2024年09月22日

くらのかみ

まずはAmazonさんの紹介ページから。

行者に祟られ、座敷童子に守られているという古い屋敷に、
後継者選びのため親族一同が集められた。
この家では子どもは生まれても育たないという。

夕食時、後継ぎの資格をもつ者のお膳に毒が入れられる。
夜中に響く読経、子らを沼に誘う人魂。
相次ぐ怪異は祟りか因縁かそれとも──。

小野不由美の隠れた名作。

「ミステリーランド」第1回配本。超がつくほど、20数年ぶりの文庫化。
解説の大矢博子さんが言うように、確かに本書は「ミステリーランド」レーベルに
相応しい作品です。

かつて自分もジュブナイルを数多く読んでましたが、今はどのくらい刊行されて
いるんですかねえ。青い鳥文庫とかポプラ文庫とか、子ども向けミステリも
刊行されてるとは思いますが。
ジュブナイル版のホームズやポワロを数多く読みました。それが今のミステリ好き
に繋がっている気がします。

さて、本書は最初からクライマックスという感じで、「四人ゲーム」をした
子どもたち。いつの間にか4人から5人へ増えていた・・・
座敷童子?この淵屋家にいる神様「くらのかみ」なのか。

子どもが5人に増えたこと、大人達がそれに気付かないこと、これらは怪異として
読者にはその謎を解くことは難しい。
しかし、その後起こる「事件」は、本格ミステリばりに子どもたちが活躍します。
アリバイがない人物、時系列に書かれるノート、罠を仕掛ける・・・
とにかく子どもたちが大人顔負けの行動力と推理力を発揮します。

事件の真相は、子どもが増えたことと密接に関係していて、
そもそも、最後に座敷童子が言った言葉はどういう意味だったのか、
読む人によって、ラストはかなりあっさりと思うかもしれませんが、
あくまでジュブナイル(を主な対象)で考えれば、非常に良く出来ています。

イッキ読してしまいました。こういう作品、増えて欲しいですね。


くらのかみ (講談社文庫 む 81-10)

くらのかみ (講談社文庫 む 81-10)

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/07/12
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 18:43| Comment(1) | 小野不由美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月15日

五人目の告白―小林泰三ミステリ傑作選

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「僕は実はもう一つ情報源を持っている。
つまり、僕自身の知識だ。
この知識によって今までの推理はすべて覆る」

語り≒騙りがもたらす驚愕のラスト
『アリス殺し』の鬼才が技巧を凝らす6編

自分の中には凶悪な人格が眠っている──記憶にない動物殺しや対人トラブルに苦しむ青年は、
ノートを介して「敵対者」との対話を試みるが、忌まわしき存在はついに殺人にまで手を染め……
二重三重のどんでん返しが待ち受ける「獣の記憶」をはじめ、全六編の掌短編を収録。
読む者を巧みに翻弄し、独自のロジック×ゴシック世界へといざなう、
『アリス殺し』の鬼才の真骨頂がここに。解説=田中啓文

小林泰三が亡くなられて、もう4年も経つのかと。
『○○殺し』はぜひ完結させてほしかったです。残念ですね。

本書はミステリ傑作選となってますが、いつもの小林節で、グロとSFがかなり
前面に出ています。
「双生児」は、ミステリ色が強い気がしますが、そもそも真帆の感じる疑問は
双子なら、少しは思ったことがあるのかもしれません。
ある意味では、SF=少し・不思議というSFから、小林ワールドのSFに変化していく
過程が読めます。

「攫われて」が一番きつい作品ですね。世界が一気に反転するんだけど、
そこで待つのは最悪の結末・・・
愁眉をあえて挙げれば「独裁者の掟」。世界は独特なものなのに、
ミステリ的な解決がしっかりしているのが素晴らしい。

これからも小林先生の作品を読み続けていきたいと思います。


五人目の告白: 小林泰三ミステリ傑作選 (創元推理文庫)

五人目の告白: 小林泰三ミステリ傑作選 (創元推理文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2024/07/19
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 18:55| Comment(1) | 小林泰三 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月11日

神無迷路

まずはマイニンテンドーストアさんの紹介ページから。

世界と隔絶した地下の研究施設、閉鎖環境での連続殺人。神の気配もない深淵、
迷路のごとく交錯し拡がる平行世界。幻のような幸せへの扉、何処にあるでしょうか。

「人は同時に2つの扉を通り抜けることができるか?」

ジャンルはテキストアドベンチャーですが、サウンドノベルです。
しかも500円という破格の値段にもかかわらず、フルボイス。

が、問題はそこではなく、本作は今年発売30年を迎える「かまいたちの夜」リスペクト
かつオマージュ作品なのですね。
シルエットで描かれる人物、謎の地下研究所に閉じ込められる主人公たち。
そして起こる殺人事件・・・果たして真相は?

とにかく青いシルエットが、「かまいたちの夜」にしか見えません。
思い出補正もありますが、昨今珍しい、本格的なサウンドノベル。

しかし、「かまいたちの夜」と違うのは、本作が究極的には謎解きに主眼を
おいているのではないところでしょうか。SFサスペンスあるいはSFミステリ。

紹介文にある、迷路のように広がる平行世界というのがそれを表現しています。
最初にプレイすると、異常に量子力学とかブラックホールが~宇宙物理学とか、
その辺りの説明が一気になされます。

主人公はゲームを進めていくと、選べなかった選択肢のロックが外れ、
新たなフローチャートに行くことができます。
まあ、こう書くといわゆるサウンドノベルなんです。

ただ、本作は上記の科学や平行世界というのを取り入れたことで、
ある意味、サウンドノベルの核心を突いた作品になのではないかと思いました。

本来、「かまいたちの夜」ならば、ミステリ編の透とスパイ編の透は
透は同じ人物ですが、体験した事や、そもそも世界が違います。
(真理を始めとする登場人物たちは姿形は同じでも、別世界で生きるその人たち)

ところが、この「神無迷路」では、そうした枝分かれした際の記憶が
そのまま次の世界へも引き継がれているため、最終的に全ての世界の物語のエンドに
辿り着くという(説明が合っているか非常に怪しいです)。

ミステリ編の透をクリアし、スパイ編の透をしたとき、その透はミステリ編の
記憶も保持しているため、スパイ編で相当な違和感を感じる筈です。
本作はその違和感(というか作中では特異体質)を逆手に取って、
上手く物語にしているわけです。

だからこそ、最後のエンディングがあるんだろうと思います。
個人的にはなぜ幼馴染みが生きていたのかよくわかりませんでしたが・・・
(元々亡くなって亡かった?)

すでに大きくネタバレしているのであれですが、
「かまいたちの夜」リスペクト&オマージュ作品として、ミステリを期待しては
いけないところが注意ですね。
ただ、価格を考えたら、充分買いだと思います。
posted by コースケ at 22:25| Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月08日

夜の蔵書家-古本屋探偵の事件簿

まずはAmazonさんの紹介ページから。

本の街・神保町で古本屋を営む須藤の元に、著名な蔵書家から三十年近く前に失踪したある人物を
探して欲しいという依頼が舞い込んだ。その人物の名は森田一郎といい、
闇市の時代に日本の文化復興に尽力するという名目で稀覯書――猥褻文書出版に携わり、
結局は検挙され有罪となったのち、姿を消したという。
左翼劇団の俳優や中国のスパイだったという噂のある謎の男を、
須藤は古書を糸口に探索に乗り出す。ロス・マクドナルドを彷彿とさせる傑作長編。
(『古本屋探偵の事件簿』分冊版)


更新が止まってました。
秋の夜長の読書とはまだまだいかず、いつまで続くこの残暑という。

『古本屋探偵登場』に続く、須藤を主人公としたシリーズ第2弾にして、長編作品。
今回は、古書の捜索ではなく、かつて稀覯書を出版していた人物。
古書を探すのとは違い、人捜し。須藤は本当の探偵となるか?

説明文にある、ロス・マクドナルドといえば、リュウ・アーチャーシリーズですね。
もちろん、サム・スペードやフィリップ・マーロウ等々、多くのハードボイルド探偵
は居ます。リュウはマーロウと並ぶハードボイルド探偵の1人と言えるでしょう。
須藤は活躍作は少ないものの、それに比肩している、と個人的には。

直接的には関係ないものの、デパートの古書店フェアに、なだれ込むマニア達。
「いまごろ良識なんて言っても遅い!」「ノンストップ!」「止めたら殺すぞ」
いやあ、いいですねえ(笑)。良識は持って欲しいけど、他のものでも似たような場面は
当然見るんだけど、当時の古本屋界隈もこんな感じだったんですかねえ。

あと、須藤の実質的な師匠である小高根閑一がいいです。
須藤への警鐘を事あるごとに述べます。「人間を追うということは、本を探すということと違う」
どこまでやる気かね?、と。

森田一郎、水死体で上がったのか、印刷工と一人二役だったのか、様々な情報を
須藤は集めていきます。そして、森田が疑われた偽札事件の謎へも知らず知らずに・・・

最後の結末はあっさりしているので、捉え方は人それぞれかもしれません。
(須藤や小高根閑一による余韻が私は欲しかったかなあという意見)

いよいよ次は『神保町の怪人』。この世界にもっと浸りたい。


夜の蔵書家: 古本屋探偵の事件簿 (創元推理文庫)

夜の蔵書家: 古本屋探偵の事件簿 (創元推理文庫)

  • 作者: 紀田 順一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/09/28
  • メディア: 文庫
posted by コースケ at 18:37| Comment(1) | 紀田順一郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月25日

遅刻して来た幽霊

まずはAmazonさんの紹介ページから。

〈この恨みは、死んでも必ず残る。きっと、化けて出てやる。〉と書き遺して自殺した新入社員。
その後を追うように身を投げた上司。関連のなさそうな連続死の謎を
二人の女子社員が追う――(表題作)

平穏で幸福な未来を願う人々に、ある日突然、殺意が牙をむく。
先の読めない展開とまさかの結末に背筋が凍る傑作短編小説6篇。
事件の真相が明らかになるとき、凍りついた心は涙で溶かされる。

相変わらず、上手いタイトルを付けますよね。赤川次郎先生は。
幽霊が遅刻とはどういう意味なのか。草木も眠る丑三つ時、今で言う午前2時に
出ず、もっと遅く化けて出たのか?とか、タイトルだけで色々興味を惹かれてしまいます。

主人公は徳田実子、しかし探偵役は会社の後輩にあたる水木貞代。
田代という新入社員が会社への怨みを書いた遺書を書いて自殺し、
その後、実子が所属している課の大崎課長まで亡くなる。
そういえば、葬儀で田代によく似た人を見かけたが・・・果たして事件の真相は?

「子供のころ、私のヒーローは、エラリー・クイーンだったんですもの」という
貞代の台詞がよい。死んだ人間が生きていた?立て続けの自殺?
奇妙な謎にクイーンばりの名推理を発揮します。

本書所収作の愁眉は非常に難しい。ミステリ的な面では表題作と「幕間に死す」。
後者は過去の事件を解き明かす名短編で、最後に明かされる真相があまりに哀しい。

『ふたり』などに代表されるSF作品に連なるのが「相似形の明日」
これも非常に哀しい話なのですが、それ以上に不思議な話でもあります。
自分の痛みは自分で引き受ける、晴子の最後の台詞が素晴らしい。


遅刻して来た幽霊 (中公文庫 あ 10-18)

遅刻して来た幽霊 (中公文庫 あ 10-18)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2024/03/19
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 20:51| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月18日

#真相をお話しします

まずはAmazonさんの紹介ページから。

島育ちの仲良し小学生四人組。
あの日「ゆーちゅーばー」になることを夢見た僕らの末路は……(「#拡散希望」)。
マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師。
精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。
新時代のミステリの旗手による、どんでん返しの五連撃。
日本推理作家協会賞受賞作を含む、傑作短編集。(解説・村上貴史)


以下、ネタバレありです。






名作揃いです。
SNS、キラキラネーム、マッチングアプリ、リモート、精子提供、Youtubeと、
現在の主要な話題、流行を全ての短編に使用していて、現在のミステリというのが
極めて強く出ています。
その意味での名作揃い。

「惨者面談」は、うーん、あえて私は「キラキラネーム」という区分で
紹介したのですが、それは名前の呼び方が本作での鍵だからです。
(別にキラキラネームは登場しません。むしろそれは「#拡散希望」ですね。)

むしろ、3名のうち、2名がその家と関係ないというところが、
現代的なのかもしれませんね。

「ヤリモク」は、そもそも「ヤリ」とは何かというところを突いた盲点的な作品。
最後に主人公にとっては、悲劇が起こりますが・・・

「パンドラ」は何とも言いようがない作品。
まあ、血液型は普通事前に確認するだろうという感想しかない。

「三角奸計」はリモート飲み会を上手く使った作品。
しかし、「ヤリモク」も「パンドラ」もそうですが、この3作品ともヤバイ人が
登場しますね。

「♯拡散希望」は、人口の少ない島で暮らす、たった4人しか居ない小学生の物語。
これは、いやあ、現実に起きていてもおかしくない話ですね。
でも、彼彼女たちの親は、子どもが大きくなった時、どうバレないように
するつもりだったのだろうか。
とてもじゃないですが、中学生になれば、さすがにわかるでしょう。
(島外に出る機会があれば、当然触れるはず。)
ある意味期間限定で、親たちはやるつもりだったのかもしれませんが、
その前にバレてしまったのか。

しかし、この島を見つけて突撃してきた人を殺害するというのが
もはや常軌を逸してますね。
でもこれも、もうフィクションです、では通らない世の中になっていると思いますが。



#真相をお話しします(新潮文庫)

#真相をお話しします(新潮文庫)

  • 作者: 結城真一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/06/26
  • メディア: Kindle版




posted by コースケ at 21:06| Comment(1) | 結城真一郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月11日

花嫁、街道を行く

まずはAmazonさんの紹介ページから。

彼女はどこへ行った?
事件は日本からドイツへ!
ひょんなことから探偵事務所を開くことになった女子大生・亜由美。
そこへ、行方不明になったツアコンの久美子を探して欲しいと依頼が舞い込む。
手がかりを探し、たどりついたのは、ある国の大使館。久美子を発見するが、
事件は思わぬ方向へ展開し、舞台はドイツ・ロマンチック街道へ! 
表題作ほか「あの夜の花嫁は、今」を収録。シリーズ第35弾。


シリーズも35弾ですか。赤川先生のはどれも長寿シリーズが多いですよね。
最近は大貫警部シリーズの新作が出ないので、かなり残念なのです。

本作も前作と同じく、この表題作は誰が花嫁なのか、よくわからず(笑
たぶん久美子がなるんだろうなという、少々かなりの想像を含みますが、
花嫁シリーズでなく、ノン・シリーズでもおかしくない。

最後の大団円的なところは、いくらなんでもあり得ないだろう!と
(ドイツへ行く過程も含め)思いますが、そこが赤川作品の面白さでもあります。

花嫁シリーズという意味では、「あの夜の花嫁は、今」の方が遥かにシリーズらしい。
しかも最後には2名も花嫁候補も登場しますからね。
ホテルの支配人である柳田が仕事を頼む半田や辻口、柳田はともかく、辻口は
中々面白い。さらに赤川作品の常連的な人物かもしれないベルボーイの大倉佑太も
良いキャラです。
でも大団円でないところ(いい意味で)がさらに面白いですね。
亜由美ももちろん主人公らしく頑張るのですが、本作では佑太としのぶの活躍には
及びません。この二人のちょっとした珍道中もよいのです。

谷川准教授との関係が、もう破局なのかそれとも・・・この辺りはぜひ描いてほしいです。


花嫁、街道を行く (実業之日本社文庫)

花嫁、街道を行く (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2024/04/05
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 00:10| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月03日

天狗屋敷の殺人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「これだから小説は面白い。」道尾秀介、お墨付き!

棺から消えた当主の遺体、天狗の毒矢、山奥の怪事件に秘められた“ありえない”規格外の“謎”
全ミステリファン瞠目の「新潮ミステリー大賞の隠し玉」
ヤンデレな恋人・翠に、婚約者として無理やり連れていかれた彼女の実家は、
山奥に立つ霊是(りょうぜ)一族の“天狗屋敷”だった。失踪した当主の遺言状開封、
莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。
奇怪な難事件を次々と解き明かすのは、あやしい「何でも屋」さん!?
「いつかまた会えたらいいね」――夏が来るたび思い出す、
あの陰惨な事件と、彼女の涙を。横溝正史へのオマージュに満ちた、ミステリの怪作。

「分からんのか? つまり、犬神家状態ってわけだよ!」


以下、ややネタバレです。






「分からんのか?つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
この台詞に惹かれて購入しました(笑
犬神家状態!それで通じるのがミステリ好きという。

「新潮ミステリー大賞」というのは初めて知りました。
もう10年ですから、そこそこの歴史ですよね。
本書は、2023年の第10回の最終候補(つまり大賞受賞作品ではない)ものを
文庫で刊行されたという、(社内でどういう協議がされたのか不明ですが)
中々すごいですね。


ワトソン役である古賀鳴海の彼女である平澤翠。今度本家にて、遺産相続にかかる
遺言書が開封されるという。鳴海のバイト先である<なんでも屋>樋山忍も、
上記の台詞を発し、適当な理由をつけて同行することに。
遺言書が開封された後に起こる奇怪な殺人事件。
果たして犯人は?

という感じでしょうか(苦笑・すいません)
まず、翠という女性の方が怖い(笑)
鳴海にかつての自分が体験(やったであろうこと)を語るのですが、それがあるとしても、
行動が恐ろしい。最後は幸せな姿を鳴海と忍に見せてくれるのですが、
夫となる方は、やっていけるのかなあ・・・
(事件解決後に、雰囲気が変わった描写はありますが)


横溝正史先生へのオマージュにあふれたとありますが、
それはこの旧家の霊是家と遺言書。トリックは島田荘司御大の奇想天外・大がかりなトリック
へのオマージュだと思います。
ただし、このトリックは犯人の告白を読めば「プロバビリティ-の犯罪」であることが
判明します。ここは結構捻ってるなあと思いました。

問題なのは、このトリックは詳しく説明されているのですが、図がないのが致命的。
2つめの殺人のトリックは、絵図付き解説がないと、かなり難解(というかわからん)。

犯人はほぼ(アリバイは考えずとも)分かると思います。
動機はあれだろうと見当が付くので。
ところがこれも動機という面では、強固かと思いきや、犯人の告白では全然動機も
実は無いというオチ。
(だからこその「プロバビリティーの犯罪」なのですが)。

次は「7人ミサキ連続殺人事件」だそうなので(タイトル的に興味深い・笑)、
こちらも、もし刊行されたら読んで見たいと思います。


天狗屋敷の殺人(新潮文庫nex)

天狗屋敷の殺人(新潮文庫nex)

  • 作者: 大神晃
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/05/29
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 21:03| Comment(1) | 大神晃 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月28日

楽屋の蟹ー中村雅楽と日常の謎

まずはAmazonさんの紹介ページから。

歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ精選の11編を収録。

中村雅楽が挑む数々の日常の謎。日常の謎でも老探偵は飄々と謎を解きます。
「團十郎切腹事件」は歌舞伎役者ならではの謎解きですね。
これは中村雅楽シリーズだからこそ書けた傑作だと思います。

「グリーン車の子供」も同様。中村雅楽ではなく、隣り合わせた少女の芝居が秀逸。
この筋立てを考えた宝来屋もお見事。
解説では、本作で雅樂たちが乗車していた新幹線にまつわる話が登場するのですが、
これはかなり面白い。なるほど、食堂車か。今や懐かしい(というか私も知りませんが)
ですねえ。

「目黒の狂女」も面白い。いわゆる「奇妙な味」というタイプで、
雅樂の謎解きも鮮やかです。

唯一、雅樂が竹野の前で涙をみせた「むかしの弟子」。解説の新保博久さんも
書いているように、中村雅楽シリーズ最終作と言われても、誰もが納得する
作品ではないかと思います。

『等々力座殺人事件』と比して、中村雅楽も竹野も齢を重ねています。
竹野はいつの間にか嘱託社員的な立場に、中村雅楽もかなりの高齢に。
作者自身、第1作で雅楽を高齢にしすぎて・・・と書かれているので
(ポワロと同じような感じですね。)
相当な年齢になっているのでしょうが、そこを竹野の立場変化から
時間の経過を上手く現しています。

中村雅楽全集が手に入らない現在、本シリーズ第3作を望みます!


楽屋の蟹: 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫)

楽屋の蟹: 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2024/01/09
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 18:37| Comment(3) | 戸坂康二 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月21日

神の悪手

まずはAmazonさんの紹介ページから。

棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、
20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。
9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。
今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。
夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。


将棋ミステリとは思いませんでした。
全編そうです。そして各編色々共通しています。

しかし、将棋を主軸としつつ、ミステリとしての骨格は充分に素晴らしい。
特に「弱い者」と「ミイラ」は甲乙付けがたい傑作。

前者は震災被災地に、将棋教室のボランティアを行うため訪れた北上八段と石埜女流三段。
北上もかつて「被災者」だった経験を持つ。
北上と対局したある1人の少年は、目を見張るほどの強さを魅せるが、
なぜか最終盤で悪手を指し続ける・・・そこに隠された謎とはなにか?

被災地や被災者を考える上で、将棋という遊びの重要性、そして遙か昔より
言われているプライバシーや性の問題を、こういう形でクローズアップしたのは
今までないのではないでしょうか。初手からとんでもない作品です。

後者は「詰め将棋」の問題を考える一編。園田光晴という少年からの詰め将棋の
問題に悩む常坂と、編集長の金城。この手順では詰まないのに、彼はなぜ
頑なにこの手順を変えないのか。そこに潜む謎とは。

カルト宗教の洗脳による話と、詰め将棋という本来は王将が取られるのに、
現実には実際に取られないという常識を覆す作品。
フェアリー将棋というのは初めて聞きましたね。昔将棋部だったのに(笑
自分たちの常識だけでは捉えられないものが無数あるというのを、将棋で示した傑作でしょう。

珍しいところだと「恩返し」。駒師が主人公の話です。

芦沢先生、相当に将棋を勉強・取材されたんだろうなと思います。
また名短編集が誕生しましたね。


神の悪手(新潮文庫)

神の悪手(新潮文庫)

  • 作者: 芦沢央
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/05/29
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 22:17| Comment(1) | 芦沢央 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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