少年だけが、全てを見ていた……
帆村財閥の異端児・建夫が葉山に設立した私設宝石博物館――収蔵品の剣・銃・斧を使い、
長女・光枝の三人の恋人候補が次々殺されていく。
「なぜ三重密室を作らねばならなかったか?」Why(理由)
を問うユニークな“密室動機講義”から導かれる、
仰天の真相とは? 昭和が終わった年/新本格勃興期、新書ミステリの雄が放った、
稚気と本格推理への愛全開の熱き挑戦状(ラブレター)。
解説 今村昌弘
イラスト やまがみ彩
梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション3として発売された本作。
帯に大陸書房版の著者のことばが掲載されています。
「断っておこう。これは密室それ自体で、読者に挑戦しようというものではない。その背後
の或ることで、挑戦しようというのだ。もちろん、そのためには、やはり密室を解かなければ
ならないという、逆説も成り立つのだが・・・。」
結構なネタバレになっているのが面白い(笑
しかも、本作の発売は1989年。『十角館の殺人』刊行が1987年。
つまり、新本格ムーヴメントが始まっていた時で、しかも「館」です。
梶先生が『十角館』を読まれたかわかりませんが、この『葉山宝石館』は
「館」とありながら、非常に良い意味で、『館』ミステリの裏切りをしています。
密室、縛られた足、藁の十字架・・・本格ないし新本格の要素を詰め込みながら、
見事なミスリードを書くとは・・・素晴らしい。
ただし、犯人の正体はある程度予想は付くのではないかと思います。
後、捜査する警察が異常に有能です(笑)
少年の日記を入れているところで、最後にもう1回どんでん返しトリックを
仕込んでいるのも、流石です。
梶先生の作品はまだまだあるのですが、徳間文庫からはひとまず終了なのかなあ。
どうせなら一気に復刊をどうかお願いします。

梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション3 葉山宝石館の惨劇 (徳間文庫)
- 作者: 梶龍雄
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2023/08/08
- メディア: 文庫