2024年12月15日

2025本格ミステリ・ベスト10

まずはAmazonさんの紹介ページから。

特集は2000年代クォータリー・ベスト本格ミステリ・ランキング発表! 
ベテランから新勢力までしのぎを削った激動の25年から読み巧者が厳選!
二大インタビューは青崎有吾、潮谷験。最新ランキングも大注目!

櫻田智也さんの『六色の蛹』、阿津川辰海さんの『黄土館の殺人』が
『このミス』よりランキングが高いのが、『本格』と冠する書の特徴でしょうか。
『彼女が探偵でなければ』は、おそらく発売時期が早ければ、
確実にもっと上だったでしょうね。

『このミス』に比して、2024年のミステリゲーム、復刊ミステリ2024など、
毎回読みたい特集が多いので、こっちの方が好きなんですよね。

後者の復刊ミステリ2024は、そう、トクマの特選!が止まってしまったのです・・・
梶龍雄や中町信さんの刊行作品はどうなるのかなあ。残念すぎる。

ミステリ演劇特集をみると、本当に色々なミステリが舞台でされてるんだなあと。
「かまいたちの夜」はかなり観たかった。
その一方、映像本格はあまり興味がないんですよね(笑
『十角館の殺人』を映像化したのはすごいとは思うけども、
どうもキャストとかそういうのがねえ。原作改変も多いし。
といった懸念(思い込み)からほぼみてません。

2000年代クオータリー本格ベストランキングというのは、流石『本格ベスト』。
でもこれは難しいでしょうね。5に絞れは無理難題。

ところで、もう使用されているのかもしれませんが、いわゆる「新本格」以降、
今のミステリ界隈は「新本格」とは言いませんよね。
「本格」でいいのかなあ。何か新たな言葉があるのか、うーん。

いずれにせよ、ベスト20の作品の大半は間違いなく文庫化して読む予定です。
しかし積読が増えてきて、だんだん危ない状況に・・・(苦笑

まあうれしい悲鳴ですね。焚書になっちゃ困りますから。


2025本格ミステリ・ベスト10

2025本格ミステリ・ベスト10

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2024/12/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



posted by コースケ at 18:48| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月14日

ニッポン硬貨の謎―エラリー・クイーン最後の事件

まずはAmazonさんの紹介ページから。

幼児連続殺人事件に挑む、来日中の名探偵エラリー・クイーン。
〈五十円玉二十枚の謎〉との関連は? 敬愛する本格ミステリの巨匠に捧げる、
北村薫の華麗なるパスティーシュ。

有栖川有栖先生の『日本扇の謎』が『このミス』などでもランクインして、
『Zの悲劇』が復刊されと、どうもクイーンが頭をよぎり始めていて、
かつて『競作五十円玉二十枚の謎』は読んだけれど、
(猫丸先輩実質デビュー作?)
真打の作品を読んでいないと思いついて、購入し読んだ作品です。

前半部分を読むと、本当にクイーンが書いたかのような筆致のようで、
素晴らしいと感嘆しました。
『シャム双子の謎』の「読者への挑戦」をめぐる、北村先生なりの≪クイーン論≫。
流石に見事ですが、国名シリーズを全て完読し、しかも繰り返し読んでいないと、
おそらくそこまでの理解はできないでしょう。

私はむしろ『五十円玉二十枚の謎』の北村的な解答の方に興味があったので、
後半の本作での事件メインのパートが気になりました。
言葉遊びと言ってしまえばそれまでなのですが、日米での言葉の意味の違いや、複雑さ。
犯人の動機、理屈ではエラリーの推理に納得するも、理解できた人は居なかったのでは、
というくらい、奇想天外な動機です。
むろん、そうした境地になる悲しい出来事があったのは考慮にいれねばなりませんが。

解説で戸川氏は本書をパスティーシュではなく『偽史』とまで賞賛しますが、
確かにクイーン本人が書いたといわれても、納得してしまう作品です。
EQファンにはたまらない作品ですが、知らない人は楽しめないでしょうね。

私は、これから『Zの悲劇』やライツヴィルの残り2作を読む予定ですが、
ちょっと読み方が変わりそうです。


ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/04/20
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 18:16| Comment(0) | 北村薫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月08日

このミステリーがすごい!2025年版

まずはAmazonさんの紹介ページから。

36年の信頼と実績を誇る、新作ミステリーランキングブックです。
表紙&巻頭では漫画『【推しの子】』を特集。
作品の完結を祝し、赤坂アカ氏にお話をうかがいました。

更に、デビュー20周年を記念した
辻村深月氏×湊かなえ氏
道尾秀介氏×加藤隆生氏(SCRAP代表)の二大対談では、
ミステリーの過去・今・未来についてたっぷり語っていただいています。

ゲーム×ミステリーも特集。
「かまいたちの夜」我孫子武丸氏、「Fate/Stay night」奈須きのこ氏のインタビュー、
「逆転裁判」巧舟氏「ひぐらしのなく頃に」竜騎士07氏
「ダンガンロンパ」小高和剛氏のコラムどでゲームとミステリーの歴史をひもときます。

各業界人も注目する2024年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、
超人気作家による自身の新刊情報&特別エッセイなど、
例年の人気コンテンツも充実の一冊です。

というわけで、今年もこの季節がやってきました。
なんといっても、「かまいたちの夜」30周年記念特集が良かったですね。
何度も振り返りで我孫子先生や中村光一さんの話を様々なところで見ましたが、
本作で改めて我孫子先生のインタビューを読むと、色々と思い出します。

やはり『あなただけのかまいたちの夜』は忘れてはなりません。
2冊とも持ってますが、これは傑作揃いです。

私の隠し玉、二階堂黎人さんのところに「水乃サトル」がなくて残念・・・

ところで、最初から購入しているわけではありませんが、
かなり本書が溜まってきました。
ずいぶん長く買っているなあ・・・と。


このミステリーがすごい! 2025年版

このミステリーがすごい! 2025年版

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2024/12/06
  • メディア: 単行本



posted by コースケ at 19:18| Comment(1) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月07日

廃遊園地の殺人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

失われた夢の国へようこそ
巨大すぎるクローズドサークルで連続殺人発生!?

衝撃の全編リライト! 待望の文庫化!!
銃乱射事件で閉鎖された遊園地・イリュジオンランドへ、
廃墟コレクターの資産家・十嶋庵が二十年ぶりに人々を招く。
廃墟マニアの元コンビニ店員・眞上永太郎をはじめとした招待客が、廃
園の所有権を賭けた宝探しに挑戦する最中、串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかり……。
驚愕の廃墟×本格ミステリ長編! 文庫版あとがき収録。

以下、ネタバレあり。








カテゴリーにないので、初めて読むのです、斜線堂さんの作品は。
『このミス』とか他色々とお名前をみているので、もう何か読んだものと
勘違いしていました。

本作、単行本と文庫では、かなり内容(といっても核となる部分は同じでしょうが)
異なることが、作者のあとがきで記されています。
全面リライト版とのこと。
私は文庫版しかよんでいないので、そちらの感想ということに。

帯やあとがきにもあるように、<廃墟探偵>シリーズとして来年2作目が
刊行されるそうです。
それを踏まえると、私の中にはある作品群と重なるものがでてきました。
十島庵=中村青司、眞上永太郎=島田潔。
そう<館>シリーズです。
特に最後の眞上と十島が出会い、手紙の内容を読んで、なんとなく思ってしまいました。

十島庵というキャラクターは、本書に実際に登場しているものの、
登場しているある人物とある人物の合同ネームなのか、
それともどちらかなのか。
彼彼女は、本作舞台のイリュジオンランドの過去に起きた凄惨な出来事について
(20年近い歳月を経たことから、調査をし)、その事実がどう明らかになるのか、
関係者を集めて楽しんでいる(眞上視点ではそうみえた感)ようでしたね。
その場にいるけれども、ストーリーテラーに近い。

で、彼彼女たちは、イリュジオンランドだけでなく、廃墟そのものに興味を持っている。
なぜ廃墟になりえたか。朽ち果てるものと変わらないもの云々のくだりがでてきますが、
ここ以外にもいくつも持っているのでしょうね。

一方眞上も、父親がある空中庭園事件の犯人で、自分は天衝村の出身ではないか?と
最後に疑うのですが、十島によって否定されます。
この探偵役、今回招かれたのは間違いなく父親の事件からなのでしょうが、
推理力みたいなものも、十島からかわれているような描写もあります。
やけにコンビニ定員を強調するのが、意味が分かりませんでしたが。
人物造形に、作者の弟さんをイメージしたらしく、コンビニでバイトしていて
そのバイト業務の多様さに驚いたからと、あとがきにはあります。
格闘技とかは放浪中に身に着けたんでしょうが。

でも、このあたりの探偵役が抱える秘密は最後に少し明かされるだけで、
まず父親の事件は一切説明されないし、父子で放浪していたのも謎(続編への期待ですかね)。
かなり消化不良な感じはあります。

で、本作で描かれる事件、犯人の動機は流石にあり得ないだろうと思うけれども、
まあ動機は人に拠りますからね。
それ以上に常見の方があり得ないかな。今の今まで、調べなかったのか、
しかも一番調べることができる警察にいながら。

眞上が犯人を突き止めるまでの過程は、これは素晴らしいです。
アリバイ、そしてなぜその情報を知っていたのか。つまり読者でも
十分事件は解けるようになっているんですよね。
なんというか、堅実な推理、見事な推理ですね。

ただし、疑問をメモ書きにしてあげているものの、
それよりも物語の展開が早すぎて、どうなのかなあというところも。

ちなみに、私が唯一気づいたのは、眞上が油で手が汚れて、
藍郷がすぐに水道で洗うよう話す描写の箇所。
よく水道が出ること知ってるなと(笑)

最後に明かされる本当の真相は、かなり唐突感が否めませんが、
人骨まで発見されて、当時の運営企業は殺人集団じゃねえかと思ってしまいました。
それと、籤付の家がそこまでこだわる理由はそもそも何なのかも
全然語られず(一応少し描写はありますが)、そのあたりも消化不良感。

次は「廃天象儀」が舞台とのこと。
文庫化を早くお願いします。


廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫)

廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 斜線堂 有紀
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2024/10/04
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 22:08| Comment(1) | 斜線堂有紀 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月06日

キネマの天使 メロドラマの日

まずはAmazonさんの紹介ページから。

映画の撮影現場で、映像に関わるすべてを記録し、管理する――。
スクリプターの東風亜矢子は、いい映画を作るため、
正木監督の無茶なリクエストに応えて奔走する日々だ。

だが今回は、資金調達が難航し、撮影に入れない。
頭を抱える監督の前に、高校時代の憧れの同級生が現れ……。
大人気ミステリー第2弾!

PCを買い替えたり、色々していて、更新が止まっていました。

本作は最近始まった新シリーズで、その2作目。
確かに事件は起こります。しかも殺人事件。
しかし、それ以上に、映画撮影をめぐる、もうありとあらゆる展開が
非常に面白いです。

近年の赤川先生の作品は、少々パワーダウンしたものもあり、
大丈夫かなあと思ったりすることも間々ありました。
しかし本作は、主人公の東風亜矢子をはじめ、魅力的なキャラクターが
次々と登場し、物語をとにかく盛り上げます。
しかも、映画製作という場面だけでなく、映画の脚本という面から、
あるいは映画の主役を任される女優の抱えた秘密とか、
それからもちろん、ある殺人事件を巡る再捜査などなど・・・

東風&正木コンビは何か良いものも悪いものも引き寄せる、
そんな力を持っているのかもしれません。

一人だけ別の物語の登場人物かと思うのが、戸畑進也。
こういう人物、赤川作品によく登場するように思いますが、
いやいや、行動だけ見ていたら、とんでもない屑なんですよね(苦笑)

しかも、絶妙に物語本筋に関わらない(笑
これだけもおかしかったです。

相変わらず失恋を繰り返す東風亜矢子。次作で運命の人は現れるのか?
楽しみなシリーズです。


キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫)

キネマの天使 メロドラマの日 (講談社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/05/15
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 23:20| Comment(3) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月24日

神保町の怪人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神保町は聖地か、魔都か!?
「本集めの極意はね、殺意です。
単なる熱意だけでは到底駄目なんですよ」
怪物級の愛書家が跋扈する
本の街を舞台に贈る連作ミステリ

空前の古書ブームが到来する中、百貨店の古書販売催事で知り合った
詩集の収集家・大沢について、不穏な噂を耳にした古書愛好家の喜多。
その後大沢が現れた入札会で、稀覯書が消えるという怪事件が起き……。
古書収集の極意は「殺意」と豪語するコレクターの闇を描く「展覧会の客」ほか、
古書の交換会やパソコンによる文献整理など、
昔と今が交錯する神保町を活写した三話を収録。

どの作品も、おそらく常人では中々理解ができない、相当に深い世界の話で、
甲乙付けがたい、古本ミステリです。
あえて愁眉を言えば、「『憂鬱な愛人』事件」。
この話、主人公の喜多が表題の書(その中でも下巻)を、(積極的ではないものの)
欲していて、元々少し知り合いだった、高野なる古書収集家(本人はこう呼ばれると激昂し、
自分は歌人と言う)との、この当該書入手の顛末を描く物語。

高野の性格というか、本作品は高野という人物そのものを大きくクローズアップした作品で、
「展覧会の客」の大沢とは違う、古書収集家の(奇妙な)側面を垣間見ることができます。

最後は、高野を不倶戴天の敵と称した中島からの手紙で終わるのですが、
高野に少々痛手を負わせるという結末になってます。

とはいえ、この痛手を楽しむ作品ではなく、本作品全体に流れる、高野のあらゆる行動が
読み応え充分だと思います。
Mさんによる「路傍の石」エピソードもそうですが、強烈な人物なのか、神経質な人なのか、
本当に読んでいて、不思議な感覚に囚われました。

「電網恢々事件」は殺人事件も起こり、窃盗事件との関係など、ミステリとして
楽しめるのですが、古書ミステリとしてみた場合、「『憂鬱な~」には叶わず。

今やネットでほとんど古本も手に入る時代に、こうした古き良き(良いのかどうか?)
神保町の多くの奇談が読めるのは、幸せでした。
もちろん、現実では今も似たような事は多少起こっているのかも知れません。


神保町の怪人 (創元推理文庫)

神保町の怪人 (創元推理文庫)

  • 作者: 紀田 順一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/10/19
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 17:21| Comment(1) | 紀田順一郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月23日

孤島の来訪者

まずはAmazonさんの紹介ページから。

論理を武器に道を開くことの力強さが、
方丈作品には備わっている。若林踏(解説より)

復讐を企てる竜泉佑樹の前に現れる、標的の死体――
孤島で起こる人智を超えた不可能殺人に
推理で立ち向かう、異形の本格ミステリ。
〈竜泉家の一族〉三部作 第二弾

謀殺された幼馴染みの復讐のため、テレビ局のADとなった竜泉佑樹。
ターゲットの3名を含む9名で曰くつき無人島のロケに参加した佑樹だったが、
初日からターゲットの一人が殺されているのを発見する。自らが手を下すはずが、
一体何者の仕業なのか? しかも、その犯行には人ではない何かが絡み、
佑樹たちの中に紛れ込んでしまった!? 疑心暗鬼の中、またしても佑樹のターゲットが殺害され……。『時空旅行者の砂時計』で話題を浚った著者が贈る〈竜泉家の一族〉三部作第二弾、
予測不能な孤島本格ミステリ長編。

以下、ややネタバレあり。




竜泉寺家の一族シリーズ第2弾。
名前だけではありますが、前作主人公・加茂冬馬も登場します。
で、この加茂冬馬の書いたルポが、幽世島で起きた不可思議な出来事を
ある意味言い当てていたというのが、終盤で真犯人から少し触れられるのが嬉しいです(笑


本作は特殊設定ミステリ+吹雪の山荘ものになっています。
最も、特殊設定自体は、かなり早い段階で、本作主人公の竜泉佑樹がその特徴を看破
していくので、そこまで違和感はありません。
むしろ、この設定の上で、ここまでの館ミステリを創り上げた作者に敬意を表します。

私が特に秀逸だと感じたのは、小火を起こしてからの、焼死体のトリックです。
これは遺体を誤認させるトリックなのですが、登場人物が指摘しているとおり、
実人数との関係では、最初の推理に行き着くのは当然の帰結なのですが、
犯人のある特性を知った後では、大きく変わることになります。
また、個人的には「首の無い死体」の亜種バージョンでもあるのでは?と思いました。
遺体の処理が一番大変なのだというのが、かつて『金田一少年の事件簿』で語られた
ことがありますが、本作の遺体誤認トリックは、(その前の誤認含め)
遺体が誰なのか、だけで無く、その数含め、来訪者達を混乱させており、
本作の核ともいうべきトリックだと思います。

最後の船での会話は、さらなるあとがき、的な感じで、それはそれで楽しめました。
しかし、生き残った人たちは口裏合わせをしたようですが、果たして上手くいくのか(笑

いよいよ、次が竜泉寺一族ラストとなります。


孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ (創元推理文庫)

孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 方丈 貴恵
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2024/01/11
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 23:44| Comment(1) | 方丈貴恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月17日

五つの季節に探偵は

まずはAmazonさんの紹介ページから。

第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞!精緻でビターな連作短編集

私立探偵として活動するみどり。“人の本性を暴かずにはいられない”彼女は、
いくつもの事件と対峙する――。第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞!
精緻でビターなミステリ連作短編集。

初めて読む作家さんです。
見事な連作短編集になっています。すでに続編も刊行されました。

個人的なオススメは「ゴーストの雫」。
榊原みどり、から、森田みどり、へ結婚して復職して、
自身の父親がしていた探偵事務所に入所し、本当に探偵となったみどり。
リベンジポルノをうけたという女性の兄からの依頼。
みどりと須見要は、その犯人をみつけようと調査を開始するが・・・

この話、みどりが出身大学を問われるところが結構面白いんですよね、
「私は京都大学ですが・・・」と言われ、困惑する依頼者の家族。
ステレオタイプの考えしかできない方々なんでしょうね。

意外な真相がみえるのが「解錠の音が」。
自転車のワイヤーロックが次々と壊される事件から、みどりが
行き着いた真相は予想だにしないもので、これは凄かった。
ラストも、そこまでするか!というラストです。
日本の探偵がすることではないですね。

「スケーターズ・ワルツ」は、語り手の話す登場人物のトリックはともかく、
その先の、みどりが辿り着いた真相がお見事。
精神的な自傷を繰り返していると評された、土屋尚子は新たな一歩を踏み出せる
ことでしょう。

良質な短編集をお求めの方はぜひ。



五つの季節に探偵は (角川文庫)

五つの季節に探偵は (角川文庫)

  • 作者: 逸木 裕
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2024/08/23
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 19:30| Comment(1) | 逸木裕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月09日

眠れない町

まずはAmazonさんの紹介ページから。

眠りたいのに――。〈睡眠〉に仕掛けられた恐るべき陰謀とは? 
迫真のサスペンス・ミステリー! 
郊外のマンモス団地に住むフリーライター兼編集者の矢吹徹治。
徹夜仕事が日常の多忙な毎日を送っている。矢吹はある朝、近所に住む会社員・城山が
駅で急死する場に立ち会ってしまう。城山は、極度の不眠症に悩んでいたらしい。
それを発端に矢吹の周囲で不可解な事件が続発する。平凡な町に何が起こっているのか? 
〈睡眠〉に仕掛けられた恐るべき陰謀とは!?

いくらでも拡げられそうなテーマ&連作短編に向いているところを、
さらりと長編にしてしまうのが、赤川次郎先生ならではかもしれません。

本書も非常に不思議な始まりで、一連の事象がどう繋がるのか、とても面白く
読めるのですが・・・
結末がねえ、まあ悪く言えば安易で、よく言えば赤川先生らしい落としどころ。

矢吹夫妻の人のよさは素晴らしいし、相変わらず人物描写は面白い。
それだけに、「眠れない」をテーマにした、短編集ないし連作短編集の方が
面白かったように思えます。

ところで、本書は元々徳間文庫刊行で、今回講談社文庫から発売。
いつもと逆パターンです。


posted by コースケ at 21:27| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月03日

透明な螺旋

まずはAmazonさんの紹介ページから。

誰も知らなかった湯川(ガリレオ)の秘密

南房総沖に、男の銃殺死体が浮かんだ。同時に、男の行方不明者届を出していた
同居人の女が行方をくらませた。捜査にあたった草薙と内海薫はその過程で、
思いがけず湯川学の名前に行きつく。草薙はすぐさま湯川の元を訪れたが、
彼はそこ、横須賀のマンションで意外な生活を送っていた――。
巻末に短篇「重命る(かさなる)」を特別収録。


『探偵ガリレオ』文庫版を読んでから、もうずいぶんと時が経ったのだなと
感じました。
解説を佐野史郎さんが書かれていて、それは東野圭吾さんが、湯川学を描く際の
イメージが佐野史郎さんだったから(とおぼろげながら)覚えてます。
(佐野史郎さんの学者というと、「沙粧妙子最後の事件」が強烈です)

いつの間にか草薙も係長(警部)に出世.。湯川も教授。確実に時は流れているのです。
本作はガリレオシリーズの時の流れを感じさせる作品。
初期のいわば湯川の専門分野が事件に関係しているということはありません。
内海や草薙との会話で、過去の事件が度々触れられるのは、うれしくもあり、さびしくもあり。

何かを隠す湯川と、それを詰める草薙。立場変われど、二人の関係も相変わらずです。
明かされる真相は、おおよそ見当がつくものの、本作の主眼はそこにはないのでしょう。

特別収録された「重命る」の方が、よほど初期作品を彷彿とさせますね。
もちろん何かおおがかりな実験したりはないのですが、
被害者はなぜ溺死体で発見されたのか、川に落としたのは誰か、という謎は
かなり魅力的で面白く読めました。
短編集『ガリレオ9』が刊行されることを祈りつつ。


透明な螺旋 (文春文庫 ひ 13-14)

透明な螺旋 (文春文庫 ひ 13-14)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2024/09/04
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 23:03| Comment(1) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする