まずはAmazonさんの紹介ページから。
「これだから小説は面白い。」道尾秀介、お墨付き!
棺から消えた当主の遺体、天狗の毒矢、山奥の怪事件に秘められた“ありえない”規格外の“謎”
全ミステリファン瞠目の「新潮ミステリー大賞の隠し玉」
ヤンデレな恋人・翠に、婚約者として無理やり連れていかれた彼女の実家は、
山奥に立つ霊是(りょうぜ)一族の“天狗屋敷”だった。失踪した当主の遺言状開封、
莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。
奇怪な難事件を次々と解き明かすのは、あやしい「何でも屋」さん!?
「いつかまた会えたらいいね」――夏が来るたび思い出す、
あの陰惨な事件と、彼女の涙を。横溝正史へのオマージュに満ちた、ミステリの怪作。
「分からんのか? つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
以下、ややネタバレです。
「分からんのか?つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
この台詞に惹かれて購入しました(笑
犬神家状態!それで通じるのがミステリ好きという。
「新潮ミステリー大賞」というのは初めて知りました。
もう10年ですから、そこそこの歴史ですよね。
本書は、2023年の第10回の最終候補(つまり大賞受賞作品ではない)ものを
文庫で刊行されたという、(社内でどういう協議がされたのか不明ですが)
中々すごいですね。
ワトソン役である古賀鳴海の彼女である平澤翠。今度本家にて、遺産相続にかかる
遺言書が開封されるという。鳴海のバイト先である<なんでも屋>樋山忍も、
上記の台詞を発し、適当な理由をつけて同行することに。
遺言書が開封された後に起こる奇怪な殺人事件。
果たして犯人は?
という感じでしょうか(苦笑・すいません)
まず、翠という女性の方が怖い(笑)
鳴海にかつての自分が体験(やったであろうこと)を語るのですが、それがあるとしても、
行動が恐ろしい。最後は幸せな姿を鳴海と忍に見せてくれるのですが、
夫となる方は、やっていけるのかなあ・・・
(事件解決後に、雰囲気が変わった描写はありますが)
横溝正史先生へのオマージュにあふれたとありますが、
それはこの旧家の霊是家と遺言書。トリックは島田荘司御大の奇想天外・大がかりなトリック
へのオマージュだと思います。
ただし、このトリックは犯人の告白を読めば「プロバビリティ-の犯罪」であることが
判明します。ここは結構捻ってるなあと思いました。
問題なのは、このトリックは詳しく説明されているのですが、図がないのが致命的。
2つめの殺人のトリックは、絵図付き解説がないと、かなり難解(というかわからん)。
犯人はほぼ(アリバイは考えずとも)分かると思います。
動機はあれだろうと見当が付くので。
ところがこれも動機という面では、強固かと思いきや、犯人の告白では全然動機も
実は無いというオチ。
(だからこその「プロバビリティーの犯罪」なのですが)。
次は「7人ミサキ連続殺人事件」だそうなので(タイトル的に興味深い・笑)、
こちらも、もし刊行されたら読んで見たいと思います。