトソンが体験する「経験」はどう読んでもオカルト的解決しかないんじゃないか
と思ってました(笑
ホームズがいかにそれを合理的に解決していくのか、が物語の見せ場です。

ただ、本書を読んで思ったのは、
ホームズものは短編の方がおもしろいのかなという印象。

いわゆる聖典は別として、トムスンのように「語られざる事件」を
短編集形式が良いのかなあ。

本作は同じような現象を結構引っ張って引っ張って、
最後はあっさりな感じで、やや拍子抜け。
ラストに名台詞はでるものの、オカルトか合理的かはやや
ホームズ自身も中途半端です。

この中途半端さは、おそらくは実在の人物を
物語に登場させたことも一因にあるのかもしれませんねえ。

第2作も翻訳されて出版されたら読む予定です。


シャーロック・ホームズ 神の息吹殺人事件 (竹書房文庫)

シャーロック・ホームズ 神の息吹殺人事件 (竹書房文庫)

  • 作者: ガイ・アダムス
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: 文庫
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