まずはAmazonさんの紹介ページから。
〈この恨みは、死んでも必ず残る。きっと、化けて出てやる。〉と書き遺して自殺した新入社員。
その後を追うように身を投げた上司。関連のなさそうな連続死の謎を
二人の女子社員が追う――(表題作)
平穏で幸福な未来を願う人々に、ある日突然、殺意が牙をむく。
先の読めない展開とまさかの結末に背筋が凍る傑作短編小説6篇。
事件の真相が明らかになるとき、凍りついた心は涙で溶かされる。
相変わらず、上手いタイトルを付けますよね。赤川次郎先生は。
幽霊が遅刻とはどういう意味なのか。草木も眠る丑三つ時、今で言う午前2時に
出ず、もっと遅く化けて出たのか?とか、タイトルだけで色々興味を惹かれてしまいます。
主人公は徳田実子、しかし探偵役は会社の後輩にあたる水木貞代。
田代という新入社員が会社への怨みを書いた遺書を書いて自殺し、
その後、実子が所属している課の大崎課長まで亡くなる。
そういえば、葬儀で田代によく似た人を見かけたが・・・果たして事件の真相は?
「子供のころ、私のヒーローは、エラリー・クイーンだったんですもの」という
貞代の台詞がよい。死んだ人間が生きていた?立て続けの自殺?
奇妙な謎にクイーンばりの名推理を発揮します。
本書所収作の愁眉は非常に難しい。ミステリ的な面では表題作と「幕間に死す」。
後者は過去の事件を解き明かす名短編で、最後に明かされる真相があまりに哀しい。
『ふたり』などに代表されるSF作品に連なるのが「相似形の明日」
これも非常に哀しい話なのですが、それ以上に不思議な話でもあります。
自分の痛みは自分で引き受ける、晴子の最後の台詞が素晴らしい。
2024年08月25日
2024年08月18日
#真相をお話しします
まずはAmazonさんの紹介ページから。
島育ちの仲良し小学生四人組。
あの日「ゆーちゅーばー」になることを夢見た僕らの末路は……(「#拡散希望」)。
マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師。
精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。
新時代のミステリの旗手による、どんでん返しの五連撃。
日本推理作家協会賞受賞作を含む、傑作短編集。(解説・村上貴史)
以下、ネタバレありです。
名作揃いです。
SNS、キラキラネーム、マッチングアプリ、リモート、精子提供、Youtubeと、
現在の主要な話題、流行を全ての短編に使用していて、現在のミステリというのが
極めて強く出ています。
その意味での名作揃い。
「惨者面談」は、うーん、あえて私は「キラキラネーム」という区分で
紹介したのですが、それは名前の呼び方が本作での鍵だからです。
(別にキラキラネームは登場しません。むしろそれは「#拡散希望」ですね。)
むしろ、3名のうち、2名がその家と関係ないというところが、
現代的なのかもしれませんね。
「ヤリモク」は、そもそも「ヤリ」とは何かというところを突いた盲点的な作品。
最後に主人公にとっては、悲劇が起こりますが・・・
「パンドラ」は何とも言いようがない作品。
まあ、血液型は普通事前に確認するだろうという感想しかない。
「三角奸計」はリモート飲み会を上手く使った作品。
しかし、「ヤリモク」も「パンドラ」もそうですが、この3作品ともヤバイ人が
登場しますね。
「♯拡散希望」は、人口の少ない島で暮らす、たった4人しか居ない小学生の物語。
これは、いやあ、現実に起きていてもおかしくない話ですね。
でも、彼彼女たちの親は、子どもが大きくなった時、どうバレないように
するつもりだったのだろうか。
とてもじゃないですが、中学生になれば、さすがにわかるでしょう。
(島外に出る機会があれば、当然触れるはず。)
ある意味期間限定で、親たちはやるつもりだったのかもしれませんが、
その前にバレてしまったのか。
しかし、この島を見つけて突撃してきた人を殺害するというのが
もはや常軌を逸してますね。
でもこれも、もうフィクションです、では通らない世の中になっていると思いますが。
島育ちの仲良し小学生四人組。
あの日「ゆーちゅーばー」になることを夢見た僕らの末路は……(「#拡散希望」)。
マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師。
精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。
新時代のミステリの旗手による、どんでん返しの五連撃。
日本推理作家協会賞受賞作を含む、傑作短編集。(解説・村上貴史)
以下、ネタバレありです。
名作揃いです。
SNS、キラキラネーム、マッチングアプリ、リモート、精子提供、Youtubeと、
現在の主要な話題、流行を全ての短編に使用していて、現在のミステリというのが
極めて強く出ています。
その意味での名作揃い。
「惨者面談」は、うーん、あえて私は「キラキラネーム」という区分で
紹介したのですが、それは名前の呼び方が本作での鍵だからです。
(別にキラキラネームは登場しません。むしろそれは「#拡散希望」ですね。)
むしろ、3名のうち、2名がその家と関係ないというところが、
現代的なのかもしれませんね。
「ヤリモク」は、そもそも「ヤリ」とは何かというところを突いた盲点的な作品。
最後に主人公にとっては、悲劇が起こりますが・・・
「パンドラ」は何とも言いようがない作品。
まあ、血液型は普通事前に確認するだろうという感想しかない。
「三角奸計」はリモート飲み会を上手く使った作品。
しかし、「ヤリモク」も「パンドラ」もそうですが、この3作品ともヤバイ人が
登場しますね。
「♯拡散希望」は、人口の少ない島で暮らす、たった4人しか居ない小学生の物語。
これは、いやあ、現実に起きていてもおかしくない話ですね。
でも、彼彼女たちの親は、子どもが大きくなった時、どうバレないように
するつもりだったのだろうか。
とてもじゃないですが、中学生になれば、さすがにわかるでしょう。
(島外に出る機会があれば、当然触れるはず。)
ある意味期間限定で、親たちはやるつもりだったのかもしれませんが、
その前にバレてしまったのか。
しかし、この島を見つけて突撃してきた人を殺害するというのが
もはや常軌を逸してますね。
でもこれも、もうフィクションです、では通らない世の中になっていると思いますが。
2024年08月11日
花嫁、街道を行く
まずはAmazonさんの紹介ページから。
彼女はどこへ行った?
事件は日本からドイツへ!
ひょんなことから探偵事務所を開くことになった女子大生・亜由美。
そこへ、行方不明になったツアコンの久美子を探して欲しいと依頼が舞い込む。
手がかりを探し、たどりついたのは、ある国の大使館。久美子を発見するが、
事件は思わぬ方向へ展開し、舞台はドイツ・ロマンチック街道へ!
表題作ほか「あの夜の花嫁は、今」を収録。シリーズ第35弾。
シリーズも35弾ですか。赤川先生のはどれも長寿シリーズが多いですよね。
最近は大貫警部シリーズの新作が出ないので、かなり残念なのです。
本作も前作と同じく、この表題作は誰が花嫁なのか、よくわからず(笑
たぶん久美子がなるんだろうなという、少々かなりの想像を含みますが、
花嫁シリーズでなく、ノン・シリーズでもおかしくない。
最後の大団円的なところは、いくらなんでもあり得ないだろう!と
(ドイツへ行く過程も含め)思いますが、そこが赤川作品の面白さでもあります。
花嫁シリーズという意味では、「あの夜の花嫁は、今」の方が遥かにシリーズらしい。
しかも最後には2名も花嫁候補も登場しますからね。
ホテルの支配人である柳田が仕事を頼む半田や辻口、柳田はともかく、辻口は
中々面白い。さらに赤川作品の常連的な人物かもしれないベルボーイの大倉佑太も
良いキャラです。
でも大団円でないところ(いい意味で)がさらに面白いですね。
亜由美ももちろん主人公らしく頑張るのですが、本作では佑太としのぶの活躍には
及びません。この二人のちょっとした珍道中もよいのです。
谷川准教授との関係が、もう破局なのかそれとも・・・この辺りはぜひ描いてほしいです。
彼女はどこへ行った?
事件は日本からドイツへ!
ひょんなことから探偵事務所を開くことになった女子大生・亜由美。
そこへ、行方不明になったツアコンの久美子を探して欲しいと依頼が舞い込む。
手がかりを探し、たどりついたのは、ある国の大使館。久美子を発見するが、
事件は思わぬ方向へ展開し、舞台はドイツ・ロマンチック街道へ!
表題作ほか「あの夜の花嫁は、今」を収録。シリーズ第35弾。
シリーズも35弾ですか。赤川先生のはどれも長寿シリーズが多いですよね。
最近は大貫警部シリーズの新作が出ないので、かなり残念なのです。
本作も前作と同じく、この表題作は誰が花嫁なのか、よくわからず(笑
たぶん久美子がなるんだろうなという、少々かなりの想像を含みますが、
花嫁シリーズでなく、ノン・シリーズでもおかしくない。
最後の大団円的なところは、いくらなんでもあり得ないだろう!と
(ドイツへ行く過程も含め)思いますが、そこが赤川作品の面白さでもあります。
花嫁シリーズという意味では、「あの夜の花嫁は、今」の方が遥かにシリーズらしい。
しかも最後には2名も花嫁候補も登場しますからね。
ホテルの支配人である柳田が仕事を頼む半田や辻口、柳田はともかく、辻口は
中々面白い。さらに赤川作品の常連的な人物かもしれないベルボーイの大倉佑太も
良いキャラです。
でも大団円でないところ(いい意味で)がさらに面白いですね。
亜由美ももちろん主人公らしく頑張るのですが、本作では佑太としのぶの活躍には
及びません。この二人のちょっとした珍道中もよいのです。
谷川准教授との関係が、もう破局なのかそれとも・・・この辺りはぜひ描いてほしいです。
2024年08月03日
天狗屋敷の殺人
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「これだから小説は面白い。」道尾秀介、お墨付き!
棺から消えた当主の遺体、天狗の毒矢、山奥の怪事件に秘められた“ありえない”規格外の“謎”
全ミステリファン瞠目の「新潮ミステリー大賞の隠し玉」
ヤンデレな恋人・翠に、婚約者として無理やり連れていかれた彼女の実家は、
山奥に立つ霊是(りょうぜ)一族の“天狗屋敷”だった。失踪した当主の遺言状開封、
莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。
奇怪な難事件を次々と解き明かすのは、あやしい「何でも屋」さん!?
「いつかまた会えたらいいね」――夏が来るたび思い出す、
あの陰惨な事件と、彼女の涙を。横溝正史へのオマージュに満ちた、ミステリの怪作。
「分からんのか? つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
以下、ややネタバレです。
「分からんのか?つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
この台詞に惹かれて購入しました(笑
犬神家状態!それで通じるのがミステリ好きという。
「新潮ミステリー大賞」というのは初めて知りました。
もう10年ですから、そこそこの歴史ですよね。
本書は、2023年の第10回の最終候補(つまり大賞受賞作品ではない)ものを
文庫で刊行されたという、(社内でどういう協議がされたのか不明ですが)
中々すごいですね。
ワトソン役である古賀鳴海の彼女である平澤翠。今度本家にて、遺産相続にかかる
遺言書が開封されるという。鳴海のバイト先である<なんでも屋>樋山忍も、
上記の台詞を発し、適当な理由をつけて同行することに。
遺言書が開封された後に起こる奇怪な殺人事件。
果たして犯人は?
という感じでしょうか(苦笑・すいません)
まず、翠という女性の方が怖い(笑)
鳴海にかつての自分が体験(やったであろうこと)を語るのですが、それがあるとしても、
行動が恐ろしい。最後は幸せな姿を鳴海と忍に見せてくれるのですが、
夫となる方は、やっていけるのかなあ・・・
(事件解決後に、雰囲気が変わった描写はありますが)
横溝正史先生へのオマージュにあふれたとありますが、
それはこの旧家の霊是家と遺言書。トリックは島田荘司御大の奇想天外・大がかりなトリック
へのオマージュだと思います。
ただし、このトリックは犯人の告白を読めば「プロバビリティ-の犯罪」であることが
判明します。ここは結構捻ってるなあと思いました。
問題なのは、このトリックは詳しく説明されているのですが、図がないのが致命的。
2つめの殺人のトリックは、絵図付き解説がないと、かなり難解(というかわからん)。
犯人はほぼ(アリバイは考えずとも)分かると思います。
動機はあれだろうと見当が付くので。
ところがこれも動機という面では、強固かと思いきや、犯人の告白では全然動機も
実は無いというオチ。
(だからこその「プロバビリティーの犯罪」なのですが)。
次は「7人ミサキ連続殺人事件」だそうなので(タイトル的に興味深い・笑)、
こちらも、もし刊行されたら読んで見たいと思います。
「これだから小説は面白い。」道尾秀介、お墨付き!
棺から消えた当主の遺体、天狗の毒矢、山奥の怪事件に秘められた“ありえない”規格外の“謎”
全ミステリファン瞠目の「新潮ミステリー大賞の隠し玉」
ヤンデレな恋人・翠に、婚約者として無理やり連れていかれた彼女の実家は、
山奥に立つ霊是(りょうぜ)一族の“天狗屋敷”だった。失踪した当主の遺言状開封、
莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。
奇怪な難事件を次々と解き明かすのは、あやしい「何でも屋」さん!?
「いつかまた会えたらいいね」――夏が来るたび思い出す、
あの陰惨な事件と、彼女の涙を。横溝正史へのオマージュに満ちた、ミステリの怪作。
「分からんのか? つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
以下、ややネタバレです。
「分からんのか?つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
この台詞に惹かれて購入しました(笑
犬神家状態!それで通じるのがミステリ好きという。
「新潮ミステリー大賞」というのは初めて知りました。
もう10年ですから、そこそこの歴史ですよね。
本書は、2023年の第10回の最終候補(つまり大賞受賞作品ではない)ものを
文庫で刊行されたという、(社内でどういう協議がされたのか不明ですが)
中々すごいですね。
ワトソン役である古賀鳴海の彼女である平澤翠。今度本家にて、遺産相続にかかる
遺言書が開封されるという。鳴海のバイト先である<なんでも屋>樋山忍も、
上記の台詞を発し、適当な理由をつけて同行することに。
遺言書が開封された後に起こる奇怪な殺人事件。
果たして犯人は?
という感じでしょうか(苦笑・すいません)
まず、翠という女性の方が怖い(笑)
鳴海にかつての自分が体験(やったであろうこと)を語るのですが、それがあるとしても、
行動が恐ろしい。最後は幸せな姿を鳴海と忍に見せてくれるのですが、
夫となる方は、やっていけるのかなあ・・・
(事件解決後に、雰囲気が変わった描写はありますが)
横溝正史先生へのオマージュにあふれたとありますが、
それはこの旧家の霊是家と遺言書。トリックは島田荘司御大の奇想天外・大がかりなトリック
へのオマージュだと思います。
ただし、このトリックは犯人の告白を読めば「プロバビリティ-の犯罪」であることが
判明します。ここは結構捻ってるなあと思いました。
問題なのは、このトリックは詳しく説明されているのですが、図がないのが致命的。
2つめの殺人のトリックは、絵図付き解説がないと、かなり難解(というかわからん)。
犯人はほぼ(アリバイは考えずとも)分かると思います。
動機はあれだろうと見当が付くので。
ところがこれも動機という面では、強固かと思いきや、犯人の告白では全然動機も
実は無いというオチ。
(だからこその「プロバビリティーの犯罪」なのですが)。
次は「7人ミサキ連続殺人事件」だそうなので(タイトル的に興味深い・笑)、
こちらも、もし刊行されたら読んで見たいと思います。
2024年07月28日
楽屋の蟹ー中村雅楽と日常の謎
まずはAmazonさんの紹介ページから。
歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ精選の11編を収録。
中村雅楽が挑む数々の日常の謎。日常の謎でも老探偵は飄々と謎を解きます。
「團十郎切腹事件」は歌舞伎役者ならではの謎解きですね。
これは中村雅楽シリーズだからこそ書けた傑作だと思います。
「グリーン車の子供」も同様。中村雅楽ではなく、隣り合わせた少女の芝居が秀逸。
この筋立てを考えた宝来屋もお見事。
解説では、本作で雅樂たちが乗車していた新幹線にまつわる話が登場するのですが、
これはかなり面白い。なるほど、食堂車か。今や懐かしい(というか私も知りませんが)
ですねえ。
「目黒の狂女」も面白い。いわゆる「奇妙な味」というタイプで、
雅樂の謎解きも鮮やかです。
唯一、雅樂が竹野の前で涙をみせた「むかしの弟子」。解説の新保博久さんも
書いているように、中村雅楽シリーズ最終作と言われても、誰もが納得する
作品ではないかと思います。
『等々力座殺人事件』と比して、中村雅楽も竹野も齢を重ねています。
竹野はいつの間にか嘱託社員的な立場に、中村雅楽もかなりの高齢に。
作者自身、第1作で雅楽を高齢にしすぎて・・・と書かれているので
(ポワロと同じような感じですね。)
相当な年齢になっているのでしょうが、そこを竹野の立場変化から
時間の経過を上手く現しています。
中村雅楽全集が手に入らない現在、本シリーズ第3作を望みます!
歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ精選の11編を収録。
中村雅楽が挑む数々の日常の謎。日常の謎でも老探偵は飄々と謎を解きます。
「團十郎切腹事件」は歌舞伎役者ならではの謎解きですね。
これは中村雅楽シリーズだからこそ書けた傑作だと思います。
「グリーン車の子供」も同様。中村雅楽ではなく、隣り合わせた少女の芝居が秀逸。
この筋立てを考えた宝来屋もお見事。
解説では、本作で雅樂たちが乗車していた新幹線にまつわる話が登場するのですが、
これはかなり面白い。なるほど、食堂車か。今や懐かしい(というか私も知りませんが)
ですねえ。
「目黒の狂女」も面白い。いわゆる「奇妙な味」というタイプで、
雅樂の謎解きも鮮やかです。
唯一、雅樂が竹野の前で涙をみせた「むかしの弟子」。解説の新保博久さんも
書いているように、中村雅楽シリーズ最終作と言われても、誰もが納得する
作品ではないかと思います。
『等々力座殺人事件』と比して、中村雅楽も竹野も齢を重ねています。
竹野はいつの間にか嘱託社員的な立場に、中村雅楽もかなりの高齢に。
作者自身、第1作で雅楽を高齢にしすぎて・・・と書かれているので
(ポワロと同じような感じですね。)
相当な年齢になっているのでしょうが、そこを竹野の立場変化から
時間の経過を上手く現しています。
中村雅楽全集が手に入らない現在、本シリーズ第3作を望みます!
![楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) [ 戸板 康二 ] 楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) [ 戸板 康二 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/0776/9784309420776_1_2.jpg?_ex=128x128)
楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) [ 戸板 康二 ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,155 円
2024年07月21日
神の悪手
まずはAmazonさんの紹介ページから。
棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、
20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。
9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。
今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。
夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。
将棋ミステリとは思いませんでした。
全編そうです。そして各編色々共通しています。
しかし、将棋を主軸としつつ、ミステリとしての骨格は充分に素晴らしい。
特に「弱い者」と「ミイラ」は甲乙付けがたい傑作。
前者は震災被災地に、将棋教室のボランティアを行うため訪れた北上八段と石埜女流三段。
北上もかつて「被災者」だった経験を持つ。
北上と対局したある1人の少年は、目を見張るほどの強さを魅せるが、
なぜか最終盤で悪手を指し続ける・・・そこに隠された謎とはなにか?
被災地や被災者を考える上で、将棋という遊びの重要性、そして遙か昔より
言われているプライバシーや性の問題を、こういう形でクローズアップしたのは
今までないのではないでしょうか。初手からとんでもない作品です。
後者は「詰め将棋」の問題を考える一編。園田光晴という少年からの詰め将棋の
問題に悩む常坂と、編集長の金城。この手順では詰まないのに、彼はなぜ
頑なにこの手順を変えないのか。そこに潜む謎とは。
カルト宗教の洗脳による話と、詰め将棋という本来は王将が取られるのに、
現実には実際に取られないという常識を覆す作品。
フェアリー将棋というのは初めて聞きましたね。昔将棋部だったのに(笑
自分たちの常識だけでは捉えられないものが無数あるというのを、将棋で示した傑作でしょう。
珍しいところだと「恩返し」。駒師が主人公の話です。
芦沢先生、相当に将棋を勉強・取材されたんだろうなと思います。
また名短編集が誕生しましたね。
棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、
20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。
9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。
今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。
夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。
将棋ミステリとは思いませんでした。
全編そうです。そして各編色々共通しています。
しかし、将棋を主軸としつつ、ミステリとしての骨格は充分に素晴らしい。
特に「弱い者」と「ミイラ」は甲乙付けがたい傑作。
前者は震災被災地に、将棋教室のボランティアを行うため訪れた北上八段と石埜女流三段。
北上もかつて「被災者」だった経験を持つ。
北上と対局したある1人の少年は、目を見張るほどの強さを魅せるが、
なぜか最終盤で悪手を指し続ける・・・そこに隠された謎とはなにか?
被災地や被災者を考える上で、将棋という遊びの重要性、そして遙か昔より
言われているプライバシーや性の問題を、こういう形でクローズアップしたのは
今までないのではないでしょうか。初手からとんでもない作品です。
後者は「詰め将棋」の問題を考える一編。園田光晴という少年からの詰め将棋の
問題に悩む常坂と、編集長の金城。この手順では詰まないのに、彼はなぜ
頑なにこの手順を変えないのか。そこに潜む謎とは。
カルト宗教の洗脳による話と、詰め将棋という本来は王将が取られるのに、
現実には実際に取られないという常識を覆す作品。
フェアリー将棋というのは初めて聞きましたね。昔将棋部だったのに(笑
自分たちの常識だけでは捉えられないものが無数あるというのを、将棋で示した傑作でしょう。
珍しいところだと「恩返し」。駒師が主人公の話です。
芦沢先生、相当に将棋を勉強・取材されたんだろうなと思います。
また名短編集が誕生しましたね。
![神の悪手 (新潮文庫) [ 芦沢 央 ] 神の悪手 (新潮文庫) [ 芦沢 央 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4333/9784101014333_1_2.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 649 円
2024年07月14日
哀愁変奏曲
まずはAmazonさんの紹介ページから。
作曲家を夢みる二十五歳の石井栄志。
コンクールでは落選が続き、家にはピアノもないほど貧しかった。
と、そこに届いた本物のピアノ!
送り主である音楽事務所の片岡が訪ねてきて、
歌謡曲の編曲をして欲しいという。
生活のために引き受けた石井は、
人気歌手・進藤あゆみの曲を手がけることになり……(「ささやくピアノ」)。
人生は音楽と共にある。
哀愁漂うホラーサスペンス六篇を収録。
元々は集英社文庫から刊行されていたようで、その後徳間へ。
発売したばかりですが、一気に読んでしまいました。
いわゆる大団円やハッピーエンドとは違う、どの短編も
深い終わり方になっているというのが一番の感想です。
一番ホラー色が強いのは「シンバルの鳴る夜」
これはかなり怖い。
死んだ少年・純男がシンバルをうつ合図を待つ姿が見えた、
谷岡の恐怖はいかばりか。そしてその演奏が伝説として語り継がれていくという、
これ以上ない皮肉。
「イングリッシュホルンの嘆き」はラストが切なすぎる。
「弦の切れる日」だけが、唯一大団円的に終わるので、読んでいてほっとします。
「幻の鼓笛隊」は相当悲しい物語だけれども、こんな杜撰な工事をさせて
自分の見栄だけを重視するなんて、今でもありそうです。
「ささやくピアノ」は、まあ自業自得な面もあるけれど、
怖さと温かさが同居している作品ですね。
「ハープの影は黄昏に」が一番謎な作品かも。ホラーというより、SF。
彼女は若い時の主人公の母や叔母とともに写真に写っているので、
おそらく過去の亡くなっている女性なのだろうくらいしかわかりません。
なぜハーブを弾いているのか、どうして岐子の前に現れたのか(木戸を救うため?)
時間を戻せるのはなぜか。母や叔母とどういう関係なのか。
意図的にそのあたりを記さなかったのだと思います。
その方がSF的というか、赤川さん的です。しかし気になりました(笑
まだまだ多い未読の赤川次郎作品。これからも徳間文庫さん、お願いします!
作曲家を夢みる二十五歳の石井栄志。
コンクールでは落選が続き、家にはピアノもないほど貧しかった。
と、そこに届いた本物のピアノ!
送り主である音楽事務所の片岡が訪ねてきて、
歌謡曲の編曲をして欲しいという。
生活のために引き受けた石井は、
人気歌手・進藤あゆみの曲を手がけることになり……(「ささやくピアノ」)。
人生は音楽と共にある。
哀愁漂うホラーサスペンス六篇を収録。
元々は集英社文庫から刊行されていたようで、その後徳間へ。
発売したばかりですが、一気に読んでしまいました。
いわゆる大団円やハッピーエンドとは違う、どの短編も
深い終わり方になっているというのが一番の感想です。
一番ホラー色が強いのは「シンバルの鳴る夜」
これはかなり怖い。
死んだ少年・純男がシンバルをうつ合図を待つ姿が見えた、
谷岡の恐怖はいかばりか。そしてその演奏が伝説として語り継がれていくという、
これ以上ない皮肉。
「イングリッシュホルンの嘆き」はラストが切なすぎる。
「弦の切れる日」だけが、唯一大団円的に終わるので、読んでいてほっとします。
「幻の鼓笛隊」は相当悲しい物語だけれども、こんな杜撰な工事をさせて
自分の見栄だけを重視するなんて、今でもありそうです。
「ささやくピアノ」は、まあ自業自得な面もあるけれど、
怖さと温かさが同居している作品ですね。
「ハープの影は黄昏に」が一番謎な作品かも。ホラーというより、SF。
彼女は若い時の主人公の母や叔母とともに写真に写っているので、
おそらく過去の亡くなっている女性なのだろうくらいしかわかりません。
なぜハーブを弾いているのか、どうして岐子の前に現れたのか(木戸を救うため?)
時間を戻せるのはなぜか。母や叔母とどういう関係なのか。
意図的にそのあたりを記さなかったのだと思います。
その方がSF的というか、赤川さん的です。しかし気になりました(笑
まだまだ多い未読の赤川次郎作品。これからも徳間文庫さん、お願いします!
![哀愁変奏曲 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 哀愁変奏曲 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/9532/9784198949532_1_3.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 924 円
2024年07月06日
天の川の舟乗り-名探偵音野順の事件簿
まずはAmazonさんの紹介ページから。
引きこもりがちな名探偵、今日もおずおず謎を解く。
怪盗からの犯行予告当日に起こる密室殺人、
湖の巨大生物に殺されたかのような死体……
全4編を収録した、大人気シリーズ第3の事件簿!
金塊を祭る村に怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。
金塊がなくなると観光客が来なくなると危惧した村の有力者の娘は
名探偵音野と助手の白瀬に監視を依頼する。
しかし、警戒する二人の前で起こったのは密室殺人で……
大胆なトリックと切実な動機が胸を打つ表題作など4編を収録。
引きこもりがちな名探偵が活躍する、大人気シリーズ第3弾。解説=青柳碧人
若干ネタバレあり。
超久しぶりのシリーズ続編となった、引きこもり探偵・音野順の事件簿。
最初の「人形の村」は、音野が引きこもりであることを、改めて思い出させる(?)
かのような事件。依頼人から話を聞き、事務所でその謎を解きます。
もっとも、これは多重解決モノとも実は捉える事ができて、依頼人である旗野を納得
させるだけの充分な説得力をもった推理とも言えます。
解説の青柳さんが言われるように、全編が「オカルト」なんです。
で一発目がこの作品で、かなりおどろおどろしい村に、髪の伸びる人形・・・
一方で、そもそも旗野は何を経験したのかという、ホワットダニットでもある。
表題作は最終話に繋がる作品であり、収録中最長編。かつ「物理の北山」本領発揮作。
なるほどレールか・・・島田御大のある作品を思い出しました。
また、最終話「マッシー再び」でも、同じように「物理の」が炸裂。
いずれもハウダニットの快作でしょう。
しかし、金塊が偽物だと犯人たちは気付かなかったのか?(笑
「怪盗対音野要」は、順の兄である音野要が活躍する物語。
古城を舞台に、バーンズ城の怪人と対峙します。
こちらも「物理の北山」が炸裂。カーペットのトリックはお見事。
一瞬「金田一少年の事件簿」オペラ座館殺人事件を思い出しましたが、
あのトリックとは違いました。
これを機会に、ぜひシリーズをまた続けてほしい。そしていつの日か、
海外での兄弟揃い踏みが見られるのを期待したいです。
引きこもりがちな名探偵、今日もおずおず謎を解く。
怪盗からの犯行予告当日に起こる密室殺人、
湖の巨大生物に殺されたかのような死体……
全4編を収録した、大人気シリーズ第3の事件簿!
金塊を祭る村に怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。
金塊がなくなると観光客が来なくなると危惧した村の有力者の娘は
名探偵音野と助手の白瀬に監視を依頼する。
しかし、警戒する二人の前で起こったのは密室殺人で……
大胆なトリックと切実な動機が胸を打つ表題作など4編を収録。
引きこもりがちな名探偵が活躍する、大人気シリーズ第3弾。解説=青柳碧人
若干ネタバレあり。
超久しぶりのシリーズ続編となった、引きこもり探偵・音野順の事件簿。
最初の「人形の村」は、音野が引きこもりであることを、改めて思い出させる(?)
かのような事件。依頼人から話を聞き、事務所でその謎を解きます。
もっとも、これは多重解決モノとも実は捉える事ができて、依頼人である旗野を納得
させるだけの充分な説得力をもった推理とも言えます。
解説の青柳さんが言われるように、全編が「オカルト」なんです。
で一発目がこの作品で、かなりおどろおどろしい村に、髪の伸びる人形・・・
一方で、そもそも旗野は何を経験したのかという、ホワットダニットでもある。
表題作は最終話に繋がる作品であり、収録中最長編。かつ「物理の北山」本領発揮作。
なるほどレールか・・・島田御大のある作品を思い出しました。
また、最終話「マッシー再び」でも、同じように「物理の」が炸裂。
いずれもハウダニットの快作でしょう。
しかし、金塊が偽物だと犯人たちは気付かなかったのか?(笑
「怪盗対音野要」は、順の兄である音野要が活躍する物語。
古城を舞台に、バーンズ城の怪人と対峙します。
こちらも「物理の北山」が炸裂。カーペットのトリックはお見事。
一瞬「金田一少年の事件簿」オペラ座館殺人事件を思い出しましたが、
あのトリックとは違いました。
これを機会に、ぜひシリーズをまた続けてほしい。そしていつの日か、
海外での兄弟揃い踏みが見られるのを期待したいです。
2024年06月30日
レイトン・コートの謎
まずはAmazonさんの紹介ページから。
バークリーの探偵小説愛がストレートに出た秀作。――法月綸太郎
密室状態の書斎で発見された死体。
拳銃自殺と考えるには何かが不自然で・・・・・・
名探偵ロジャー・シェリンガム初登場!
田舎屋敷レイトン・コートの書斎で、額を撃ち抜かれた主人の死体が発見された。
現場は密室状態で遺書も残されており、警察の見解が自殺に傾くなか、
死体の奇妙な点に注目した作家ロジャー・シェリンガムは殺人説を主張する。
友人アレックを助手として、自信満々で調査に取りかかったが……。
想像力溢れる推理とフェアプレイの実践。英国探偵小説黄金期の巨匠の記念すべき第一作。
序文=アントニイ・バークリー/解説=法月綸太郎
バークリーといえば『毒入りチョコレート事件』が超有名で、多重解決の嚆矢
といっても過言ではありません。
と言いつつも、私は初めてバークリー作品を読むんですが。
とにかくホームズ&ワトソンがそこかしこに登場します。
シェリンガム=ホームズとアレック・ワトソンとしてですが。
執筆された時代を感じます。
シェリンガム、とにかく数々の推理を試みます。
まあ、途中のプリンス事件はかなり面白いのですが、これ、シェリンガムたちを
騙そうとしていたわけではないんだろうと思いますが、これは騙されますなあ。
途中いきなり競馬の1着・2着という記載が出てきて、笑いました。
彼はしゃべりながら思考しつつ、そして正解の推理を辿っていくタイプなのかも。
解説を書かれた法月綸太郎先生のシリーズ探偵・法月綸太郎にかなり近い。
先生も参考にされたんでしょうか。
アレックとの何気ない会話の中に、非常に重要な意味合いがあるというのが
これはもうネタバレなのですが、実に巧妙で上手い。
最初の約束が、最終版の最後の一撃に似た驚きを与えてくれます。
すでに『最上階の殺人』も購入済みなので、こちらも楽しみです。
バークリーの探偵小説愛がストレートに出た秀作。――法月綸太郎
密室状態の書斎で発見された死体。
拳銃自殺と考えるには何かが不自然で・・・・・・
名探偵ロジャー・シェリンガム初登場!
田舎屋敷レイトン・コートの書斎で、額を撃ち抜かれた主人の死体が発見された。
現場は密室状態で遺書も残されており、警察の見解が自殺に傾くなか、
死体の奇妙な点に注目した作家ロジャー・シェリンガムは殺人説を主張する。
友人アレックを助手として、自信満々で調査に取りかかったが……。
想像力溢れる推理とフェアプレイの実践。英国探偵小説黄金期の巨匠の記念すべき第一作。
序文=アントニイ・バークリー/解説=法月綸太郎
バークリーといえば『毒入りチョコレート事件』が超有名で、多重解決の嚆矢
といっても過言ではありません。
と言いつつも、私は初めてバークリー作品を読むんですが。
とにかくホームズ&ワトソンがそこかしこに登場します。
シェリンガム=ホームズとアレック・ワトソンとしてですが。
執筆された時代を感じます。
シェリンガム、とにかく数々の推理を試みます。
まあ、途中のプリンス事件はかなり面白いのですが、これ、シェリンガムたちを
騙そうとしていたわけではないんだろうと思いますが、これは騙されますなあ。
途中いきなり競馬の1着・2着という記載が出てきて、笑いました。
彼はしゃべりながら思考しつつ、そして正解の推理を辿っていくタイプなのかも。
解説を書かれた法月綸太郎先生のシリーズ探偵・法月綸太郎にかなり近い。
先生も参考にされたんでしょうか。
アレックとの何気ない会話の中に、非常に重要な意味合いがあるというのが
これはもうネタバレなのですが、実に巧妙で上手い。
最初の約束が、最終版の最後の一撃に似た驚きを与えてくれます。
すでに『最上階の殺人』も購入済みなので、こちらも楽しみです。
2024年06月23日
雷神
まずはAmazonさんの紹介ページから。
ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、
娘の夕見から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、
痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。(解説・香山二三郎)
超が付くほど久しぶりに道尾秀介先生の作品を読みました。
デビュー作『背の眼』に始まる真備庄介シリーズは読んでいたのですが、
ノンシリーズはほとんどでした。
たまたまオススメに出てきて、購入。
最初のミスリードが秀逸。この「勘違い」は主人公はおろか、読者も見抜けないでしょう。
しかも、この「勘違い」から物語が始まるという、何とも天の配剤ともいうべき所業。
彩根のいう、「少しの不運が、殺意を殺人に変えてしまう」という台詞も考えさせられます。
この物語でいう「少しの不運」とは何かを考える幸人ですが、そこに答えは見いだせない。
ミステリ的にみると、羽田上村の殺人事件は警察が少し無能な気がしましたね(笑
村中捜索しないとねえ・・・
犯人が誰なのかは本気でわかりませんでした(汗)
一方で、動機がかなりぼやかしてあるというか、亜沙実と幸人の母親がなぜ亡くなったのか、
最後まで(直接的な)描写はなく、亜沙実に伝えた遺言や父親との最後の会話など、
若干曖昧さが残るところがあるなあと感じました。
物語としては実は結局何も解決しておらず、幸人は夕見とこの謎をずっと抱えていくのと、
幸人は夕見には語れない、最初のミスリードの真実も抱えていくことになり、
それを共有できうる姉の死去で、辛い立場にさらに追い込まれていくのが、なんとも。
犯人の復讐は果たせた(と思っている)ものの、加害者側(とされる)が罪の意識などに
さいなまれることもなく、というのもややモヤモヤが残りますね。
この「神」シリーズ、第3弾のようで、前の2作もそのうち購入しようかと。
ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、
娘の夕見から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、
痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。(解説・香山二三郎)
超が付くほど久しぶりに道尾秀介先生の作品を読みました。
デビュー作『背の眼』に始まる真備庄介シリーズは読んでいたのですが、
ノンシリーズはほとんどでした。
たまたまオススメに出てきて、購入。
最初のミスリードが秀逸。この「勘違い」は主人公はおろか、読者も見抜けないでしょう。
しかも、この「勘違い」から物語が始まるという、何とも天の配剤ともいうべき所業。
彩根のいう、「少しの不運が、殺意を殺人に変えてしまう」という台詞も考えさせられます。
この物語でいう「少しの不運」とは何かを考える幸人ですが、そこに答えは見いだせない。
ミステリ的にみると、羽田上村の殺人事件は警察が少し無能な気がしましたね(笑
村中捜索しないとねえ・・・
犯人が誰なのかは本気でわかりませんでした(汗)
一方で、動機がかなりぼやかしてあるというか、亜沙実と幸人の母親がなぜ亡くなったのか、
最後まで(直接的な)描写はなく、亜沙実に伝えた遺言や父親との最後の会話など、
若干曖昧さが残るところがあるなあと感じました。
物語としては実は結局何も解決しておらず、幸人は夕見とこの謎をずっと抱えていくのと、
幸人は夕見には語れない、最初のミスリードの真実も抱えていくことになり、
それを共有できうる姉の死去で、辛い立場にさらに追い込まれていくのが、なんとも。
犯人の復讐は果たせた(と思っている)ものの、加害者側(とされる)が罪の意識などに
さいなまれることもなく、というのもややモヤモヤが残りますね。
この「神」シリーズ、第3弾のようで、前の2作もそのうち購入しようかと。
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