2024年07月14日

哀愁変奏曲

まずはAmazonさんの紹介ページから。

作曲家を夢みる二十五歳の石井栄志。
コンクールでは落選が続き、家にはピアノもないほど貧しかった。
と、そこに届いた本物のピアノ!
送り主である音楽事務所の片岡が訪ねてきて、
歌謡曲の編曲をして欲しいという。
生活のために引き受けた石井は、
人気歌手・進藤あゆみの曲を手がけることになり……(「ささやくピアノ」)。

人生は音楽と共にある。
哀愁漂うホラーサスペンス六篇を収録。

元々は集英社文庫から刊行されていたようで、その後徳間へ。
発売したばかりですが、一気に読んでしまいました。

いわゆる大団円やハッピーエンドとは違う、どの短編も
深い終わり方になっているというのが一番の感想です。

一番ホラー色が強いのは「シンバルの鳴る夜」
これはかなり怖い。
死んだ少年・純男がシンバルをうつ合図を待つ姿が見えた、
谷岡の恐怖はいかばりか。そしてその演奏が伝説として語り継がれていくという、
これ以上ない皮肉。

「イングリッシュホルンの嘆き」はラストが切なすぎる。
「弦の切れる日」だけが、唯一大団円的に終わるので、読んでいてほっとします。

「幻の鼓笛隊」は相当悲しい物語だけれども、こんな杜撰な工事をさせて
自分の見栄だけを重視するなんて、今でもありそうです。

「ささやくピアノ」は、まあ自業自得な面もあるけれど、
怖さと温かさが同居している作品ですね。

「ハープの影は黄昏に」が一番謎な作品かも。ホラーというより、SF。
彼女は若い時の主人公の母や叔母とともに写真に写っているので、
おそらく過去の亡くなっている女性なのだろうくらいしかわかりません。

なぜハーブを弾いているのか、どうして岐子の前に現れたのか(木戸を救うため?)
時間を戻せるのはなぜか。母や叔母とどういう関係なのか。
意図的にそのあたりを記さなかったのだと思います。
その方がSF的というか、赤川さん的です。しかし気になりました(笑

まだまだ多い未読の赤川次郎作品。これからも徳間文庫さん、お願いします!


哀愁変奏曲 (徳間文庫)

哀愁変奏曲 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2024/07/11
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 00:04| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月06日

天の川の舟乗り-名探偵音野順の事件簿

まずはAmazonさんの紹介ページから。

引きこもりがちな名探偵、今日もおずおず謎を解く。
怪盗からの犯行予告当日に起こる密室殺人、
湖の巨大生物に殺されたかのような死体……
全4編を収録した、大人気シリーズ第3の事件簿!

金塊を祭る村に怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。
金塊がなくなると観光客が来なくなると危惧した村の有力者の娘は
名探偵音野と助手の白瀬に監視を依頼する。
しかし、警戒する二人の前で起こったのは密室殺人で……
大胆なトリックと切実な動機が胸を打つ表題作など4編を収録。
引きこもりがちな名探偵が活躍する、大人気シリーズ第3弾。解説=青柳碧人


若干ネタバレあり。





超久しぶりのシリーズ続編となった、引きこもり探偵・音野順の事件簿。
最初の「人形の村」は、音野が引きこもりであることを、改めて思い出させる(?)
かのような事件。依頼人から話を聞き、事務所でその謎を解きます。
もっとも、これは多重解決モノとも実は捉える事ができて、依頼人である旗野を納得
させるだけの充分な説得力をもった推理とも言えます。

解説の青柳さんが言われるように、全編が「オカルト」なんです。
で一発目がこの作品で、かなりおどろおどろしい村に、髪の伸びる人形・・・
一方で、そもそも旗野は何を経験したのかという、ホワットダニットでもある。

表題作は最終話に繋がる作品であり、収録中最長編。かつ「物理の北山」本領発揮作。
なるほどレールか・・・島田御大のある作品を思い出しました。
また、最終話「マッシー再び」でも、同じように「物理の」が炸裂。
いずれもハウダニットの快作でしょう。
しかし、金塊が偽物だと犯人たちは気付かなかったのか?(笑

「怪盗対音野要」は、順の兄である音野要が活躍する物語。
古城を舞台に、バーンズ城の怪人と対峙します。
こちらも「物理の北山」が炸裂。カーペットのトリックはお見事。
一瞬「金田一少年の事件簿」オペラ座館殺人事件を思い出しましたが、
あのトリックとは違いました。

これを機会に、ぜひシリーズをまた続けてほしい。そしていつの日か、
海外での兄弟揃い踏みが見られるのを期待したいです。


天の川の舟乗り: 名探偵音野順の事件簿 (創元推理文庫)

天の川の舟乗り: 名探偵音野順の事件簿 (創元推理文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2024/02/17
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 21:44| Comment(1) | 北山猛邦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月30日

レイトン・コートの謎

まずはAmazonさんの紹介ページから。

バークリーの探偵小説愛がストレートに出た秀作。――法月綸太郎

密室状態の書斎で発見された死体。
拳銃自殺と考えるには何かが不自然で・・・・・・
名探偵ロジャー・シェリンガム初登場!

