2023年05月21日

名探偵のはらわた

まずはAmazonさんの紹介ページから。

史上最強の名探偵VS.史上最凶の殺人鬼たち! シリーズ新刊『名探偵のいけにえ』が
「2023本格ミステリ・ベスト10」ぶっちぎりの1位獲得! 怒濤の多重解決・どんでん返しに陶酔する
全ミステリファン必読の圧倒的傑作!!
「亘くん、きみは真実を語るべきだ」農薬コーラ毒殺魔、局部切断女、そして恐怖の三十人殺し! 
昭和史に残る極悪犯罪者たちが地獄の淵からよみがえり、現代日本で殺戮の限りを尽くす。
空前絶後の惨劇に立ち上がった伝説の名探偵は、推理の力でこの悪夢を止められるのか? 
「疑え――そして真実を見抜け」二度読み必至の鮮やかな伏線回収、
緻密なロジックによる美しき多重解決。本格ミステリの神髄、ここにあり。(解説・若林踏)

久しぶりの更新です。

白井さんの作品は初めて読みます。
解説にあるように、スプラッター的要素が強そうな(タイトル)だなあと(笑)
今まで手に取ってきませんでした。
しかし本書は、解説を読んだところそこまででもないようなので、試しに購入。

コミックやラノベなどで、星の数ほどある特殊設定ミステリですが、
その本質は、紛れもなく超一級の本格ミステリです。
連作ミステリではありますが、このタイトルの伏線も良いですね。
「神咒寺事件」でみせる、原田亘の推理から始まり、
最終話「津ヶ山事件」で魅せる、はらわたの推理。
ここで「名探偵のはらわた」が誕生するわけです。

特殊設定と書きましたが、最初の「神咒寺事件」だけは、特殊設定下ではなく、
純粋に新本格の謎解きになっていて、やはり一番好きです。
はらわたが名探偵になる際、助手を務めていた浦野灸の言葉を思い出すのがよい。
古城倫道ではないのです(笑)

そのため、第1話で浦野探偵が退場するのは非常に残念でした。
その後の特殊設定ミステリのためには退場してもらうしかなかったとは思いますが、
彼とはらわたコンビの活躍をもっと読みたかったですね。

たぶんそういう考えを持ってしまうと言う事は、特殊設定ミステリがあまり私は
好きではないんだろうな(苦笑

本作では<追儺>、節分とかで鬼を払う行事ですね、これの逆<召儺>というのが
行われたことで、かつて猟奇的あるいは大量殺人を犯した犯人達が
現世に甦る、という特殊設定が登場します。

この設定を最大限活かしているのは「毒入りコーラ事件」でしょう。
本作はある種の密室トリックで、犯人がどう事件現場を出たのかを、
この特殊設定を用いて行っています。
これは純粋になるほどと唸りました。

本書はいずれも多重解決という構成になっています。
さらっと書いてますが、これはかなり緻密かつ見事な伏線の張り方です。
最終話の多重解決は圧巻そのもの。
遙か昔に書かれた手記から、手掛かりを見つけ出すはらわたもすごいですが、
この推理合戦ともいうべきところは本書でも最大の読み場ではないでしょうか。

『名探偵のいけにえ』も早く手に取りたいですね。


名探偵のはらわた(新潮文庫)

名探偵のはらわた(新潮文庫)

  • 作者: 白井智之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/02/25
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 18:10| Comment(5) | 白井智之 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする