2024年06月23日

雷神

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、
娘の夕見から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、
痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。(解説・香山二三郎)

超が付くほど久しぶりに道尾秀介先生の作品を読みました。
デビュー作『背の眼』に始まる真備庄介シリーズは読んでいたのですが、
ノンシリーズはほとんどでした。
たまたまオススメに出てきて、購入。

最初のミスリードが秀逸。この「勘違い」は主人公はおろか、読者も見抜けないでしょう。
しかも、この「勘違い」から物語が始まるという、何とも天の配剤ともいうべき所業。

彩根のいう、「少しの不運が、殺意を殺人に変えてしまう」という台詞も考えさせられます。
この物語でいう「少しの不運」とは何かを考える幸人ですが、そこに答えは見いだせない。

ミステリ的にみると、羽田上村の殺人事件は警察が少し無能な気がしましたね(笑
村中捜索しないとねえ・・・
犯人が誰なのかは本気でわかりませんでした(汗)
一方で、動機がかなりぼやかしてあるというか、亜沙実と幸人の母親がなぜ亡くなったのか、
最後まで(直接的な)描写はなく、亜沙実に伝えた遺言や父親との最後の会話など、
若干曖昧さが残るところがあるなあと感じました。

物語としては実は結局何も解決しておらず、幸人は夕見とこの謎をずっと抱えていくのと、
幸人は夕見には語れない、最初のミスリードの真実も抱えていくことになり、
それを共有できうる姉の死去で、辛い立場にさらに追い込まれていくのが、なんとも。

犯人の復讐は果たせた(と思っている)ものの、加害者側(とされる)が罪の意識などに
さいなまれることもなく、というのもややモヤモヤが残りますね。

この「神」シリーズ、第3弾のようで、前の2作もそのうち購入しようかと。





雷神(新潮文庫)

雷神(新潮文庫)

  • 作者: 道尾秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/02/28
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 17:58| Comment(1) | 道尾秀介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする