まずはAmazonさんの紹介ページから。
高校生になった滝本望は変わらず祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。
お蔦さんと呼ばれる祖母はご近所衆から頼られる人気者だ。
その日、お蔦さんが踊りの稽古をみている、若手芸妓・都姐さんが寿退職することに。
けれど「これ以上迷惑はかけられないし」と都姐さんの表情は冴えなくて……。
神楽坂を騒がす事件をお蔦さんが痛快に解決していく! 人情と粋、
望が作る美味しい料理がたっぷり味わえる、大好評シリーズ第三弾。
以下、ややネタバレ。
前作「いつもが消えた日」をアップしたのが2016年なので、
3年ぶりになります。
望も気付けば高校生。楓との仲は進展するのか?
オススメは「百合の真雁」
常に頼りなく、どことなく不安を感じさせる叔父の泰介が、
実は結構有名な画家であることや、大半の作品では情けない姿しか
描かれない(失礼!)イメージですが、本作は中々の活躍(?)
絵画の真雁によって再燃した遺産相続問題が物語の本筋。
解決の仕方がとても素晴らしく、単に贋作と伝えるだけでなく、
そこには兄弟姉妹の仲も取り持つ、本シリーズのもつ人情味あふれる解決です。
また、なぜ贋作なのかの理由も、(芸術を生業としている人にとっては)
当たり前の感覚なのかもしれませんが、新藤省燕先生の語る話がまた良いのです。
表題作は少し重い話も入り、神楽坂の花柳界存亡にかかわる事件が起きるのですが、
最後は見事にご意見番たちの活躍もあり丸く収まります。
「四月のサンタクロース」や「三つ子花火」はいずれも家庭内、特に夫婦の問題
から端を発する物語ですが、いずれもお蔦さん(+奉介おじさん)の名推理ならぬ名裁きで
物語を大団円へと導きます。
神楽坂だからこそ残る粋や人情、ではなく、昔は町内に一人や二人、
お蔦さんのようなご意見番や仲裁役が居て、そして町内もコミュニティとして
本作の登場人物たちのように、まとまりがあったのだろうなと感じました。
特に「三つ子花火」は現代社会でも日々起こっている問題でもあり、
お蔦さんがどこにでも居てくれたらなあと、なんだか物語を離れて
色々と考えてしまいました。
本作は時間軸は望が成長していることからも少しずつ時計の針は進んでいます。
今度は彼の大学進学を巡る頃の物語になるのでしょうか。
2019年10月16日
2016年09月11日
いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記
まずはAmazonさんの紹介ページから。
中学三年生の滝本望は祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。
芸者時代の名前でお蔦さんと呼ばれる祖母は、粋で気が強く、ご近所衆から頼られる人気者だ。
後輩の有斗が望の幼なじみとともに滝本家へ遊びに訪れた夜、
息子ひとり残して有斗の家族は姿を消していた―。
神楽坂で起きた事件にお蔦さんが立ち上がる!粋と人情、
望が作る美味しい料理が堪能できるシリーズ第二弾。
シリーズ第二弾。
まず驚いたのが、長編だったこと。
前作同様、連作短編集と思ったのですが、これは予想外。
前作同様に楽しめるのは、望が作る様々な料理の数々。
学校行きながら、美術部入っていて、毎日よく作れるよなあ(笑
今回は楓との話はほとんど登場しません。
神楽坂という「街」の持つ、優しさを描いた作品ではないでしょうか。
ただそれも、お蔦さんのこれまでの経験がモノを言うからですねえ。
事件自体は殺人事件が起きる、これも「日常の謎」シリーズかと
思いきやの予想外をかましてくれますが、物語の本質は、
事件そのものよりも、上記述べた神楽坂の「街」がメインなのだと
やはり(個人的には)思いました。
その意味では、やはり神楽坂を舞台に、「日常の謎」が
本作で読んでみたいなあと思います。

中学三年生の滝本望は祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。
芸者時代の名前でお蔦さんと呼ばれる祖母は、粋で気が強く、ご近所衆から頼られる人気者だ。
後輩の有斗が望の幼なじみとともに滝本家へ遊びに訪れた夜、
息子ひとり残して有斗の家族は姿を消していた―。
神楽坂で起きた事件にお蔦さんが立ち上がる!粋と人情、
望が作る美味しい料理が堪能できるシリーズ第二弾。
シリーズ第二弾。
まず驚いたのが、長編だったこと。
前作同様、連作短編集と思ったのですが、これは予想外。
前作同様に楽しめるのは、望が作る様々な料理の数々。
学校行きながら、美術部入っていて、毎日よく作れるよなあ(笑
今回は楓との話はほとんど登場しません。
神楽坂という「街」の持つ、優しさを描いた作品ではないでしょうか。
ただそれも、お蔦さんのこれまでの経験がモノを言うからですねえ。
事件自体は殺人事件が起きる、これも「日常の謎」シリーズかと
思いきやの予想外をかましてくれますが、物語の本質は、
事件そのものよりも、上記述べた神楽坂の「街」がメインなのだと
やはり(個人的には)思いました。
その意味では、やはり神楽坂を舞台に、「日常の謎」が
本作で読んでみたいなあと思います。

いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)
- 作者: 西條 奈加
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2016/08/20
- メディア: 文庫
2013年10月30日
無花果の実のなるころに お蔦さんの神楽坂日記
まずはAmazonさんの紹介ページから。
お蔦さんは僕のおばあちゃんだ。もと芸者でいまでも粋なお蔦さんは、
面倒くさがりなのに何かと人に頼られる人気者だ。そんな祖母と僕は神楽坂で暮らしているけれど、
幼なじみが蹴とばし魔として捕まったり、ご近所衆が振り込め詐欺に遭ったり、
ふたり暮らしの日々はいつも騒がしい。
神楽坂界隈で起こる事件をお蔦さんが痛快に解決する!
あたたかな人情と情緒あふれる作品集。
神楽坂を舞台に、まさに「人情」と「情緒」あふれるミステリ。
お蔦さんのキャラと望の料理が大半を占める作品です(笑
日常の謎ではなく、ちょっと傷害事件も起こったりするのですが、
それを感じさせないのは、舞台設定と主人公お蔦さんの性格に
拠る所が大きいのではないでしょうか。
望も少しずつですが成長していく過程が描かれ、
ある事件では大きな決断をする事になります。
本書表題作から物語は大きく変わるのがポイント。
「乾蝉丸」や突然現れた少女・楓の存在。
この2つの謎は最後に解き明かされます。
学園祭や望の恋やら青春モノとしても楽しめたり、
最初に書いたように料理好きにも堪らない一冊ではないでしょうか。
お蔦さんは僕のおばあちゃんだ。もと芸者でいまでも粋なお蔦さんは、
面倒くさがりなのに何かと人に頼られる人気者だ。そんな祖母と僕は神楽坂で暮らしているけれど、
幼なじみが蹴とばし魔として捕まったり、ご近所衆が振り込め詐欺に遭ったり、
ふたり暮らしの日々はいつも騒がしい。
神楽坂界隈で起こる事件をお蔦さんが痛快に解決する!
あたたかな人情と情緒あふれる作品集。
神楽坂を舞台に、まさに「人情」と「情緒」あふれるミステリ。
お蔦さんのキャラと望の料理が大半を占める作品です(笑
日常の謎ではなく、ちょっと傷害事件も起こったりするのですが、
それを感じさせないのは、舞台設定と主人公お蔦さんの性格に
拠る所が大きいのではないでしょうか。
望も少しずつですが成長していく過程が描かれ、
ある事件では大きな決断をする事になります。
本書表題作から物語は大きく変わるのがポイント。
「乾蝉丸」や突然現れた少女・楓の存在。
この2つの謎は最後に解き明かされます。
学園祭や望の恋やら青春モノとしても楽しめたり、
最初に書いたように料理好きにも堪らない一冊ではないでしょうか。

無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)
- 作者: 西條 奈加
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/09/20
- メディア: 文庫