2025年01月01日

名探偵は誰だ

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「ホテルの客で唯一、自分を殺そうとしていないのは?」「一人暮らしの老婦人を始末しようとしているのは?」
「伝説の殺し屋のターゲットは?」「雪の山荘が爆破される緊急事態に生き残ったのは?」
「画廊に現れた《怪盗万華鏡》の正体は?」……。新本格ミステリの名手が贈る、
トリックとロジックとサプライズに満ちあふれたフーダニット7編。(解説・若林踏)

本年もどうぞよろしくお願いします。
犯人当てではない、ミステリといえば、パット・マガーの『被害者を探せ!』『探偵を探せ!』『七人のおば』
挙げればきりがありませんが、やはりマガーの作品群は色あせません。

芦辺さんの本作も当然ながらマガー作品を踏まえた上で、様々な切り口から我々を楽しませてくれます。
個人的愁眉は、第5話の「生き残ったのは誰だ?」。
解説にあるように、「雪の山荘が爆破される緊急事態に生き残ったのは?」というのを明らかにするのですが、
いわゆる本格の舞台装置を逆手に取った名作。
なるほど、関係者を一堂に会するの意味も、大きく(思っていたのと)違い、いやいや、素晴らしい短編です。

最初の「犯人以外を当てる」のは、読者も解けるようになっています。容疑者の会話から
果たして皆さん見つけることができるでしょうか?

ところで、パット・マガーのWikipediaでは、上記に挙げた作品は「変格推理」に分類されていて、
そういう分類あるんだろうかと、少し気になりました。

名探偵は誰だ (光文社文庫 あ 36-10) - 芦辺拓
名探偵は誰だ (光文社文庫 あ 36-10) - 芦辺拓
名探偵は誰だ (光文社文庫) [ 芦辺拓 ] - 楽天ブックス
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2024年12月31日

ぼくの「このミス」2024

更新が止まってました。
新型コロナウイルス感染症に罹患しまして、現在まだまだ戦っております。
多少動けるようになったので、最後の締めくくり記事を。

大倉崇裕『福家警部補の考察』
倒叙ミステリの進化を感じる一冊。
「上品な魔女」と「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」は
傑作でしょう。
福家警部補の考察 福家警部補シリーズ (創元推理文庫) - 大倉 崇裕
福家警部補の考察 福家警部補シリーズ (創元推理文庫) - 大倉 崇裕
福家警部補の考察 (創元推理文庫) [ 大倉 崇裕 ] - 楽天ブックス
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戸坂康二『楽屋の蟹ー中村雅楽と日常の謎』
「日常の謎」を定着化させたのは、北村薫先生。
しかし、そうしたジャンルを開拓したのは間違いなく戸坂康二先生。
超有名でも、やはり「團十郎切腹事件」「グリーン車の子供」は必読です。
楽屋の蟹: 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) - 戸板 康二, 新保 博久
楽屋の蟹: 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) - 戸板 康二, 新保 博久
楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) [ 戸板 康二 ] - 楽天ブックス
楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) [ 戸板 康二 ] - 楽天ブックス

アントニイ・バークリー『最上階の殺人』
迷探偵?いやいや名探偵ロジャー・シェリンガムの大胆なる推理と行動、
その全てをご堪能あれ!
最上階の殺人 (創元推理文庫) - アントニイ・バークリー, 藤村 裕美
最上階の殺人 (創元推理文庫) - アントニイ・バークリー, 藤村 裕美
最上階の殺人 (創元推理文庫) [ アントニイ・バークリー ] - 楽天ブックス
最上階の殺人 (創元推理文庫) [ アントニイ・バークリー ] - 楽天ブックス

赤川次郎『キネマの天使 メロドラマの日』
相変わらずのユーモア・ミステリは本シリーズではまだまだ健在。これからも私たちを楽しませてください。
キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫) - 赤川次郎
キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫) - 赤川次郎
キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫) [ 赤川 次郎 ] - 楽天ブックス
キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫) [ 赤川 次郎 ] - 楽天ブックス

みなさま、良いお年をお迎えください。

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2024年12月24日

雪山山荘殺人事件

『少年サンデー』名探偵コナン全事件レポート編纂室よりのご紹介。

小五郎達は雪山で医大教授、大山の別荘へと招かれる。彼の教室員達と鍋を囲んだあと、
大山は席を立ち、そのまま戻らなかった。テレビを見ていた部屋で殺されていたのだ。部屋は荒らされ、
金庫にはこじ開けようとした形跡があった。また、大山がロープで縛られていた事からも強盗のしわざと判断する小五郎。
だが、金目の物が盗られていない事に着目するコナン。さらに正座して絶命した死体、不自然にとぎれた血痕がついたテーブルクロスなど、
不審な点が見つかり、内部犯の疑いが出てきた。雪山の別荘に隠された複雑なトリックにコナンが挑む!

以下、ネタバレ。




というわけで、クリスマスにちなんだミステリを紹介するこの日。
かつて読んでいた『名探偵コナン』からの紹介になります。

この話、正確にはクリスマスなのか記憶がないのですが(苦笑
YouTubeでウインターセレクションと題し、数日前から配信されていますので、
冬なのは間違いない。というわけでご勘弁ください。

この事件はアリバイ崩し&ダイイングメッセージがテーマです。
前者は結構きついんですよね。小五郎が「いくらでしたか?レシートは?」など問い詰めたりしますが、
これは偽のアリバイ作りとしては弱いですよねえ。
アイスが無いなんて、あり得ないからなあ。溶けさせたのも計画的犯行としては稚拙すぎる。

むしろ被害者があんな苦しい殺し方をされて、非常に苦しい状況で、
よくあのダイイングメッセージを遺したなという印象が強い。
あれを見破ったコナンは流石の一言。

というわけで皆様、素敵なクリスマス・イヴを過ごしてください。

名探偵コナン(10) (少年サンデーコミックス) - 青山剛昌
名探偵コナン(10) (少年サンデーコミックス) - 青山剛昌
名探偵コナン(11) (少年サンデーコミックス) - 青山剛昌
名探偵コナン(11) (少年サンデーコミックス) - 青山剛昌

名探偵コナン 10 (少年サンデーコミックス) [ 青山 剛昌 ] - 楽天ブックス
名探偵コナン 10 (少年サンデーコミックス) [ 青山 剛昌 ] - 楽天ブックス
名探偵コナン 11 (少年サンデーコミックス) [ 青山 剛昌 ] - 楽天ブックス
名探偵コナン 11 (少年サンデーコミックス) [ 青山 剛昌 ] - 楽天ブックス
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2024年12月21日

闇に消えた男-フリーライター・新城誠の事件簿

まずはAmazonさんの紹介ページから。

富豪の家に生まれたノンフィクション作家はどこへ何故消えた――?

断崖絶壁に建つ武家屋敷から一族が忽然と姿を消した「消失屋敷」の殺人事件で出会ったフリーライターの新城誠と
文芸評論社の編集者・中島好美。その二人にまた不可解な人間消失事件が起こった。念入りな取材を重ねることで知られる
ノンフィクション作家が失踪したと、捜索を依頼してきたのは、その作家の妻だった。新城は聞き取りをさっそく初めていくのだが、
失踪直後に作家の実家の放火事件が発生、まじめに見えていた作家の裏の顔が暴かれることに――。
富豪だった父の謎の自殺、知らない人物への送金、そして顕れる疑惑の数々。
新城は持ち前の推理力を活かし推理を続けた。そして事件は意外な方向へ。
巧妙に張り巡らせたミステリの伏線と物語のダイナミズム。本格ミステリの女帝が放つ、驚愕の推理エンタテインメント。

Seesaaブログさんへ移行してから、初の更新です。
以下、ネタバレ少々あり。







『消人屋敷』思い出しました。
すごい崖に立ってたんです。よく建築許可が出たなと(笑

それはさておき、本作は中盤でほぼ登場人物が出揃う形になり、
しかも、新城に依頼した妻・日奈子のパートもあるので、なんとなく何がおこなわれたのか、読者は
(日奈子の独白上で)理解はします。

そのため、それを踏まえると果たして犯人は誰なのか、というのと、日奈子が依頼したのも
そもそもなぜなのか、という疑問が生じます。
流石深木先生だけあって、日奈子のパートがありつつも、新城の推理はそれと紙一重の違いなのですが、
この違いは実は紙一重だけれども、天と地ほどの差があるというところがポイントでしょう。

新城の推理後、稲見俊一は変わらず失踪のまま、妻の日奈子も失踪してしまうので、
新城の推理が正しいのでしょう。

もっともトリックというか、必然的にそういうことをするはめになった俊一ですが、
これが現実的にできるかどうかは難しい気がしますね。
(それを言っちゃあおしまいよ、かな?)


重婚という言葉が本書内で出てきますが、少なくとも書類上は違いますし、
あえていえば、究極の二重生活なんですよね。
で大人になってからならともかく、子ども時代が難しいよなあと。
ただ、現実の社会でも失踪人はものすごく多いという統計が出てますから、案外いけるのかもしれません。

ただ、残された子どもたちが可哀そうですね。

というわけで、こちらでもよろしくお願いします。

闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿 (角川文庫) - 深木 章子
闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿 (角川文庫) - 深木 章子

闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿 (角川文庫) [ 深木 章子 ] - 楽天ブックス
闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿 (角川文庫) [ 深木 章子 ] - 楽天ブックス
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2024年12月15日

2025本格ミステリ・ベスト10

まずはAmazonさんの紹介ページから。

特集は2000年代クォータリー・ベスト本格ミステリ・ランキング発表! 
ベテランから新勢力までしのぎを削った激動の25年から読み巧者が厳選!
二大インタビューは青崎有吾、潮谷験。最新ランキングも大注目!

櫻田智也さんの『六色の蛹』、阿津川辰海さんの『黄土館の殺人』が
『このミス』よりランキングが高いのが、『本格』と冠する書の特徴でしょうか。
『彼女が探偵でなければ』は、おそらく発売時期が早ければ、
確実にもっと上だったでしょうね。

『このミス』に比して、2024年のミステリゲーム、復刊ミステリ2024など、
毎回読みたい特集が多いので、こっちの方が好きなんですよね。

後者の復刊ミステリ2024は、そう、トクマの特選!が止まってしまったのです・・・
梶龍雄や中町信さんの刊行作品はどうなるのかなあ。残念すぎる。

ミステリ演劇特集をみると、本当に色々なミステリが舞台でされてるんだなあと。
「かまいたちの夜」はかなり観たかった。
その一方、映像本格はあまり興味がないんですよね(笑
『十角館の殺人』を映像化したのはすごいとは思うけども、
どうもキャストとかそういうのがねえ。原作改変も多いし。
といった懸念(思い込み)からほぼみてません。

2000年代クオータリー本格ベストランキングというのは、流石『本格ベスト』。
でもこれは難しいでしょうね。5に絞れは無理難題。

ところで、もう使用されているのかもしれませんが、いわゆる「新本格」以降、
今のミステリ界隈は「新本格」とは言いませんよね。
「本格」でいいのかなあ。何か新たな言葉があるのか、うーん。

いずれにせよ、ベスト20の作品の大半は間違いなく文庫化して読む予定です。
しかし積読が増えてきて、だんだん危ない状況に・・・(苦笑

まあうれしい悲鳴ですね。焚書になっちゃ困りますから。


2025本格ミステリ・ベスト10

2025本格ミステリ・ベスト10

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2024/12/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2024年12月14日

ニッポン硬貨の謎―エラリー・クイーン最後の事件

まずはAmazonさんの紹介ページから。

幼児連続殺人事件に挑む、来日中の名探偵エラリー・クイーン。
〈五十円玉二十枚の謎〉との関連は? 敬愛する本格ミステリの巨匠に捧げる、
北村薫の華麗なるパスティーシュ。

有栖川有栖先生の『日本扇の謎』が『このミス』などでもランクインして、
『Zの悲劇』が復刊されと、どうもクイーンが頭をよぎり始めていて、
かつて『競作五十円玉二十枚の謎』は読んだけれど、
(猫丸先輩実質デビュー作?)
真打の作品を読んでいないと思いついて、購入し読んだ作品です。

前半部分を読むと、本当にクイーンが書いたかのような筆致のようで、
素晴らしいと感嘆しました。
『シャム双子の謎』の「読者への挑戦」をめぐる、北村先生なりの≪クイーン論≫。
流石に見事ですが、国名シリーズを全て完読し、しかも繰り返し読んでいないと、
おそらくそこまでの理解はできないでしょう。

私はむしろ『五十円玉二十枚の謎』の北村的な解答の方に興味があったので、
後半の本作での事件メインのパートが気になりました。
言葉遊びと言ってしまえばそれまでなのですが、日米での言葉の意味の違いや、複雑さ。
犯人の動機、理屈ではエラリーの推理に納得するも、理解できた人は居なかったのでは、
というくらい、奇想天外な動機です。
むろん、そうした境地になる悲しい出来事があったのは考慮にいれねばなりませんが。

解説で戸川氏は本書をパスティーシュではなく『偽史』とまで賞賛しますが、
確かにクイーン本人が書いたといわれても、納得してしまう作品です。
EQファンにはたまらない作品ですが、知らない人は楽しめないでしょうね。

私は、これから『Zの悲劇』やライツヴィルの残り2作を読む予定ですが、
ちょっと読み方が変わりそうです。


ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/04/20
  • メディア: 文庫



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2024年12月08日

このミステリーがすごい!2025年版

まずはAmazonさんの紹介ページから。

36年の信頼と実績を誇る、新作ミステリーランキングブックです。
表紙&巻頭では漫画『【推しの子】』を特集。
作品の完結を祝し、赤坂アカ氏にお話をうかがいました。

更に、デビュー20周年を記念した
辻村深月氏×湊かなえ氏
道尾秀介氏×加藤隆生氏(SCRAP代表)の二大対談では、
ミステリーの過去・今・未来についてたっぷり語っていただいています。

ゲーム×ミステリーも特集。
「かまいたちの夜」我孫子武丸氏、「Fate/Stay night」奈須きのこ氏のインタビュー、
「逆転裁判」巧舟氏「ひぐらしのなく頃に」竜騎士07氏
「ダンガンロンパ」小高和剛氏のコラムどでゲームとミステリーの歴史をひもときます。

各業界人も注目する2024年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、
超人気作家による自身の新刊情報&特別エッセイなど、
例年の人気コンテンツも充実の一冊です。

というわけで、今年もこの季節がやってきました。
なんといっても、「かまいたちの夜」30周年記念特集が良かったですね。
何度も振り返りで我孫子先生や中村光一さんの話を様々なところで見ましたが、
本作で改めて我孫子先生のインタビューを読むと、色々と思い出します。

やはり『あなただけのかまいたちの夜』は忘れてはなりません。
2冊とも持ってますが、これは傑作揃いです。

私の隠し玉、二階堂黎人さんのところに「水乃サトル」がなくて残念・・・

ところで、最初から購入しているわけではありませんが、
かなり本書が溜まってきました。
ずいぶん長く買っているなあ・・・と。


このミステリーがすごい! 2025年版

このミステリーがすごい! 2025年版

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2024/12/06
  • メディア: 単行本



posted by コースケ at 19:18| Comment(1) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月07日

廃遊園地の殺人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

失われた夢の国へようこそ
巨大すぎるクローズドサークルで連続殺人発生!?

衝撃の全編リライト! 待望の文庫化!!
銃乱射事件で閉鎖された遊園地・イリュジオンランドへ、
廃墟コレクターの資産家・十嶋庵が二十年ぶりに人々を招く。
廃墟マニアの元コンビニ店員・眞上永太郎をはじめとした招待客が、廃
園の所有権を賭けた宝探しに挑戦する最中、串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかり……。
驚愕の廃墟×本格ミステリ長編! 文庫版あとがき収録。

以下、ネタバレあり。








カテゴリーにないので、初めて読むのです、斜線堂さんの作品は。
『このミス』とか他色々とお名前をみているので、もう何か読んだものと
勘違いしていました。

本作、単行本と文庫では、かなり内容(といっても核となる部分は同じでしょうが)
異なることが、作者のあとがきで記されています。
全面リライト版とのこと。
私は文庫版しかよんでいないので、そちらの感想ということに。

帯やあとがきにもあるように、<廃墟探偵>シリーズとして来年2作目が
刊行されるそうです。
それを踏まえると、私の中にはある作品群と重なるものがでてきました。
十島庵=中村青司、眞上永太郎=島田潔。
そう<館>シリーズです。
特に最後の眞上と十島が出会い、手紙の内容を読んで、なんとなく思ってしまいました。

十島庵というキャラクターは、本書に実際に登場しているものの、
登場しているある人物とある人物の合同ネームなのか、
それともどちらかなのか。
彼彼女は、本作舞台のイリュジオンランドの過去に起きた凄惨な出来事について
(20年近い歳月を経たことから、調査をし)、その事実がどう明らかになるのか、
関係者を集めて楽しんでいる(眞上視点ではそうみえた感)ようでしたね。
その場にいるけれども、ストーリーテラーに近い。

で、彼彼女たちは、イリュジオンランドだけでなく、廃墟そのものに興味を持っている。
なぜ廃墟になりえたか。朽ち果てるものと変わらないもの云々のくだりがでてきますが、
ここ以外にもいくつも持っているのでしょうね。

一方眞上も、父親がある空中庭園事件の犯人で、自分は天衝村の出身ではないか?と
最後に疑うのですが、十島によって否定されます。
この探偵役、今回招かれたのは間違いなく父親の事件からなのでしょうが、
推理力みたいなものも、十島からかわれているような描写もあります。
やけにコンビニ定員を強調するのが、意味が分かりませんでしたが。
人物造形に、作者の弟さんをイメージしたらしく、コンビニでバイトしていて
そのバイト業務の多様さに驚いたからと、あとがきにはあります。
格闘技とかは放浪中に身に着けたんでしょうが。

でも、このあたりの探偵役が抱える秘密は最後に少し明かされるだけで、
まず父親の事件は一切説明されないし、父子で放浪していたのも謎(続編への期待ですかね)。
かなり消化不良な感じはあります。

で、本作で描かれる事件、犯人の動機は流石にあり得ないだろうと思うけれども、
まあ動機は人に拠りますからね。
それ以上に常見の方があり得ないかな。今の今まで、調べなかったのか、
しかも一番調べることができる警察にいながら。

眞上が犯人を突き止めるまでの過程は、これは素晴らしいです。
アリバイ、そしてなぜその情報を知っていたのか。つまり読者でも
十分事件は解けるようになっているんですよね。
なんというか、堅実な推理、見事な推理ですね。

ただし、疑問をメモ書きにしてあげているものの、
それよりも物語の展開が早すぎて、どうなのかなあというところも。

ちなみに、私が唯一気づいたのは、眞上が油で手が汚れて、
藍郷がすぐに水道で洗うよう話す描写の箇所。
よく水道が出ること知ってるなと(笑)

最後に明かされる本当の真相は、かなり唐突感が否めませんが、
人骨まで発見されて、当時の運営企業は殺人集団じゃねえかと思ってしまいました。
それと、籤付の家がそこまでこだわる理由はそもそも何なのかも
全然語られず(一応少し描写はありますが)、そのあたりも消化不良感。

次は「廃天象儀」が舞台とのこと。
文庫化を早くお願いします。


廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫)

廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 斜線堂 有紀
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2024/10/04
  • メディア: Kindle版



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2024年12月06日

キネマの天使 メロドラマの日

まずはAmazonさんの紹介ページから。

映画の撮影現場で、映像に関わるすべてを記録し、管理する――。
スクリプターの東風亜矢子は、いい映画を作るため、
正木監督の無茶なリクエストに応えて奔走する日々だ。

だが今回は、資金調達が難航し、撮影に入れない。
頭を抱える監督の前に、高校時代の憧れの同級生が現れ……。
大人気ミステリー第2弾!

PCを買い替えたり、色々していて、更新が止まっていました。

本作は最近始まった新シリーズで、その2作目。
確かに事件は起こります。しかも殺人事件。
しかし、それ以上に、映画撮影をめぐる、もうありとあらゆる展開が
非常に面白いです。

近年の赤川先生の作品は、少々パワーダウンしたものもあり、
大丈夫かなあと思ったりすることも間々ありました。
しかし本作は、主人公の東風亜矢子をはじめ、魅力的なキャラクターが
次々と登場し、物語をとにかく盛り上げます。
しかも、映画製作という場面だけでなく、映画の脚本という面から、
あるいは映画の主役を任される女優の抱えた秘密とか、
それからもちろん、ある殺人事件を巡る再捜査などなど・・・

東風&正木コンビは何か良いものも悪いものも引き寄せる、
そんな力を持っているのかもしれません。

一人だけ別の物語の登場人物かと思うのが、戸畑進也。
こういう人物、赤川作品によく登場するように思いますが、
いやいや、行動だけ見ていたら、とんでもない屑なんですよね(苦笑)

しかも、絶妙に物語本筋に関わらない(笑
これだけもおかしかったです。

相変わらず失恋を繰り返す東風亜矢子。次作で運命の人は現れるのか?
楽しみなシリーズです。


キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫)

キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/05/15
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 23:20| Comment(3) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月24日

神保町の怪人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神保町は聖地か、魔都か!?
「本集めの極意はね、殺意です。
単なる熱意だけでは到底駄目なんですよ」
怪物級の愛書家が跋扈する
本の街を舞台に贈る連作ミステリ

空前の古書ブームが到来する中、百貨店の古書販売催事で知り合った
詩集の収集家・大沢について、不穏な噂を耳にした古書愛好家の喜多。
その後大沢が現れた入札会で、稀覯書が消えるという怪事件が起き……。
古書収集の極意は「殺意」と豪語するコレクターの闇を描く「展覧会の客」ほか、
古書の交換会やパソコンによる文献整理など、
昔と今が交錯する神保町を活写した三話を収録。

どの作品も、おそらく常人では中々理解ができない、相当に深い世界の話で、
甲乙付けがたい、古本ミステリです。
あえて愁眉を言えば、「『憂鬱な愛人』事件」。
この話、主人公の喜多が表題の書(その中でも下巻)を、(積極的ではないものの)
欲していて、元々少し知り合いだった、高野なる古書収集家(本人はこう呼ばれると激昂し、
自分は歌人と言う)との、この当該書入手の顛末を描く物語。

高野の性格というか、本作品は高野という人物そのものを大きくクローズアップした作品で、
「展覧会の客」の大沢とは違う、古書収集家の(奇妙な)側面を垣間見ることができます。

最後は、高野を不倶戴天の敵と称した中島からの手紙で終わるのですが、
高野に少々痛手を負わせるという結末になってます。

とはいえ、この痛手を楽しむ作品ではなく、本作品全体に流れる、高野のあらゆる行動が
読み応え充分だと思います。
Mさんによる「路傍の石」エピソードもそうですが、強烈な人物なのか、神経質な人なのか、
本当に読んでいて、不思議な感覚に囚われました。

「電網恢々事件」は殺人事件も起こり、窃盗事件との関係など、ミステリとして
楽しめるのですが、古書ミステリとしてみた場合、「『憂鬱な~」には叶わず。

今やネットでほとんど古本も手に入る時代に、こうした古き良き(良いのかどうか?)
神保町の多くの奇談が読めるのは、幸せでした。
もちろん、現実では今も似たような事は多少起こっているのかも知れません。


神保町の怪人 (創元推理文庫)

神保町の怪人 (創元推理文庫)

  • 作者: 紀田 順一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/10/19
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 17:21| Comment(1) | 紀田順一郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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