田舎屋敷レイトン・コートの書斎で、額を撃ち抜かれた主人の死体が発見された。
現場は密室状態で遺書も残されており、警察の見解が自殺に傾くなか、
死体の奇妙な点に注目した作家ロジャー・シェリンガムは殺人説を主張する。
友人アレックを助手として、自信満々で調査に取りかかったが……。
想像力溢れる推理とフェアプレイの実践。英国探偵小説黄金期の巨匠の記念すべき第一作。
序文=アントニイ・バークリー/解説=法月綸太郎


バークリーといえば『毒入りチョコレート事件』が超有名で、多重解決の嚆矢
といっても過言ではありません。
と言いつつも、私は初めてバークリー作品を読むんですが。

とにかくホームズ&ワトソンがそこかしこに登場します。
シェリンガム=ホームズとアレック・ワトソンとしてですが。
執筆された時代を感じます。

シェリンガム、とにかく数々の推理を試みます。
まあ、途中のプリンス事件はかなり面白いのですが、これ、シェリンガムたちを
騙そうとしていたわけではないんだろうと思いますが、これは騙されますなあ。
途中いきなり競馬の1着・2着という記載が出てきて、笑いました。

彼はしゃべりながら思考しつつ、そして正解の推理を辿っていくタイプなのかも。
解説を書かれた法月綸太郎先生のシリーズ探偵・法月綸太郎にかなり近い。
先生も参考にされたんでしょうか。

アレックとの何気ない会話の中に、非常に重要な意味合いがあるというのが
これはもうネタバレなのですが、実に巧妙で上手い。
最初の約束が、最終版の最後の一撃に似た驚きを与えてくれます。

すでに『最上階の殺人』も購入済みなので、こちらも楽しみです。


レイトン・コートの謎 (創元推理文庫)

レイトン・コートの謎 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/08/31
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 20:09| Comment(5) | 海外ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月23日

雷神

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、
娘の夕見から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、
痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。(解説・香山二三郎)

超が付くほど久しぶりに道尾秀介先生の作品を読みました。
デビュー作『背の眼』に始まる真備庄介シリーズは読んでいたのですが、
ノンシリーズはほとんどでした。
たまたまオススメに出てきて、購入。

最初のミスリードが秀逸。この「勘違い」は主人公はおろか、読者も見抜けないでしょう。
しかも、この「勘違い」から物語が始まるという、何とも天の配剤ともいうべき所業。

彩根のいう、「少しの不運が、殺意を殺人に変えてしまう」という台詞も考えさせられます。
この物語でいう「少しの不運」とは何かを考える幸人ですが、そこに答えは見いだせない。

ミステリ的にみると、羽田上村の殺人事件は警察が少し無能な気がしましたね(笑
村中捜索しないとねえ・・・
犯人が誰なのかは本気でわかりませんでした(汗)
一方で、動機がかなりぼやかしてあるというか、亜沙実と幸人の母親がなぜ亡くなったのか、
最後まで(直接的な)描写はなく、亜沙実に伝えた遺言や父親との最後の会話など、
若干曖昧さが残るところがあるなあと感じました。

物語としては実は結局何も解決しておらず、幸人は夕見とこの謎をずっと抱えていくのと、
幸人は夕見には語れない、最初のミスリードの真実も抱えていくことになり、
それを共有できうる姉の死去で、辛い立場にさらに追い込まれていくのが、なんとも。

犯人の復讐は果たせた(と思っている)ものの、加害者側(とされる)が罪の意識などに
さいなまれることもなく、というのもややモヤモヤが残りますね。

この「神」シリーズ、第3弾のようで、前の2作もそのうち購入しようかと。





雷神(新潮文庫)

雷神(新潮文庫)

  • 作者: 道尾秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/02/28
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 17:58| Comment(1) | 道尾秀介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月22日

バスクル新宿

まずはAmazonさんの紹介ページから。

よい日になりますように

会いたい人のもとへ。届けたいもの、伝えたい思い、叶えたい夢を抱えて。
さまざまな人たちが行き交うバスターミナル。そこで起きた事件をきっかけに、
繋がるはずのなかった個々の人生が鮮やかに交わってゆく。
目的地に向かい夜を通してひた走るバスが、
人生の岐路に立つ人々を朝へと運んでゆく連作短編集。

バスが繋いだ”縁”が
バスターミナルで奇跡を起こす

私は以前書店に勤めていたのだけれど、
何か安心して読める本を紹介してほしいという問い合わせを受けたときに、
よく挙げたのが大崎さんの名前だった。
――小出和代(解説より)

しばらく止まってました。
大崎さんの御本も久しぶりです。
「バスタ新宿」を本気で「パスタ新宿」と見間違えていたのを思い出しました(苦笑

「バスクル新宿」という夜行バス・長距離バスのバスターミナルと
そのバス車内で起こる様々な出来事と、「バスクル新宿」に居るある少年をキーとして
繋がる連作短編集。

本作ダントツ愁眉は「チケットの向こうに」
サークルのお金が生駒によって(おそらく)持ち出された。
同じサークルの磯村と益子は、彼がバスに乗り故郷へ行くと考え、「バスクル新宿」
で彼を待ち構えるが・・・

この話、この3人の話かと思いきや、全然違います。
磯村が偶然であった調査会社の柳浦さんとの会話で物語は進行します。
生駒も途中で捕まるものの、ラストの柳浦さんとの会話やあるショッキングな出来事など、
非常に上手く作られてます。

「パーキングエリアの夜は更けて」は、凶悪事件発生か?!と思わせる出来事が
続く、さらに主人公はバスの中。果たして・・・?というサスペンス風な作品。
「疑い出したら切りが無い」というセリフが出てきますが、まさにその通り(笑
でも「トーマ」君を発見したときの紺野莉香は気が気でなかったでしょう。

最終話「君を運ぶ」で、各編に登場していた少年の謎が明かされます。
各編に登場した主人公達もほぼ勢揃いで、ちょっとした大団円ですね。

人生の岐路という点でみると、第1話の「バスターミナルでコーヒーを」が良いですね。
現実に同じバス乗車客がふれ合うようなことはないでしょうけど、これはこれで
良い作品です。

町の書店が減る中、大崎作品の成風堂書店シリーズや井辻くんシリーズは
中々執筆が難しいのかなと、勝手に思ってます。
そう思いつつ、ぜひ新作をお待ちしています!



バスクル新宿 (講談社文庫)

バスクル新宿 (講談社文庫)

  • 作者: 大崎梢
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/01/16
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 20:00| Comment(1) | 大崎梢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月15日

一番長いデート

まずはAmazonさんの紹介ページから。

デートの途中で恋人が誘拐された大学生の坂口俊一。恋人の池沢友美を助けたければ
ある男を殺すよう脅されるが、実は友美は自分の恋人ではなく友人の恋人! 
代役のデートを引き受けたのだ。責任を感じた俊一は誘拐犯から渡された拳銃で
標的の男を撃ち、友美を助け出す。しかし、彼女は再び誘拐されてしまい……。
俊一は無事にデートを終えることができるのか?(表題作「一番長いデート」)
(解説 山前譲)

全3作収録の短編集。
まず、「孤独な週末」から。
これは確かかつてドラマ化されたんじゃないかなと。
継母と正実、紀子と義理の息子。どちらの立場も難しい。
思春期突入の正実くんにすれば、父親を取られたと思うのは当然でしょう。

この義理の母と息子の関係をここまでミステリに昇華させて描きつつ、
最後に紀子が魅せる愛情は素晴らしいの一言。本作愁眉でしょう。

表題作は赤川作品の常連的なもの。なぜか抗争に巻き込まれる一般人。
この主人公、家まで送るんだぞというのを忠実に守っての、
このタイトルというのが面白い。

拳銃の処理も運が良いのか悪いのか・・・(苦笑
見事になーんにも巻き込まれず大団円。これぞ赤川ユーモア・ミステリの神髄。

「殺してからではおそすぎる」、いや全くこのタイトルは物語の内容以前に、
その通りなのですが、このタイトルからどんな話を想像できますか?
非常に短い短編ですが、上手く大団円になっています。

徳間文庫の復刊も途切れずに続けてくれていて、非常にありがたい。
これからも楽しませてください。


一番長いデート (徳間文庫)

一番長いデート (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2024/05/10
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 23:24| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月09日

時空旅行者の砂時計

まずはAmazonさんの紹介ページから。


瀕死の妻を救うために約60年前にタイムトラベルした加茂。
妻を救うには彼女の祖先である竜泉家の人々を襲った『死野の惨劇』の真相を解明し、
阻止する必要があるのだという。惨劇が幕を開けた竜泉家の別荘で加茂に立ちはだかるのは、
絵画『キマイラ』に見立てたかのような不可能殺人の数々だった。
果たして竜泉家の一族を呪いから解放できるのか。
今最も注目される本格ミステリの書き手が放つ鮮烈なデビュー作!
第29回鮎川哲也賞受賞作。


確か去年の『このミス』か『本格ミステリ・ベスト10』で
方丈さんの『アミュレット・ホテル』が登場していて、おお、こんな方が居るのかと
その前のシリーズを購入したという経緯です。

SF的要素が強かったからか、避けていたのですが、これがどうして。
家系図に見取り図、そして読者への挑戦と、本格探偵小説、本格ミステリ小説
そのものではないですか。

妻の病を治すには、過去に戻り、彼女の祖先を襲った「死野の惨劇」を阻止する
必要がある。
そのため、主人公は「マイスターホラ」という、いかにも怪しい名前の人物と
砂時計を手にして、過去へタイムトラベルする・・・という設定。
「キマイラ」の絵画とおなじように殺人が起こる中、犯人を突き止められるのか?

SF的な要素は、最後の大仕掛けに使用されていたのが、本作愁眉かなと思います。
誤認トリックなんですが、上手いこと隠しているんですよね。

見立て殺人も中々良いです。
が、リフトのトリックというかあれは上手くいくのかどうかちょっと怪しい。

今ちょうど藤子・F・不二雄先生の『T・Pぼん』も読んでいたりするので、
過去への干渉がどれだけ現在ないし未来に影響を与えるか、というのが
結構気になりました(笑

最後の大団円は、本来的には上記のことからうまくいかないのだけど、
存命者がよく頑張った!といえるでしょう。







時空旅行者の砂時計 〈竜泉家の一族〉シリーズ (創元推理文庫)

時空旅行者の砂時計 〈竜泉家の一族〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 方丈 貴恵
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/09/28
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 15:34| Comment(1) | 方丈貴恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月07日

三重露出

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「知ってるぞ、お前がヨリコを殺したんだ!」二年前、不可解な死を遂げた沢之内より子が、
架空日本で女忍者が跋扈する荒唐無稽な小説『三重露出』に現れた。これは手のこんだ告発か? 
彼女に翻弄された9人の中に真犯人がいる……。
軽妙な作中作+本格ミステリのトリッキーな二重構造。
伝説の超メタ推理小説、マーベル作家・桃桃子(ピーチモモコ)とのコラボカバーで復活!

異色中の異色作というべきか、都筑先生渾身の意欲作というべきか。
日本在住の忍者かぶれのアメリカ人のライアンが、日本の女性ニンジャ集団を
向こうに回して、数々の不可能忍術を破りながら戦う、作中作『三重露出』。

一方、滝口正雄を主人公とする現実パートは、
一人の女性・沢之内より子の死を巡る真相に迫る本格ミステリ。
彼女は本当に自殺だったのか?

とにかくナンセンスニンジャ小説がめちゃめちゃ面白いです。
エログロナンセンス(というかグロはほとんどない)、B級アクション的な楽しさです。
これだけでも充分楽しめます。

現実パートは、この『三重露出』に登場する沢之内より子の死の真相に
滝口と箕浦が、当時のより子の取り巻き(自分たちも含めて)たちから話を聞いていく
流れになっています。

ただし、本パートのラストをどう読むのかで、この作品をどう捉えるかは
変わってくると思います。
個別にみるならば、エレベーターでの焼失トリックなどは実に見事ですが、
このラストは難しい。
解説(謎解き?)の中野康太郎さんの『猫の舌に釘を打て』との対比
から導き出される人物こそが犯人なのか?
あるいはラストに妙な手紙を残した箕浦か?
それとも本人が「殺した」と述べた宇佐見か?

都筑先生はどう考えていたのでしょうかねえ。
あるいはリドルストーリーとして終わりにしたかったのか。

それにしても、この時代に非常に斬新なミステリだよなとつくづく思いました。
法月先生の解説にある、トクマの特選第4弾はあるのか!




三重露出 (徳間文庫)

三重露出 (徳間文庫)

  • 作者: 都筑道夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/06/09
  • メディア: 文庫



posted by コースケ at 23:28| Comment(1) | 都筑道夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月19日

殺し屋志願

まずはAmazonさんの紹介ページから。

殺し屋を看取った日から、少女の周りで何かが動き出す。傑作長編ミステリ。

朝の満員電車で、男が何者かに刺し殺された。殺害されたのは腕利きの殺し屋・鳴海。
偶然そばに居合わせ、彼の死をみとることになった17歳のみゆきは、
その日を境に奇妙な出来事に巻き込まれていく。「――殺したら?」たった一言を告げる電話と、
みゆきの前に現れた謎の女子高生・佐知子。彼女は継母を憎み、
その死を願って自ら殺し屋に近づいた少女だった――。
2人の少女の不思議な友情と秘密を鋭く描き切る、傑作長編ミステリ。

現在と過去を行き来する形で物語は進みます。
殺し屋の鳴海が佐知子に語る「殺人ってのは、くせになるんだ」という言葉が
本書を象徴していますね。

人間の殺意というものに注目した、いつものユーモア・ミステリとはひと味違う良作。
赤川作品はたまにこういうのがあるんですよね。
ラストも負の連鎖が続く展開を示唆してエンド。

殺し屋なんだけれども、鳴海が異常に好人物に見えるのは、
佐知子やみゆきの母親など、それを超える人が出ているからでしょうか。
とにかく登場人物は非常に少なく、基本は鳴海と佐知子・予史子の過去の出会いと、
みゆき、新谷母子・親子の物語だけで進むのに、徐々に異常な空気になっていくのが
また恐ろしいし、流石赤川次郎。

決してユーモア・ミステリだけではない赤川次郎。
ぜひご一読ください。


殺し屋志願 (角川文庫)

殺し屋志願 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/12/22
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 17:46| Comment(1) | 赤川次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月18日

黄土館の殺人

まずはAmazonさんの紹介ページから。

土壁の向こうで連続殺人が起きている。
名探偵(ぼく)は、そこにいない。

孤立した館を連続殺人が襲う。
生き残れ、推理せよ。

シリーズ累計18万部
若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ

☆☆☆
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
そのとき土砂の向こうから女の声がした。

声は、交換殺人を申し入れてきた――。

同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。

葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。

火土水風と四元素を扱う館シリーズの第3弾。
火・水と来て、今回は土。
そして、起こるのは日本の自然災害でも非常に多い、地震。
(あとがきで、能登半島地震に阿津川先生が触れられてます。)

大地震により、名探偵と助手は離ればなれに。
そして「黄土館」で起こる連続殺人。
犯人は果たして誰か。

探偵役と助手が離れ離れになるというのは、有栖川有栖先生の『双頭の悪魔』を
思い出しますね。
本書は3部構成で、1部は「名探偵・葛城輝義の冒険」。
シャーロック・ホームズのようなタイトルですが、事件を防ぐのも探偵の役目!
という、中々面白い部になってます。いわゆる倒叙形式。
もちろん、物語全体の中で、上記のような事ではなく、
ある非常に重要な描写-これは最後に探偵が指摘するのですが-が記されています。
(個人的にはこの推理というか指摘が本作愁眉。)

そして本書は、かつて名探偵であった飛鳥井光流の復活も描かれます。
本書のテーマでもある、ミステリにおける名探偵、探偵とは何かを語る上では重要な部です。

火や水、結構辛辣なコメントを書きましたが、本作は個人的には一番楽しめました。
名探偵と助手を離れ離れにした理由や、館に設置された塔の存在、犯人の動機は何なのか。
この辺りが非常に上手くできていたなあと。

第1部では、プロパビリティの犯罪にしれっと触れているのですが、これが実は本書を
貫く犯人の犯罪方法でもあるんですよね。これも上手い。

ただやっぱり自分のことを名探偵と自己紹介したりするのは、中々受け付けないなあ(苦笑
あと水の時に遭遇しているとはいえ、田所と三谷の人が死ぬことに慣れすぎだろう。
まあ、これはミステリのレギュラーメンバーなら、仕方ないのですが(笑

いよいよ次は「風」ですね。風車館の殺人、なんて単純な名称ではないと思いますが、
どう「風」を入れてくるのか、楽しみです。


黄土館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ)

黄土館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ)

  • 作者: 阿津川辰海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/02/15
  • メディア: Kindle版



posted by コースケ at 22:17| Comment(1) | 阿津川辰海 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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